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植民地期の京城(現・ソウル)の地図(レファレンス事例・ツール紹介(4)):アジア情報室通報 14巻4号

アジア情報室通報 第14巻4号(2016年12月)
福山 潤三(国立国会図書館関西館アジア情報課)

アジア情報室には、植民地期の台湾、朝鮮半島や旧満州の地図に関するお問い合わせが数多く寄せられます。その中でも一筋縄ではいかないのが、市街図の調査です。昔住んでいた家の住所や、会社の名前等の情報から、当時や現在の地図上の場所を調べたい、というものです。

朝鮮半島の地図については、当館のリサーチ・ナビ「調べ方案内」で主要な情報源を紹介しています[1]。しかし、建物名や、地番から掲載箇所を検索できる資料はほとんどありません。また、影印資料やデジタルデータの場合は、画質が低く、文字の判別が難しいこともあります。

このような限界はあるものの、地図以外の参考情報も活用することで、地図上の場所をある程度同定することができます。今回は、1930年代に京城(現在のソウル)にあった、「朝鮮金融組合連合会」と「山口楽器店」の所在地を調べてみます。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2016年11月4日です。

1. 主要な植民地期京城の地図

植民地期の京城を、比較的大縮尺で収録した資料としては、以下のものがあります。

서울역사박물관 조사연구과 [編]『대경성부대관(大京城府大観)』(서울역사박물관 조사연구과 2015)【G72-K34】
1936年に製作された鳥瞰図「大京城府大観」を87等分し、1.4倍程度に拡大して収録した地図集です。町名索引、協賛者索引(この地図の製作に協賛した団体等の掲載箇所を町名ごとに検索可能)があります。

서울역사박물관 유물관리과[編]『서울지도(ソウル地図)』(서울역사박물관 유물관리과 2006)【G71-K26】
ソウル歴史博物館所蔵地図の写真図版を、古地図、近現代地図と時代別に分類して掲載しています。ソウル特別市のウェブサイト「지도 전시관(地図展示館)」(http://gis.seoul.go.kr/Information/Pavilion.jspで、デジタルデータが公開されています。

許英桓著『定都600年서울地圖(定都600年ソウル地図)』(汎友社 1994)【G71-K4】
ソウルの地図の写真図版を、朝鮮時代、「日帝」時代、大韓民国時代に分けて掲載しています。

2. 住所を調べる

住所が分かれば、『대경성부대관(大京城府大観)』に付されている協賛者索引等で、検索できるかもしれません。そのため、まずは住所を調べてから、地図を確認することにします。

2.1. 国立国会図書館デジタルコレクション

公的機関や経済団体の場合は、その出版物の奥付に詳しい住所が記載されているかもしれません。当館で所蔵し、デジタル化している資料について、「国立国会図書館デジタルコレクション」(http://dl.ndl.go.jp/を以下の条件で検索すると、23件のデータがヒットしました。

  • 公開範囲:インターネット公開
  • 出版者:朝鮮金融組合連合会

検索結果の中から『金融組合統計年報 : 昭和14年度』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1904212)を開き、奥付部分の画像(図1)を確認すると、「發行所 朝鮮金融組合聯合會」の住所が「京城府竹添町一丁目七五番地」であることが分かります(73コマ目)。

図1 『金融組合統計年報 : 昭和14年度』奥付
図1 『金融組合統計年報 : 昭和14年度』奥付

2.2. 人名録・商工録

一方、山口楽器店に関するデジタルデータは見つかりませんでした。個人や、個別の商店については、出版物が見つからないことが少なくありません。そうした場合でも、当時刊行されていた商工録等で住所が確認できることがあります。国立国会図書館デジタルコレクションで「朝鮮」「名録」「商工録」等のキーワードでヒットするもの[2]のほか、以下の資料でも、日本語で調べることができます。

芳賀登 [ほか]編『日本人物情報大系』(皓星社 2001)【GB12-G22】
第71巻から第80巻が朝鮮編で、『朝鮮在住内地人実業家人名辞典 第1編』(1913年刊、第72巻に収録)、『京城仁川職業名鑑』(1926年刊、第73巻に収録)等、人物名や業種から住所等の情報を検索できる資料が多数影印・収録されています。

このうち、『大正12年/昭和5年/昭和8年/昭和11年版京城商工名録』(第80巻に収録)は、類別索引(食料品、布帛等の業種別)、品名別索引(白米、精肉等の取扱品目の頭字いろは順)で商工業者が検索できます。昭和11(1936)年版の品名別索引の「蓄音機及レコード」の項を見ると、山口楽器店の関連情報が掲載されており、住所は「本町二ノ一一」と判明しました(原資料のp.81, 本資料のp.239)。

3. 地図上の掲載箇所を探す

3.1. 町名索引で検索する

これらの住所を基に、今度は最初にご紹介した『대경성부대관(大京城府大観)』の索引を確認します。この索引の排列はハングル字母順なので、「죽첨정1정목(竹添町一丁目)」「본정2정목(本町二丁目)」で検索します。協賛者索引の方は、どちらの団体も掲載されていませんでしたが、町名索引によると、竹添町一丁目は分図19に、本町二丁目は分図34と47に掲載されていることが分かりました。

