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『中国家庭发展报告』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(11):アジア情報室通報 14巻4号

1.17.  国务院发展研究中心 著『中国家庭发展报告 = China family development report. 2015(中国の家庭の発展に関する報告 2015)』 北京 : 中国人口出版社, 2015.5. 4, 2, 165p 【EC84-C35】

中国では、人口及び計画出産法の改正により、2016年1月から一人っ子政策が廃止され、「夫婦に子供二人」の原則が示された。その目的は、人口推移のバランスを取り、少子高齢化問題に対処するためとされている[4]。同国では近年、農村から都市への労働力の移動の影響を受け、年齢別人口構成のみならず家庭の形態(後述)にも変化が生じている。

本書は、2014年に国家衛生・計画生育委員会が32,494の家庭を対象に実施した、家庭の現状や動向についての調査報告書である[5]。8章から成り、第1章から第7章まではテーマに基づき調査結果を分析し、第8章で総括及び政策提案を行っている。

第1章「家庭と婚姻」では、伝統的な大家族の減少、核家族化の進行と、「流動家庭」(戸籍登録地から離れ出稼ぎ先で生活する家庭)、「留守家庭」(出稼ぎに行った後に農村に残された家庭)、「空巣家庭」(子が家を離れ高齢者が残った家庭)、単身家庭などに代表される家庭形態の多様化を指摘し、農村男性や都市女性の未婚率の高さなど、婚姻状況の特徴を述べている。

第2章「家庭の経済」では、家庭間には非常に大きな収入格差があり、また、都市と農村の間に1.8倍の収入格差、1.5倍の支出格差が存在すると指摘している。

第3章「健康と医療衛生サービス」では、年代別に健康状況について分析し、また、特に農村の高齢者の医療費の負担が大きいことを指摘している。

第4章「家庭内のサポート」では、経済的な支援や生活の世話が必要な児童、青少年及び高齢者を対象に分析を行っている。前者については、父親の育児への関与の不足や、児童の教育・健康保障、青少年の在学率などにおける都市・農村間の格差などを、後者については、経済的な理由で疾病を治療できない人が一定程度存在すること、身内による高齢者介護の多さなど、社会保障の不十分さを指摘している。

第5章「家族計画を実行する家庭」では、一人っ子政策に基づくものをはじめとする家族計画を実行している家庭と実行していない家庭を比較し、前者が児童教育、親子間のコミュニケーション、高齢者の健康、経済収入などにおいてより良い状況にあると述べている。

第6章「城鎮化[6]の過程における家庭」では、「城鎮化」が進行する中、流動家庭と留守家庭が増加していると述べ、留守家庭の経済状況は比較的良いが、児童の教育・健全な成長、女性の健康状態、高齢者の介護などにおいて問題を抱えると指摘している。

第7章「家庭への外部サポート」では、農村における上下水道などの公衆衛生のインフラ整備の必要性を説き、農村の託児所や養老施設の設置率は都市に比べ大幅に低いなど、農村の公共サービスが不十分であることを指摘している。

第8章「結論と政策提案」では、第7章までの結論を整理した上で、小中学生への健康教育・無料健康診断の実施、高齢者の長期介護保障制度の構築、医療機関と養老施設の連携推進、家族計画を実行する家庭への助成、出稼ぎ労働者家族に対する公共サービスの提供及び定住化推進など、7つの政策を提案している。

(アジア情報課 丹治 美玲)

[4] 「中华人民共和国人口与计划生育法」(2015.12.27修正)国务院法制办公室
http://www.chinalaw.gov.cn/article/fgkd/xfg/fl/201512/20151200479829.shtml
「35年独生子女政策正式终结 一对夫妇可生育两个孩子」新华网, 2015.10.30.
http://news.xinhuanet.com/finance/2015-10/30/c_128374476.htm

[5] 今後2年ごとに追跡調査が行われる予定である。

[6] 都市化を意味する語だが、大都市だけでなく中小都市も発展させ、そこに農村から流出した人口を定着させる意図が含まれている。
「国家新型城镇化规划(2014-2020年)」中华人民共和国中央人民政府门户网站, 2014.3.16も参照。
http://www.gov.cn/zhengce/2014-03/16/content_2640075.htm

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