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『한국의 보육정책』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(11):アジア情報室通報 14巻4号

2.12.  장하진, 이옥, 백선희 저(チャン・ハジン、イ・オク、ペク・ソニ著)『한국의 보육정책(韓国の保育政策)』高陽 : 공동체(共同体), 2015.5. 492p【EG57-K12】

日本では、保育所の待機児童や民間保育所の質などが問題になっているが、韓国では、所得制限なしの無償保育制度の導入に伴って保育需要が急増する一方、政府や地方自治体の財政負担の増大や、保育所での事故の増加が問題となっている。

韓国における現行の保育政策は、盧武鉉政権時に策定された「第一次中長期保育計画(2006~2010):セサク(新芽)プラン」[7]が基となっている。その後、李明博政権時には「アイサラン(子どもの愛)プラン(2009~2012)」[8]として拡充されて、0~2歳児の無償保育が始まり、朴槿恵政権下の2013年からは、0歳~5歳児について、所得制限なしの無償保育及び養育費支給が実施されている。また、同年には「第二次中長期保育計画(2013~2017)」[9]も策定されている。

本書は、「第一次中長期保育計画」策定にかかわった3名の専門家によるもので、韓国の保育政策の背景、決定過程、争点、課題を整理したものである。チャン・ハジン氏(忠南大学校名誉教授)は、同計画策定時の女性家族部長官である。イ・オク(徳成女子大学校名誉教授)、ぺク・ソニ(ソウル神学大学校社会福祉学科教授)の両氏は、大統領諮問高齢化及び未来社会委員会委員として育児政策に関わった経歴を有している。以下、特徴的と思われる内容を紹介する。

第2部では、現在の韓国の保育政策を14章に分けて概説している。

第1章「保育料支援と無償教育」では、無償保育の現状を概観している。保育支援予算をもとに算出した乳幼児1人当たりの支援額は2002年から2012年の10年間で7倍以上に増加した一方で、保育施設が未設置である自治体の解消、保育施設より割高な幼稚園に通う児童との公平性の担保、巨額の財政支出に見合った監督体制の強化、良質の保育サービスの提供等が課題だとされている。

第4章「国公立保育施設」では、施設利用の現状の分析がなされている。2012年現在、保育施設全体に占める国公立施設の割合が5.2%であるのに対し民間施設の割合は36.0%、利用児童の割合は、国公立10.1%に対し民間55.1%などとなっている。サービスの質が比較的担保されている国公立保育施設の充実を望む声が多いにも関わらず、地方自治体の設置費用負担の増大により、国公立施設の整備は進んでいない。そのため、国庫支援を拡大することや、小規模施設の設置を国公立にも認めるなどし、国公立の比率を高めることが必要だとされている。

第12章「保育サービスの質の管理」では、保育施設の量的拡大と保育料無償政策により、保育施設の数は増えたものの、保育サービスの質の管理が追いついていない状態であるとした上で、保育施設に対する評価認証制度の改善を図り、公的部門による実効性ある常時監督システムの構築が必要であるとしている。

第3部は4章から成り、今後の保育政策における課題を挙げている。

第1章「保育料の自由化と上限制」では、民間保育施設のサービスの質を高めるためには、保育施設間の質的競争が可能となるよう保育料の自由化が必要だという主張に対し、保育料の自由化は保育の公共性を放棄するものであり、保育料の上昇を招くだけで、サービスの質的水準向上とは無関係だという批判があるとしている。

第2章「公共型保育所と国公立保育所」では、国公立施設の新規拡充が難しいため民間の優れた保育所に財政支援を行うことで公共性を高めるという、政府の公共型保育所支援の施策について、質が確保されている国公立保育所の充実を望む声に応えていないと指摘している。

第3章「就業母優先支援と普遍的支援」では、全階層を対象に同一な保育サービスを支援するよりは、低所得者層と母親が就業中の子どもを優先的に支援すべきだという意見に対し、保護者の所得や雇用形態に関わらず、子どもが保育サービスを享受できるような政策をとるべきだと主張している。

第4章「保育財政の児童支援と施設支援」では、保育政策の実効性を高めるための財政支援の方式について、保育サービスの運営者らはサービス施設に対する支援を好み、政策決定者や父母らは、児童に対する直接支援を好む傾向があると分析している。そして、今後の方向性として、1)民間施設支援と国公立保育施設の拡充を並行させること、2)民間施設に対する政府や地方自治体の財政支援が効果的に使われているかどうかを、国・施設管理者・保護者等が一緒にチェックできる仕組みを構築すること、3)保育料以外の追加費用を徴収せずに保育施設がサービスを提供できる仕組みを構築すること、を挙げている。

(アジア情報課 田中 福太郎)

[7] 女性家族部(当時)が主管。
『새싹플랜, 제1차 중장기 보육계획('06~'10)(セサクプラン、第1次中長期保育計画)』 韓国職業能力開発院ウェブサイト, 2006.9.25.
http://www.nhrd.net/board/view.do?boardId=BBS_0000004&menuCd=DOM_000000102003000000&dataSid=16488

[8] 保健福祉家族部(当時)が主管。
『중앙보육정책위원회 개최, 아이사랑플랜 심의(中央保育政策委員会開催、アイサランプラン審議)』 保健福祉部ウェブサイト, 2009.4.29.
http://www.mohw.go.kr/front_new/al/sal0301vw.jsp?PAR_MENU_ID=04&MENU_ID=0403&BOARD_ID=140&BOARD_FLAG=00&CONT_SEQ=212393&page=1

[9] 保健福祉部が主管。
『제2차 중장기보육 기본계획 마련(第2次中長期保育基本計画整備)』保健福祉部ウェブサイト, 2013.12.31.
http://www.mohw.go.kr/front_new/al/sal0301vw.jsp?PAR_MENU_ID=04&MENU_ID=0403&page=2&CONT_SEQ=295051

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