各分図の下部には、分図中に記載されている協賛者名が黒字で、それ以外の分図中に描かれている建物名が青字で書かれています。分図19(p.36)の下部には青字で「朝鮮金融 I-7」と記載されていました。地図の横軸が「I」、縦軸が「7」の部分(分図19の右下)を見ると、「竹添町一丁目」の表記のすぐ下に「朝鮮金融」が見つかります。一方、分図34と47には、山口楽器店の名前は見えません。分図47に「本町二丁目」の表記があるため、その付近と思われますが、この資料から、より正確な所在地を同定することは難しそうです。

3.2. 地番入り地図で絞り込む

山口楽器店の住所は「本町二ノ一一」なので、11番地の場所が分かれば、かなり正確に絞り込めます。本稿の最初でご紹介した『서울지도(ソウル地図)』や、『定都600年서울地圖(定都600年ソウル地図)』には、「地番区画入大京城精図」(1936年)、「地番入大京城精密地図」(1940年)、「地番区画入京城精図」(1946年)等の地番が記載されている地図も収録されています。

これらの中で、比較的文字が判読しやすい「地番区画入大京城精図」を確認してみましょう。この地図は13分図、4補図に分割されており、京城中心部は、分図第5号に収録されています[3]。非常に文字が小さいですが、本町二丁目部分を見ると、広大な「フランス教会」(明治町2丁目1番地)の南西に隣接する区画が本町2丁目11番地であることが分かりました。

4. 現在の地図で該当箇所を探す

最後に、現在の地図で該当する場所を調べてみましょう。戦前期の京城と比べると、現在のソウル市は、街並みも、行政地名も大きく変化しています。そのため、厳密には同定できないこともありますが、範囲の絞り込みに活用できる情報源をご紹介いたします。

4.1. 歴史的建造物等の場所を参照する

歴史的建造物や大きな道路は、地図上の場所を比較する上で有用な指標となります。ソウルの場合は、慶福宮(旧朝鮮総督府庁舎所在地)、徳寿宮、崇礼門(南大門)、昌徳宮、宗廟等の建造物や、世宗大路(光化門通)、鍾路、南大門路、乙支路等の道路との位置関係から、ある程度場所を絞り込めます[4]。

竹添町一丁目は、慶福宮から光化門通を南下し、鍾路の交差点を西に折れ、西大門方面に道なりに南下したあたりですが、現在もほぼ同じ軌跡で道路が走っており、概ね同定できます(図2の①)。

本町二丁目は、南大門路と乙支路の交差点の南東方面ですが、道が込み入っており、この情報だけでは確定できません。

4.2. 新旧町名が併記された地図を参照する

1947年に刊行された「서울特別市精圖(ソウル特別市精図)」には、新旧町名が併記されています[5]。この地図によると、竹添町一丁目は「忠正路一街」に、本町二丁目は「忠武路二街」に変わったようです。

改めて現在の地図[6]を確認すると、確かに南大門路と乙支路の交差点の南東に、忠武路二街があります。その東側、三一大路に面した場所に「明洞大聖堂」があります。明洞大聖堂は、1898年にパリ外国宣教会によって設立された韓国カトリック教会の象徴とされる建造物なので、「地番区画入大京城精図」に描かれた「フランス教会」と見てよさそうです。そのため、「本町二ノ一一」は、明洞大聖堂の南西に隣接する一帯と考えられます(図2の②)。

図2 現在の地図上の位置
図2 現在の地図上の位置

まとめ

本稿では、以下の手順をご紹介しました。上手く見つけ出せない場合は、アジア情報室にお気軽にお問合せください。

  1. 出版物や人名録・商工録から当時の住所を調べる
  2. その住所(町名)から地図上の大まかな場所を探し、建物名や番地等の情報で絞り込む
  3. 現在の地図上の場所を、歴史的建造物との位置関係や、新旧町名情報を基に絞り込む

(ふくやま じゅんぞう)



[1] 「朝鮮半島の地図(1945年以前発行)」http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-48.php ; 「朝鮮半島の地図(1945年以降発行)」http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-92.php

[2] 例えば、インターネット公開資料として、『大日本商工録』『帝国商工録』『朝鮮工場名簿』等があります。

[3] 「대경성정도 大京城精圖」지도전시관ウェブサイト http://gis.seoul.go.kr/Information/PavilionPopup.jsp?mg_id=20101221028&CAT_ID=20101221002&CAT_TYPE=1 ; 『서울지도(ソウル地図)』pp.58-59 ; 『定都600年서울地圖(定都600年ソウル地図)』pp.124-125.

[4] 「지도 전시관(地図展示館)」(http://gis.seoul.go.kr/Information/Pavilion.jsp)には地図上のアイコンをクリックすると、対応する現在の場所に関する情報が表示される地図もあります(「최신경성전도 最新京城全圖」等)。

[5] 『定都600年서울地圖(定都600年ソウル地図)』pp.168-169.

[6] 最近の大縮尺の地図帳として、『서울시 도로명・지번 안내도 : 부동산 택배 행정용 : 1: 3,350(ソウル市道路名・地番案内図 : 不動産宅配行政用 : 1: 3,350)』(영진문화사 2015)【G71-K108】があります。

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