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ベルリン国立図書館によるアジア情報サービス「クロスアジア(CrossAsia)」:アジア情報室通報 15巻1号

アジア情報室通報 第15巻1号(2017年3月)
渡邉 斉志(国立国会図書館関西館アジア情報課長)

はじめに

ドイツにおいては、研究者が所属機関の枠を超えてアジア関連の各種情報源にアクセスできる環境の整備が、全国的な枠組の下で進められている。これは、「クロスアジア(CrossAsia)」[1]と呼ばれるプロジェクトで、首都ベルリンにあるベルリン国立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin)が、ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft : DFG)から資金援助を受け、人文学・社会科学分野のアジア関係コンテンツ及び情報源へのナビゲート、研究支援ツール等をポータルサイトで提供しているものである。「仮想東アジア・東南アジア専門図書館」という性格付けがなされており、現在は、ハイデルベルク大学図書館及び同大学の南アジア研究所がプロジェクトパートナーとなっている[2]。

ドイツでは、古くから全国の有力図書館によって学術文献の分担収集が行われてきた。これは、主題ごとに「特別収集領域(Sondersammelgebiete : SSG)」を設定するという形を取り、アジア資料については、「特別収集領域 南アジア・東アジア・東南アジア」という位置づけの下で、17世紀に創設され貴重なアジア資料を多数所蔵していたプロイセン王立図書館の流れを汲むベルリン国立図書館によって、1951年から収集が行われてきた。2002年からは、登録利用者に対し、契約データベース(商用データベース)の提供も行われている。

特別収集領域制度は、2013年からの3年間の移行期間を経て「学術専門情報サービス(Fachinformationsdienste für Wissenschaft)」へと改編されたが、クロスアジアは引き続きDFGによる資金援助の対象となり、2016年1月から、新たな名称「クロスアジア―アジア専門情報サービス」の下でサービスを継続・展開している[3]。

図1 クロスアジア トップページ
図1 クロスアジア トップページ

1. クロスアジア・プロジェクトの射程

2016年から2018年までのプロジェクト期間における活動領域は、次のとおりである。

  • ①優れた蔵書の構築
    引き続き、紙媒体資料の蔵書の構築、電子媒体情報のライセンス契約の拡充を行う。さらに、ニーズに基づくデジタル化を行う。
  • ②オープンアクセスでの電子出版
    オープンアクセスでの学術文献の流通を引き続き支援し、中期的には、クロスアジアをオープンアクセス出版のプラットフォームとして確立する。
  • ③情報サービスの最適化
    クロスアジア・サーチ(後述)の機能を改善し、検索結果表示順の改善、検索結果のコンテキスト化、利用者主導型蔵書構築法(Patron Driven Acquisition : PDA)を実現する。
  • ④メタデータ及びフルテキストデータのためのインフラの構築
    クロスアジアによって提供されるデータをデジタル人文学等で活用できるようにする。
  • ⑤学術コミュニケーションと情報公開
    クロスアジアのサービスを継続的に改善するために、学界との対話や情報公開を重視する。

2. クロスアジアのサービスの概要

クロスアジアで提供しているサービスは、次のとおりである。

2.1. 情報源(Ressoucen)

①クロスアジア・サーチ(CrossAsia Suche)

クロスアジアで契約している事典データベース(「ジャパンナレッジ」等)の採録項目、ウェブ上の情報源の紹介データ(後述する「OGEA」)、日本の国立情報学研究所が提供しているCiNii Articlesの採録データ、ベルリン国立図書館の蔵書の書誌データ等、9,000万件以上の情報を一括して検索できる。

登録利用者以外も検索は可能だが、検索結果から契約データベース採録コンテンツにリンクが張られている場合、その閲覧には登録利用者ID/パスワードの入力を求められる。登録は、「青色貸借(Blaue Leihverkehr : BL)」の制度(後述)に参加しているドイツの研究機関に所属する者であれば行うことができる。

②データバンク(Datenbanken)

クロスアジアでライセンス契約している百数十種類のデータベース(うち、中国関係が70数種類、日本関係及び韓国関係はそれぞれ約20種類)へのナビゲート。

登録利用者は、このページから利用したいデータベースを選択し、登録利用者ID/パスワードでログインして利用する。

図2 採録データベースの一覧画面
図2 採録データベースの一覧画面
③デジタルコレクション(Digitale Sammlungen)

ベルリン国立図書館がデジタル化した資料、ハイデルベルク大学図書館所蔵の南アジア資料等、幾つかのデジタルコレクションへのナビゲート。

④テーマ別ポータル(Themen Portale)

テーマ別のデジタルアーカイブ「写真展 中国南西部への旅1899-1917」「辞典 ドイツで学んだ日本人 1868-1914」「ナワルキショール出版者書誌」「オリッサ書誌(インド・オリッサ州に関する文献の書誌)」へのナビゲート。

⑤東アジアオンラインガイド(Online Guide East Asia : OGEA)

東アジア研究、東南アジア研究に有用なウェブサイト数千件へのナビゲート。各サイトの簡単な紹介文もある。

図3 OGEAの検索結果画面
図3 OGEAの検索結果画面

*「日本+観光」で検索すると298件のウェブサイトがヒット。上記はその一覧画面の冒頭部分で、それぞれのウェブサイトにリンクが張られている。

⑥クロスアジア電子政府アーカイブ(eGovernment Archive)

