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韓国の諸制度と統計を調べる―平成28年度アジア情報研修 概要報告―:アジア情報室通報 15巻1号

アジア情報室通報 第15巻1号(2017年3月)
田中 福太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

平成28(2016)年11月24日(木)及び25日(金)、国立国会図書館関西館において、当館と独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所(以下、「アジ研」とする。)との共催により、平成28年度アジア情報研修を実施した。この研修は、アジア情報の収集・提供に関する知識増進と探索スキル向上を図り、また、当館とアジア情報関係機関との連携を深めることを目的として、当館が平成14(2002)年度から毎年実施しているもので、今回が15回目である。

今回は、「韓国の諸制度と統計を調べる」をテーマに、韓国の法令や統計の調べ方に主眼を置いた研修を行った。以下、その概要を報告する。

1. 研修の特徴と目的

今回の研修には三つの特徴と目的があった。

第一は、昨年度と同様に、アジ研との共催である。昨年度は千葉市のアジ研を会場としたが、今年度は関西館を会場とした。その結果、関西地方、九州地方等西日本在住の方の参加ニーズにこたえることができた。当日の研修参加者17名のうち12名が、関西地方以西の方であった[1]。

第二は、研修の形式である。前回までの研修に引き続き、調べるツールを紹介する講義形式ではなく、研修生自身がグループワークで調べる実習形式を中心とし、事前課題も課した。事前課題や当日実習では、実社会のニーズを反映した質問を題材とした。このような課題に自ら取り組むことで、各研修生が主体的に成果を得られると考えた。

第三は、参加者の多様な属性である。これも前回までの研修に引き続き、本研修が情報交換の場となることを期待して、韓国・朝鮮研究の各種学会や、イベントカレンダー等も活用し、図書館や調査研究機関の職員以外にも広く参加を呼びかけた。その結果、各種図書館のほか、省庁、地方自治体、研究者、大学院生等、多様な属性の研修生が集まり、グループワーク等において、活発な意見・情報交換が行われた。

2. 各科目の概要

2.1. イントロダクション


(アジア情報課課長補佐 冨田圭一郎)

最初に、前述した本研修の特徴と目的を明確に示し、その上で、法令や統計といった一次資料・情報にあたって調べることの意味や意義について、具体例も交えて説明した。

  • 法令や統計は、韓国に限らず、各国の事情を調べる際に把握しておくべき基礎的な情報である。
  • 法令や統計を調べる際には、他人によって編集・加工されていない一次資料・情報に当たることが重要である。
  • 一次情報を調べることは、自分で事実関係やデータを確認する作業である。多少手間はかかるが、図書館員や研究者だけでなく、省庁、地方自治体等の業務においても、この作業は必要かつ有益である。

2.2. 実習① 韓国の諸制度を調べる


(アジア情報課アジア第三係 田中福太郎、福山潤三)

初めに、韓国の諸制度の基本的な調査方法について、以下の3点を説明した。

  • ①様々な制度は、法律やそれに基づく規則・基準などで定められているため、政府機関が提供するウェブサイトなどで各種法令を調べる必要がある。
  • ②最初に日本語資料・情報、次に朝鮮語資料・情報という2つのステップを踏んで調べるのが有効である。
  • ③韓国の政府機関サイトでは、韓国特有のhwp形式のファイルで提供される情報が多いことに注意が必要である。

次に、事前課題の回答について、②による調べ方を解説し、あわせて韓国の法令が検索できるウェブサイト「국가법령정보센터(国家法令情報センター)」(http://www.law.go.kr/)の使用法を紹介した。要約すると以下のとおりである。

  • 日本語で、参考となる情報をウェブ等で収集する。その際、根拠法令名を把握するように努める。
  • 法令名のハングル形を「国家法令情報センター」の検索窓に入力する。その際、韓国語と日本語は、語順が似ており、漢字由来の単語も多いため、機械翻訳がかなり有効である。翻訳サイトにて、法令名のハングル形を得たのち、検索窓にコピーすることも可能である。
  • 「国家法令情報センター」サイトで条文を確認する。その際、法律、施行令、施行規則が表形式で一覧できる「三段比較」が活用できる。また、Google Chromeを使用すると、各ページが日本語に機械翻訳できる。

その後、グループワークによる当日実習を行った。いずれも、研修生による調査結果の報告後に、前述の方法により諸制度を調査するにあたってのコツ、法令原文を確認する際の留意点などを解説した。

