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『"扫黄打非"案与法』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(14):アジア情報室通報 15巻3号

1.19. 马爱民(馬愛民)著『"扫黄打非"案与法("ポルノ・違法出版物一掃"の事例と法)』太原:山西经济出版社, 2016.1, 4, 2, 410p. 【AC9-711-C101】

"掃黄打非"とは、ポルノ(「黄」)及び違法出版物(「非」)等の撲滅を目指す、中国政府のスローガンである[1]。中国では、著作権法の施行(1990年)、刑法改正(1997年、猥褻または違法な出版物の制作・販売及び著作権侵害に関する項目の追加)などの法的整備を行い、これら出版物の取り締まりを行ってきた[2]。近年では、例えば、中国共産党第18回全国代表大会における胡錦濤総書記(当時)の報告で、「"掃黄打非"を推進し、低俗な現象を排除する。」[3]と言及している。

著者の馬愛民は、山西省新聞出版局出版物市場"掃黄打非"事務局主任、全国"掃黄打非"業務査察員等を務めるなど、"掃黄打非"業務に18年間従事してきた人物である。本書は、出版関係者、公務員及び一般向けに、"掃黄打非"の実例や法解釈を紹介することを目的としている。

第1章から第4章では、"掃黄打非"が対象とする、「ポルノ商品の販売」「違法出版」「著作権侵害」「偽記者による恐喝・詐欺」をそれぞれ取り上げ、関連法規、犯罪の定義、違法出版物の識別方法等を紹介している。事例の紹介部分には、「"目の保養"のために罪人となる:私利私欲に走りポルノを広めた司某と孫某の例」「ゲーム名人の人生の敗北:章某らの著作権侵害例」など、読者の興味を引くようなタイトルが付され、経歴、犯罪に至る経緯、処罰の根拠、裁判の焦点などが平易に紹介されている。

第1章では、ポルノ商品や関連する犯罪行為の種類、罰則、法規上の定義、関連法規や、書籍、映像・電子資料など媒体別の識別方法を紹介している。また、ポルノ商品に関する犯罪が青少年の育成や治安へ悪影響をもたらすと指摘するとともに、ポルノサイトのサーバやポルノDVD等の多くが海外由来のものであることから、中国に敵対する勢力が中国国内に反動思想や猥褻な文化を浸透させようとしている、と考察している。

第2章では、違法出版物について、出版許可を得ずに出版された「非法出版物」と、法律で禁止された内容を掲載する「違禁出版物」の2種類に分けて説明し、また、内容、出版情報、外見などから違法出版物を識別する方法も紹介している。

第3章では、著作権侵害においては、DVD等の映像製品が多数を占めると指摘している。識別方法として、2章で紹介したもののほか、映画やドラマの公開後すぐに発売されたもの、1枚の媒体に複数の国または映画会社の作品を収録したものは海賊版の疑いが強いこと、その他、媒体に刻印された識別コードなどによる判別が可能なこと等を紹介している。

第4章で取り上げる「偽記者による恐喝・詐欺」とは、新聞記者[4]を騙って企業等に「取材」を行い、スキャンダルを見つけて口止め料を要求すること、宣伝記事を掲載する見返りを要求すること、あるいは、一般人に対して、記者の人脈を利用して就職・進学への便宜を図ると持ちかけ、見返りを要求すること、といった行為を指している。著者は、「偽記者」の行為について、被害者の損失だけでなく、新聞社及び正規の新聞記者全体への信頼を損ねるなど、社会への悪影響も問題であるとしている。

第5章「権利保護、通報、奨励」では、違法出版物等に対し一般公衆及び出版関係者が理解を深めることが必要であると説くほか、当局や警察への通報方法、奨励金[5]の支給等について紹介している。

(アジア情報課 水流添 真紀)

[1] 「黄」は、中国では猥褻な書物・映像等を指す。公的な場における初期の使用例として、1989年に国務院が開催した全国整頓整理書報刊及び音楽映像市場電話会議が確認できる。
「党中央国务院召开电话会议作出部署 健康深入地开展"扫黄"工作」『人民日报』1989.8.25, p.1.

[2] 現在の国及び地方レベルの活動状況については、以下を参照。
全国扫黄打非网 http://www.shdf.gov.cn/

[3] 「胡锦涛在中国共产党第十八次全国代表大会上的报告(2012.11.8)【6】」人民网
http://cpc.people.com.cn/n/2012/1118/c64094-19612151-6.html

[4] 中国で新聞記者として活動するには、新聞社に正式に雇用されるなど一定の条件を満たし、記者証を公布されている必要がある。
「新闻记者证管理办法(中华人民共和国新闻出版总署令第44号)」2009.8.24.
http://www.gov.cn/gongbao/content/2010/content_1565495.htm

[5] 例えば、海賊版については、通報内容に応じて最高10万元の奨励金が支給されることが紹介されている。

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