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平成24年度アジア情報関係機関懇談会概要報告: アジア情報室通報 第11巻第1号

アジア情報室通報 第11巻第1号(2013年3月)
福山潤三

平成25年2月8日(金)に国立国会図書館関西館においてアジア情報関係機関との懇談会を実施した。第12回目の開催となる今回は、「東アジアの資料デジタル化をめぐる連携・協力」をテーマに、報告、講演および懇談を行った。概要を以下に紹介する。

1 当館の報告

初めに当館から「中国・韓国の資料デジタル化事情」と、「日中韓電子図書館イニシアチブ (CJKDLI)について」を報告した。

中国では、国家図書館のみならず、公共図書館や大学図書館でも、極めて大規模かつ組織的にデジタル化が進められている。CADAL(大学数字図書館国際合作計画)のように、欧米諸国やインドなどの大学・研究機関が協力する国際的なプロジェクトも盛んである。

韓国の資料デジタル化事業は、通貨危機後に雇用対策・産業育成を目的として始まった。その後、効率化のための事業統合を経て、現在はデジタル化資料のオンライン利用に留まらず、公的機関が保有する情報の公開を目指して取組みが進められている。

日中韓電子図書館イニシアチブ (CJKDLI)については、協定調印(2010年8月)までの経緯と協定の内容、調印後に年1回ずつ開催している会議の概要を報告した。今後はまず各国のポータルの連携を目指すことで合意している。

2 各機関の報告

続いて、中国、韓国の機関との協力について、2つの機関が報告を行った。

(1) 中国国家図書館との協力による漢籍全文画像データベースの国際共同運用への試み

(東京大学東洋文化研究所)

平成22年度から始まった機関推進プロジェクト「漢籍知識庫の構築と国際共同運用への試み」において、東洋文化研究所がインターネット上に公開している「漢籍善本全文影像資料庫」の全データを中国国家図書館に提供し、中国国家図書館が独自に作成した検索システムで公開する、国際共同運用の試みを進めている。中国側にサーバを置くことで、ミラーサーバとしての役割が期待できるほか、中国国内での検索速度が大幅に改善している。

(2) 高麗大學校との協力について

(東洋文庫)

平成22年に覚書を締結した「東洋文庫所蔵朝鮮本(韓国本)古典籍の解題及びデジタルイメージ構築事業」について、その経緯と進捗状況の報告があった。平成24年1月に、高麗大學校調査団の来訪(第1回)を受け、具体的な事業内容を定めた協定書を締結し、その後資料の撮影が始まった。将来的には、画像データベースの公開と、総目録集、解題集の出版が予定されている。

いずれの事例も、長期的な予算の裏付けが確保されていない点が課題となっている。

3 講演・懇談・質疑応答

初めに関西大学外国語学部教授兼図書館長の内田慶市氏により、「東アジア文献アーカイブスをめぐって―図書館に求められるもの」と題する講演が行われた。資料の利用と保存を両立させるためにデジタル化が必要であることを踏まえて、国際的な文献ネットワークへ日本の図書館が積極的に連携すべきとの指摘がなされた。また、文献画像にテキストデータなどの付加的情報を持たせることの重要性が指摘された。

続いて、テーマに基づいて、参加機関による懇談を行った。懇談に参加した機関は以下の9機関である(五十音順)。

アジア図書館、大阪府立中之島図書館、九州大学附属図書館、京都大学人文科学研究所、滋賀県立大学図書情報センター、東京大学東洋文化研究所、東洋文庫、日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館、龍谷大学

龍谷大学からは大英図書館が主催する国際敦煌プロジェクト (IDP)への関与、京都大学人文科学研究所からは「東方学デジタル図書館」をはじめとする同研究所作成データベースの概要について報告があった。

懇談の場では、国際連携の実績がある機関、自館でデジタル化を行っている機関、デジタル化には着手していない機関など各館の状況の差異が確認された。また、データベース構築のために、専任の組織や、長期的な予算を確保することが難しくなっている点について、複数の機関から指摘があった。特に、デジタル化の実績がある複数の機関からは、個々の研究者による属人的な対応が現状であるが、組織としてどのようにデジタル化事業に長期的関与をしていくかが今後の課題となるという意見が述べられた。そのために、当館が大学図書館や公共図書館の事業を統合する仕組みを作ることはできないか、との意見も寄せられた。

おわりに

各図書館によってデジタル化事業の実績には差異もあり、状況も異なるものの、デジタル化の意義について活発な意見交換が行われた。一方で、そうした事業を進める上での組織的・予算的裏付けの弱さが、共通の課題であることも浮き彫りとなった。今後は国際的な連携も含めて、関係機関の協力関係強化がいっそう重要になるものと思われる。

参加いただいた各機関には、この場を借りて改めてお礼を申し上げる。今後も関係機関の議論の場として、アジア情報関係機関懇談会を一層充実させていく所存である。

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