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『韓米同盟60年史』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(12):アジア情報室通報 15巻1号

2.13.  국방부 군사편찬연구소 [編](国防部軍史編纂研究所 [編])『한미동맹 60년사 = 60 years of the ROK-US alliance(韓米同盟60年史)』ソウル : 국방부 군사편찬연구소(国防部軍事編纂研究所), 2013.9. 476p【AK4-651-K50】

本書は、韓国・国防部直属の軍事史研究機関である軍史編纂研究所が、「韓米相互防衛条約」が締結されてから60周年となる年に、韓米同盟の歴史を整理したものである。「第1章 はじめに」「第2章 韓米同盟の成立」「第3章 韓米同盟の成長」「第4章 韓米同盟の強化」「第5章 韓米同盟の発展」「第6章 おわりに」の6章と、巻末の付録に、「韓米相互防衛条約」全文、「韓米同盟60周年記念共同宣言」等、主要な米韓関係資料のほか、参考文献、英文抄録、索引も付されている。韓国と米国の軍事同盟関係を通覧するのに有用である。

第2章から第5章までは、韓米関係の起源、朝鮮戦争と韓米同盟の成立、韓米同盟の発展、現在及び未来の韓米同盟を、通史形式で記述している。韓米同盟関係の意義を積極的に捉えることを前提にしており、特に、朝鮮戦争における相互犠牲を伴う協力関係、朝鮮半島の分断固定化につながるとして休戦に反対する声がある中で締結された「韓米相互防衛条約」、朝鮮戦争からの復興の過程における国連と米国の援助、韓米同盟発展のための韓米安保協議体の運営、北朝鮮の武力挑発と韓米連合防衛体制の発展の歴史について、いずれも肯定的に記述している。また、米国の対韓政策の変化による駐韓米軍削減、海外派兵と韓米同盟関係、北朝鮮核危機と六者会合、韓国軍に対する戦時作戦統制権の韓国への移管と駐韓米軍の再編といった近年の論点にも言及している。

以下、地位協定、北朝鮮との関係、作戦統制権、米軍基地再編に関する内容を紹介する。 第3章第3節「駐韓米軍地位協定(SOFA)の締結」では、1966年7月の同協定締結と、その後2度にわたって改定された過程が記されている。米軍駐留に法的根拠を与えるために締結された同協定だが、米軍人による犯罪の増加に伴い、刑事裁判管轄権の不平等性、韓国人下請け労働者に対する人権侵害、米国の歳出予算とは独立した歳出外資金機関からの米軍物資流出などが浮き彫りになり、1980年代には国民の反米感情が高まったことから、韓国政府は同協定の改定作業に着手した。1991年の第1次改定では、「自動放棄条項」[1]の削除などが行われた。

その後、2000年に米軍によるホルムアルデヒド浄化装置なしの排水放出の発覚をきっかけとして、国会本会議で「SOFA全面改定要求決議案」が採択されるなど、再び改定要求の世論が高まったため、両国政府は交渉を開始し、2001年に、重大犯罪を犯した米軍人の被疑者の身柄を韓国側で拘束可能とすること、環境に係る条項を明文化すること、民事訴訟手続きにおける米軍に対する裁判所の訴訟書類送達及び執行手続きを新設することなどを内容とした、第2次改定が行われた[2]。

第4章第6節「第1次北朝鮮核危機と韓米共助」では、1990年代前半の第1次核危機における韓国と米国の動きを扱っている[3]。米国は、北朝鮮の核問題を、核不拡散という国際安全保障の観点で扱ったのに対し、韓国は、朝鮮半島非核化共同宣言と基本合意書に反する朝鮮半島問題として扱ったこと、米国は北朝鮮と直接対話を重ねたが、その際韓国は北朝鮮との直接対話のルートがなかったこと、米国と北朝鮮との合意事項の履行時に、韓国側に費用負担が生じたこともあったこと等が指摘されている。