当日扱った事例は次のとおりである。

  • 事前課題「韓国では、自動運転車は公道を走行できるか」
  • 当日実習「韓国の障害者義務雇用率」「障害者義務雇用率を達成できなかった場合に課せられる内容」
  • 当日実習(応用)「常用勤労者総数500名のうち障害者が5名の事業主に課される『障害者雇用負担金』の金額」
  •  

2.3. 実習② 韓国の統計を調べる


(アジア経済研究所図書館研究情報レファレンス課長  二階宏之氏)

初めに、韓国の統計情報の調査方法として、主に下記5つがあることを紹介した。次に、事前課題について、韓国・統計庁が提供する「국가통계포털(国家統計ポータル、KOSIS)(http://kosis.kr/)及び韓国銀行が提供する「경제통계시스템(経済統計システム、ECOS」(http://ecos.bok.or.kr/)の英語版と韓国語版の使用法(方法C及び方法D)を中心に紹介した。

  • 方法A 日本の統計を探す
    調べる対象について、ウェブ検索等で事前知識を得たのち、日本の各省庁のサイト等から数値を得る。
  • 方法B 国際機関の統計を探す
    経済協力開発機構(OECD)や国際労働機関(ILO)等のサイトで検索する。
  • 方法C 韓国の統計(英語版)で探す
    KOSISの英語サイトを使用し、分類をたどって、数値を得る。データを抽出し、エクセル形式でダウンロードできる。ただし、英語版では主要統計のみ公開されている。
  • 方法D Google Chromeを使って韓国の統計(韓国語版)を探す
    KOSISの韓国語版を、Google Chromeの翻訳機能を活用しながら用いる。項目やファイル名が翻訳されるので、文字が読めなくても数値を得られる。英語版同様、データはエクセル形式でダウンロードできる。分類をたどる方法のほか、「カスタム統計」「オンライン出版物」といったコンテンツも利用できる。「オンライン出版物」では、冊子体資料をPDF形式にしたものが入手できるので、過去の数値をさかのぼる際にも有効である。
  • 方法E 韓国の統計(韓国語版)を探す
    言語が分かれば翻訳機能を使用せずともよい。

その後、実習①と同様の形式でグループワークを行った。

当日扱った事例は次のとおりである。

  • 事前課題「韓国への日本人留学生数」
  • 当日実習「韓国の失業率、若年失業率、職種別平均賃金」

まとめとして、Google Chromeを使用すれば、情報量の豊富な韓国語版の統計が利用できること、統計によっては数値が異なる場合があるため、出典等から定義や集計方法を確認する必要があること等を指摘した。

3. 研修に対する反応

実習終了後の質疑応答では、各研修生から、各科目の内容に関して多くの質問が寄せられた。また、翻訳機能の効果的な利用方法等について、受講生同士のやり取りとりも行われた。

終了時に行ったアンケートでは、すべての回答者から、本研修に対して肯定的な評価が得られた。個別の意見や感想としては、内容・分量・難易度等すべてが適切で有益な研修だった、実習を交えながら法令や統計情報の調査方法の要点を理解できた等、一次情報にあたって調べる研修内容と実習を中心とした形式を評価する声が、多く寄せられた。

おわりに

今回の研修では、多様な属性の参加者が、事前課題や当日の実習に意欲的に取り組んだ。グループワークにおいても、各研修生から有益なご質問やご意見を頂いた。

短い研修では十分に紹介できなかった内容もあるが、本研修を通じて、①現地の最新情報を正確に把握するためには、法令や統計といった一次情報を調べる必要があること、②少し手間がかかるが、一次情報を調査すればそれに見合う正確な情報が得られること、の二点は実感していただけたのではないかと考えている。本研修が成功裡に終了したことについて、研修生の皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げる。

なお、研修当日の配布資料は、当館及びアジ研のウェブサイトに掲載したので、併せてご参照いただきたい[2]。もし、講師派遣による研修実施のご要望等があれば、ご遠慮なくアジア情報課あるいはアジ研までご連絡いただきたい。

(たなか ふくたろう)


[1] なお、定員12名を超える申し込みがあり、最終的に17名が参加した。

[2] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成28年度アジア情報研修」 http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop28.php
日本貿易振興機構アジア経済研究所「図書館イベント開催情報:平成28年度アジア情報研修「韓国の諸制度と統計を調べる」」 http://www.ide.go.jp/Japanese/Library/Event_report/20161124_kouen.html

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