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植民地期朝鮮で発行された新聞記事(レファレンス事例・ツール紹介(7)):アジア情報室通報 15巻3号

アジア情報室通報 第15巻3号(2017年9月)
田中 福太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

今から100年前の1917年に、朝鮮近代文学の祖といわれる李光洙による小説「無情」が、新聞紙上で連載されました。

本稿では、その李光洙が、1943年の11-12月頃に『毎日新聞』に志願兵の学生に対する激励文を書いたというが、具体的な日付を知りたいというレファレンスを例に、植民地期朝鮮で発行されていた新聞記事の調べ方をご紹介します。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2017年8月1日です。

1. 文学史からのアプローチ

李光洙は朝鮮文学史で著名な人物であるため、まず、リサーチ・ナビ内の調べ方案内「朝鮮半島の近現代文学について調べる[1]」で紹介している事典類などを調べます。

権寧珉 編著 ; 田尻浩幸 訳『韓国近現代文学事典』(明石書店 2012)【KJ42-J14】
日本語資料。後述の『韓国現代文学大事典』の主要項目を再編集して翻訳したものです。事典篇と概説篇からなり、事典篇では、約240の大項目(作家、雑誌、新聞、文学芸術団体、文学用語)を収録しています。項目の排列は、漢字の「日本語音読み」(例:이광수(李光洙)=りこうしゅ)による五十音順です。

권영민 편『한국현대문학대사전(韓国現代文学大事典)』(서울대학교출판부2004)【KJ42-K99】
朝鮮語資料。19世紀後半から2000年までを対象に、文学史的意味を持つ人物、作品、事項等を解説しています。巻末に詩集目録、小説作品集目録、戯曲作品集目録、批評集、研究書目録等が収録されています。

『韓國近代文人大事典』(亞細亞文化社 1990)【KJ52-K107】
朝鮮語資料。1900年から1945年に活動した作家について、作家名、生涯、作品活動概要、作品一覧(作品名、発表誌・紙、発表時期)、研究文献等を収録しています。

韓承玉 편저『이광수 문학사전(李光洙文学事典)』(고려대학교 출판부 2002)【KJ42-K140】
朝鮮語資料。李光洙の小説に登場する語彙とその用例を収録しています。付録として、論説のほか、1913年から2001年までに単行本・論文・新聞記事等に発表された論評等を整理した「李光洙文学研究書誌目録」、「李光洙年譜」が収録されています。

今回は書いた人物と時代が分かっているので、まず『韓國近代文人大事典』の「李光洙」の項を見てみます。簡単な年譜と、主要作品の紹介のほか、詩、小説、エッセイ、評論、研究論文等が、それぞれ発表年月順に、表形式で掲載されています。李光洙には別名が多数あり、孤舟、長白山人、春園、香山光郎などの名でも作品を発表していたようです。1940年代前後を見てみますが、学生への激励文らしきものは見当たりませんでした。

また、『이광수 문학사전(李光洙文学事典)』に収録されている「李光洙年譜」の1943年には、激励文は掲載されていません。

さらに、李光洙の著作集である『李光洙全集』(三中堂 1963)【KJ71-K31】、『李光洙全集』(又新社 1979)【KJ71-K41】を確認しましたが、前者の20巻、後者の別巻にある年表には、1943年の項がありませんでした。

2. 新聞記事の特定

次に、掲載されたという新聞記事を調べます。まず、当時発行されていた新聞にどのようなものがあったかを確認します。リサーチ・ナビ内の調べ方案内に「1945年以前に朝鮮半島で発行された日本語新聞および洋新聞[2]」と「1945年以前発行の当館所蔵の朝鮮語新聞[3]」があります。それぞれ、対象時期に発行されていた新聞を一覧で紹介しています。

前者を確認すると、『毎日新聞』の朝鮮版が発行されていたようです。一方、後者には同じ紙名のものはありませんでしたが、似たタイトルとして『毎日新報』がありました。

まず、当館所蔵の『毎日新聞・西部.地方版』【YB-1777】に含まれる「朝鮮版」について、1943年11月から12月までの記事を確認します[4]。李光洙のほか、春園、香山光郎などでの名で記事が登場しないかも確認しましたが、見当たりません。

次に、念のため『毎日新報』について、以下の索引を手がかりに確認します。

大村益夫, 布袋敏博 編.『「毎日新報」文学関係記事索引 : 1939.1~1945.12.31』(早稲田大学語学教育研究所 2002)【KE111-H2】
『毎日新報』は、1910年に『毎日申報』として創刊され、朝鮮総督府の機関紙の役割を果たしました。1938年に『毎日新報』と改題し、1940年に『朝鮮日報』と『東亜日報』が停刊になった後は、唯一の朝鮮語新聞となっていました[5]。

この索引には、同紙の文学関係、美術・音楽、文化一般の記事が収録されています。排列は年月日順で、記事の分類、標題、筆者等が表形式で掲載されています。

1943年11月から12月にかけて確認してみると、以下の記事がありました。

  1. 香山光郎「朝鮮의學徒여(朝鮮の学徒よ)」1943年11月4日夕刊(13015号)
  2. 同「學兵에게感謝(学兵に感謝)」1943年12月10日夕刊(13051号)