日本、中国(香港、マカオを含む)、台湾、韓国、シンガポールの政府機関のウェブサイトのアーカイブ。

チュービンゲン大学のアジア・オリエント研究所が、ドイツ研究振興協会の資金援助を受けて「電子政府ドキュメンテーションプロジェクト(eGDP)」として構築しているものである。

著作権保護のため、クロスアジアの登録利用者のみアーカイブされたページにアクセス可能である。

2.2. 各種サービス(Service)

①クロスアジア・フォーラム(CrossAsia Forum)

電子掲示板機能。登録利用者は書き込みを行うことができる。世界中誰でも参加が可能(登録が必要)。

②クロスアジア・ブログ(CrossAsia Blog)

クロスアジアに関するお知らせ等。

③クロスアジア電子出版(CrossAsia E-Publishing)
  • クロスアジアリポジトリ
    オープンアクセスを推進するための、研究者が学術研究の成果を無料で登録・公開できるリポジトリ。
  • クロスアジア電子ジャーナル(CrossAsia Journals)
    オープンソースの電子出版プラットフォーム「Open Journal Systems (OJS)」を用いて発行された電子ジャーナル。
  • クロスアジア電子書籍(CrossAsia E-Books)
    オープンソースの単行書出版プラットフォーム「Open Monograph Press (OMP)」を用いて発行された電子書籍。
④クロスアジア・オンデマンドデジタル化(CrossAsia DoD)

ベルリン国立図書館、ハイデルベルク大学附属図書館及び同大学の南アジア研究所の蔵書のうち、アジア関係のものについて、申込みに基づき無料でデジタル化を行う。

デジタル化を行う点数は、2016年から2018年までの期間に、ベルリン国立図書館の蔵書から約300点、ハイデルベルク大学附属図書館及び南アジア研究所の蔵書から約150点。

デジタル化された資料は、それぞれの大学の図書館で無料で利用できるようにするほか、クロスアジアでの検索対象となる。

⑤目録及び青色貸借(Kataloge & Blauer Leihverkehr)

青色貸借の申込みフォーム。ドイツ国内及び欧州の大学の東・東南・南・中央アジアに関する研究所及び研究施設(41機関)に所属する者は、登録を行うことにより、ベルリン国立図書館東アジア部から直接、図書館間貸出しを受けることができるようになる。これを「青色貸借(Blaue Leihverkehr : BL)」という。

ただし、登録を受け、図書館間貸出しを申し込む際には、以下の事項について通知しなければならない。

  • 両機関間で図書館間貸出協定が締結されていること。
  • 図書館間貸出しを申し込む者が協定締結機関に所属していること。
  • 青色相互貸借で申し込むのは東アジア、東南アジア、中央アジアの言語の資料のみであること。
  • 事前に検索を行うこと。ただし、求めている資料を見つけることができなかった場合には、書誌データを定型フォームに記入して送ることができる。

⑥クロスアジア・ラボ(CrossAsia Lab)

クロスアジアのサービスメニューに載らないが有用なツールを提供する場。ラテン文字からモンゴル文字・ウイグル文字に翻字するツール等、幾つかのツールが公開されている。

⑦クロスアジアについて(Über CrossAsia)

クロスアジア・プロジェクトの概要紹介。

2.3. マイ・クロスアジア(Mein CrossAsia)

登録(無料)すると、下記の機能が利用できる。

①クロスアジア・フォーラム(Cross Asia Forum)

前述のとおり。

②プロファイル(Profil)[4]

ユーザ登録情報の変更等。

③クロスアジア・キャンパス(CrossAsia Campus)

記憶容量がクラウドで提供されるプラットフォーム。各ユーザには20MBの容量が与えられる。複数の利用者でグループを作り、データを共有・交換することもできる。

利用料金はかからないが、利用が一年間なかった場合には利用停止となり、保存されていたデータも消去される。

④クロスアジア・登録(CrossAsia Registrierung)

ユーザ登録画面。

おわりに

以上のように、クロスアジアは様々なメニューを持つサービスであるが、研究のインフラとして見た場合、やはり、「データバンク」による契約データベースの一元的な提供や、「クロスアジア・サーチ」による契約データベースや図書館の所蔵目録データベース、WEB上のアジア関係情報のメタデータ等の横断的検索が大きな比重を占めている。

無論、このような環境を構築するためには、相応の費用や労力を要するが、自身が所属する機関で契約していないデータベースをも利用できる環境を用意しているクロスアジアは、ドイツのアジア研究者コミュニティに大きな便益をもたらしていると思われる。

(わたなべ ただし)



[1] http://crossasia.org/
本稿は、インターネット情報を含め、平成28年12月1日時点の情報に基づいて執筆したものである。

[2] 両機関によって運営されていた、南アジア情報に関するウェブ上のバーチャルな専門図書館「ザヴィーファ(Savifa)」も、2015年8月にクロスアジアに統合された。

[3] 2016年1月時点で採択されているプロジェクトは、資金援助期間が2014年から2016年までのプロジェクトが5件、2015年から2017年までのプロジェクトが5件、2016年から2018年までのプロジェクトがクロスアジアを含む21件の、合計31件である。

[4] マイ・クロスアジアのサービスメニューのうち、「プロファイル」と「クロスアジア・キャンパス」は、ログインした場合にのみ表示される。ログインは「クロスアジア・登録」で誰でも行うことができる。

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