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『民進黨執政下的政治發展』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(13):アジア情報室通報 15巻2号

1.18. 王金壽 [ほか] 合著『民進黨執政下的政治發展(民進党政権下における政治の発展)』高雄: 麗文文化事業, 2014.12. v, 297p ; 24cm.【A56-C8-C129】

2016年1月の台湾総統選挙では、民主進歩党(民進党)の蔡英文が当選し、同年5月に2度目の民進党政権が誕生した。本書は、1度目、すなわち陳水扁総統時代の民進党政権(2000年から2008年)について、その特色や国民党政権との差異、将来への展望、支持者の分析、労働・環境問題への取組み、官僚との関係等を取り上げた論文集である。国立成功大学教授の王金寿をはじめ、政治学系の研究者10名が執筆している。

本稿では、2度目の民進党政権の動向を見る上で興味深いと思われるものを紹介する。

第2章「民進党の政権獲得前後の支持者の比較分析」(陳光輝 国立中正大学政治系副教授)では、国立政治大学等が1992年から2013年までに有権者を対象として実施した訪問調査の結果を分析している。調査内容は、支持・非支持の変化の有無、性別、学歴、族群(エスニック・グループ)[1]、年齢、職業、地理区域等による民進党支持率の違いである。民進党支持者の主な特徴として、族群でみると閩南、客家、大陸の順に多く、地理的には、「宜花東」「桃竹苗」[2]の地域では少なく、「北藍南緑」[3]を形成していることを指摘している。

第3章「官僚の政治コントロール:民進党政権下の政務-事務関係」(陳尚志 国立中正大学政治学系助理教授)では、長期にわたって国民党政権下で執務してきた官僚と、新たに政権を獲得した民進党との関係を取り上げている。国民党政権時代には、官僚の多くが国民党員であり、党組織の委員等を務めると同時に、官僚として経験を積んだ後に政務官 に任命される等、官僚組織の「国民党化」が進んでいたこと、ほぼ毎年昇給を実施する等の待遇改善を行ったこと等から、官僚に対する強力な統制が可能であった。

それに対し、民進党は、①官僚とのコミュニケーションに気を配る、②政治的任命職からの指示が法的にも問題無いことを官僚に理解させながら政務に当たらせる、③官僚のみが知る情報を把握する、④有能な官僚を見出して登用する、等の工夫を図りながら官僚を統制しようとした。例えば、2007年から2008年にかけて実施した、15名の「民進党中央政務人員」[5]を対象としたインタビューでは、彼らは、官僚の執務能力や経験を評価する一方、受動的であり創意工夫が不足していると感じ、また、自らを民進党政権と官僚の間の「翻訳者」と自認し、政権の官僚統制に尽力した、と回答している。

なお、著者は、民進党政権初期に政権と官僚が対立した原因は、政権側が文書や法令を重視する官僚文化を十分に理解していなかったこと、また、民進党がこれまでの政治活動を通じて官僚と対立してきた経緯等にあるとしつつも、改革志向を持って政権運営に当たった場合、政権と官僚の衝突は不可避であるとも指摘している。

第5章「政党交代と労働運動:民進党政権時期の自主労働組合」(邱毓斌 国立屏東大学社会発展学系助理教授)では、民進党政権前後の労働組合の動向と、それに対する民進党の動きを整理している。台湾では、従来は国民党の指導下にある労働組合のみが認められていたが、1990年代半ばから各地で自主的な労働組合も設立されるようになる。2000年には県市級の産業系組合や公共事業系組合が連合した全国規模の組織である「全国産業総工会(全産総)」[6]も設立され、当初は民進党と良好な関係にあった。自主労働組合側も、労働行政に関して発言機会を得ることや、公共事業系労働組合が主張する反民営化への理解を求める等、民進党の施策に期待していた。

しかし、政権発足後は、民進党が全産総の理事選挙への介入や、公共事業の民営化等を行ったため、脱退する労働組合が増える等、結果的に全産総は弱体化していく。その結果、労働運動は各地域・各産業別の組合によるものが中心となり、民進党政権への影響力は限られたものになったとしている。

第7章「民進党のインターネット選挙:組織動員と参与」(林瓊珠 東呉大学政治系副教授)では、民進党がインターネット担当部門を設立した2009年以降を中心にインターネットの活用方法を整理している。民進党のウェブサイトは1995年から公開されていたが、当初は党内部の理解も進んでおらず、一方向の情報提供が中心であった。しかし、インターネット担当部門の設立以降、有権者との双方向の対話や、情報の拡散を期待し、LINE、Facebook、Twitter等、各種SNSの活用も開始した。

著者は、もはやインターネットは政治における補助的なコミュニケーション手段ではなくなっており、選挙運動の形や政党組織の運営をも変化させる可能性があること、また、民進党への信頼感醸成と支持獲得のためには、今後さらに、インターネットを通じた双方向の情報交換と共有の機会を提供していくことが不可欠であると提言している。

(アジア情報課 水流添 真紀)

[1] 台湾人は、台湾に来た時期及び出身地が異なる族群(エスニック・グループ)から構成されている。1949年前後、共産党との内戦に敗れた国民党とともに大陸から台湾に渡った人々とその子孫である「大陸」(外省人)、それ以前に台湾に渡った「閩南」・「客家」及び漢民族移住以前から居住している「原住民族」(先住民)が、四大族群と呼ばれている。

[2] 東部の宜蘭、花蓮、台東および、西北部の桃園、新竹、苗栗を指す。

[3] 台湾では国民党系が藍、民進党系が緑をイメージカラーとしており、勢力を可視化するために地図を色分けして見せることも多い。色分けされた地図の例として、次の記事がある。 「九合一選舉 藍綠板塊消長【圖表】」中央通訊社, 2014.11.30.
http://www.cna.com.tw/news/firstnews/201411305001-1.aspx

[4]一般的には、政府(政権党)が任命する政治的任用職を指す。台湾の法令では、行政、司法、考試、監察の四院長以下、高位の公職が「政務人員」とされている。「政務人員退職撫卹條例」第2条(2015.12.2最終改正)
http://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=S0080016
「全國軍公教員工待遇支給要點」附表一 政務人員給與表(2017.4.24最終改正)
http://weblaw.exam.gov.tw/LawArticle.aspx?LawID=J060041025

[5] 民進党政権下で任命された政務官及び中央行政機関の長を補佐して重要任務を担当する者を指す。

[6] 全國產業總工會
http://www.tctu.org.tw/

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