当館で所蔵している『毎日新報』縮刷版【Z99-AK32】を確認すると、実際には、それぞれ翌日付の新聞に掲載されていました。①は、1943年11月5日付の1面、②は、同年12月11日付の2面です。ただし、この縮刷版は、印刷が不鮮明で、判読が困難な状態です。

3. 朝鮮語の新聞記事データベース

韓国では、植民地期朝鮮で発行されていた新聞のデータベース化が進んでおり、インターネット上で多くの紙面イメージを確認できます。以下のようなデータベースがあります。

BIGKinds(韓国言論振興財団)
https://www.bigkinds.or.kr/

고신문(古新聞)で、『毎日新報』などの新聞12タイトルの原文が、PDF形式で閲覧できます。日付での絞り込みやキーワード検索が可能です。

뉴스 라이브러리(ニュースライブラリ)(ネイバー)
http://newslibrary.naver.com/

『동아일보(東亜日報)』など4紙が創刊号から閲覧できます。日付での絞り込みやキーワード検索が可能です。印刷はできません。

대한민국 신문 아카이브(大韓民国新聞アーカイブ)(国立中央図書館)
http://www.nl.go.kr/newspaper/

『毎日申報』など、1890年代~1950年代に発行された新聞65紙の原文が閲覧できます。キーワード検索も可能です。

한국사데이터베이스(韓国史データベース)(国史編纂委員会)
http://db.history.go.kr/

시대별 일람(時代別一覧)>일제강점기(日帝強占期)に、『東亜日報』などの新聞が収録されており、原文が閲覧できます。日付での絞り込みやキーワード検索が可能です。

『毎日新報』は、上記のうち「BIGKinds」と「大韓民国新聞アーカイブ」で閲覧可能です[6]。①の記事(1943年11月5日)を、「BIGKinds」で記事名から検索して探す方法をご案内します[7]。

トップページ>뉴스라이브러리(ニュースライブラリー)>고신문(古新聞)>키워드 검색 (キーワード検索)において、「朝鮮의學徒여」と入力し、「검색(検索)」>検索結果一覧から、1943年11月5日の行の右端にあるPDFファイルで紙面が確認できます(図1参照)。

図1 「BIGKinds」のキーワード検索による「朝鮮의學徒여」の検索結果
図1 「BIGKinds」のキーワード検索による「朝鮮의學徒여」の検索結果

(出典)https://www.bigkinds.or.kr/news/libraryNews.do

紙面イメージのPDFファイルを確認すると、詩の形式で、朝鮮半島の学徒志願兵に対して激励したものでした。

なお、②の記事は、学徒志願兵への期待を述べた寄稿です。いずれも本文は朝鮮語です。

「대한민국 신문 아카이브(大韓民国新聞アーカイブ)」でも、キーワード検索にて『毎日新報』の原文が閲覧できます。ただし、当館所蔵の縮刷版同様、文字の判読が困難な部分があります。

図2 「大韓民国新聞アーカイブ」のキーワード検索による「朝鮮의學徒여」の検索結果
図2 「大韓民国新聞アーカイブ」のキーワード検索による「朝鮮의學徒여」の検索結果

(出典)http://www.nl.go.kr/newspaper/

4. まとめ

今回は、新聞名は違ったものの、お尋ねの趣旨の新聞記事を特定することができました。

以上の手順をまとめると、

  1. 文学事典や新聞記事索引などを参照し、掲載媒体や日付の情報を得る(ただし、情報が得られない場合もある)。
  2. 得られた情報をもとに、新聞原紙あるいはデータベースで当該記事を確認する。

特に新聞の場合は、日付が不確かなまま紙面を確認していくのは大変骨が折れます。索引類などを使って絞り込むことに少し時間をかけると、調査がスムーズにいくのではないかと思います。アジア情報室では、そのお手伝いもできますので、お気軽にお声掛けください。

(たなか ふくたろう)



[1] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「朝鮮半島の近現代文学について調べる」http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-127.php

[2] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「1945年以前に朝鮮半島で発行された日本語新聞および洋新聞」http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-62.php

[3] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「1945年以前発行の当館所蔵の朝鮮語新聞」http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-52.php

[4] なお、毎日新聞の記事を検索・閲覧できるデータベースの「毎索」には、朝鮮版が収録されていません。

[5] 「매일신보[每日申報]」(대한민국 신문 아카이브(大韓民国新聞アーカイブ)の解題を参照。http://www.nl.go.kr/newspaper/sub05.do?paper=%EB%A7%A4%EC%9D%BC%EC%8B%A0%EB%B3%B4_%E6%AF%8F%E6%97%A5%E7%94%B3%E5%A0%B1

[6] 両者とも、データベースでの新聞名は、創刊時の『毎日申報』となっています。

[7] ただし、記事の執筆者名からは検索できません。

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