第5章第2節「作戦統制権の移管」では、朝鮮戦争時に始まる韓国軍の作戦統制権の変遷を扱っている。当時の李承晩大統領は、韓国軍が朝鮮戦争で後退を繰り返していたため、作戦指揮権を国連軍司令官に委譲した。これにより、休戦後も国連軍の作戦統制権の下に韓国軍が置かれる形となったが、1978年に韓米連合軍司令部が創設され、韓国軍に対する作戦統制権は同司令部の司令官に移管された。その後、1980年代後半から韓米両国は作戦統制権の移管について協議を進め、1994年に平時作戦統制権が韓国軍に移管され、戦時作戦統制権についても2015年までに移管することとなったが、2014年の韓米首脳会談で延期が合意された[4]。

第5章第3節「駐韓米軍の再調整」では米軍基地の再配置について述べている。ソウル特別市中心部にある龍山基地の移転については、1990年の移転合意書に基づき、1992年にゴルフ場が返還されたが、過大な移転費用負担が問題となり移転作業は中断された。しかし、2001年に米軍が基地内で大規模な住宅建設を進めようとしたことから、恒久的な基地使用への懸念と移転を求める世論が高まり、2002年に「龍山基地移転推進委員会」が設置され協議を開始した。その後、2004年10月に、京畿道平沢地区へ移転することで合意が形成され、「龍山基地移転協定」が締結された[5]。

また、韓国全域にある駐韓米軍基地の移転は、全国91か所、2億4,198万㎡に及ぶ基地を、2地域、49か所、7,666万㎡に再編するものである。第1段階では、2006年までに漢江以北に位置する基地を京畿道東豆川、議政府地域に移転統合する。第2段階では、駐韓米軍の主要部隊を韓国中部および南部に移転し、合同指揮所及び戦闘部隊は中部の京畿道平沢および烏山を中心とする地域に移転、支援部隊は南部の大邱、釜山、慶尚北道浦項を中心とする地域に移転する計画である。ただし、平沢地域の住民による反対運動や移転費用負担についての意見がまとまらないなど、作業は遅延気味である[6]。

最後の第6章第5節「未来の韓米同盟」では、今後の方向性として、北朝鮮の核・ミサイルの脅威と軍事挑発への効果的な対応、戦時作戦統制権の移管後における韓米連合指揮体制の保障、戦争抑止と朝鮮半島統一のための同盟、といった点を挙げている。

なお、本書は、韓国の国会図書館の蔵書検索結果から本文画像を閲覧することができる[7]。

(アジア情報課 田中 福太郎)

[1] 韓国側が犯罪発生の通知を受け、又は犯罪の事実を認知してから15日以内に米国側に刑事裁判管轄権の行使を通告しなければ、管轄権を自動的に放棄したものとみなすとするもの。

[2] 駐韓米軍地位協定の詳細については、下記を参照。
清水隆雄ほか「翻訳・解説 在韓米軍地位協定等について」『外国の立法』220号, 2004.6, pp.184-232. 
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/220/022015.pdf

[3] 北朝鮮の核問題全般については、久古聡美「北朝鮮の核問題をめぐる経緯と展望 : 金正恩体制下の動向を中心に 」『調査と情報 -ISSUE BRIEF-』775号, 2013.3.14. 
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8091645

[4] 柳学洙・渡邉雄一「2014年の韓国」『アジア動向年報 2015』アジア経済研究所, 2015, pp.87-88.

[5] 当初は2008年末までに移転することとされていたが延期され、現在は、2017年の移転が見込まれている。「용산 주한미군, 내년까지 대부분 부대 평택으로 이전(종합)(龍山駐韓米軍、来年までに部隊を平沢に移転(総合))」『연합뉴스(聯合ニュース)』2016.5.19. 
http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2016/05/19/0200000000AKR20160519028651014.HTML

[6] なお、駐韓米軍基地返還後の跡地利用についてまとめた資料として、국방부 주한미군기지이전사업단 [編] (国防部駐韓米軍基地移転事業団 [編])『주한미군기지 역사 : 반환기지를 中心으로(駐韓米軍基地の歴史 : 返還基地を中心に)』[ソウル] : 국방부 주한미군기지이전사업단, 2015.6. 【AK4-651-K56】がある。

[7] 국회전자도서관(国会電子図書館)<http://dl.nanet.go.kr/index.do>にて検索後、「원문보기(原文を見る)」をクリックするとビューワーが立ち上がり、本文が閲覧できる。

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