トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報記事の種別から探す社会科学分野の資料紹介朝鮮語>『2015「慰安婦」合意 このままではいけない』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(15):アジア情報室通報 15巻4号

『2015「慰安婦」合意 このままではいけない』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(15):アジア情報室通報 15巻4号

2.15. 김창록(キム・チャンノク), 양현아(ヤン・ヒョナ), 이나영(イ・ナヨン), 조시현(チョ・シヒョン)『2015 '위안부' 합의 이대로는 안 된다(2015「慰安婦」合意 このままではいけない)』坡州 : 경인문화사(景仁文化社), 2016.6, 181p【EG71-K64】

2015年12月28日、岸田文雄外務大臣(当時)と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官(当時)が会談を行い、慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」(以下、「2015合意」とする。)した[16]。

本書は、2016年1月に、日本の国家的な謝罪と賠償、歴史教育を要求する場として「日本軍「慰安婦」研究会」[17]を立ち上げた著者らが、これまで日本軍「慰安婦」問題の解決に向けた活動や研究に携わってきた経験を踏まえ、被害者、日韓の過去清算の歴史、国際法、市民運動の観点から、2015合意について批判的に考察した論文集である。以下、各論文の内容を紹介する。

  • 第1論文 2015年韓日外交長官の「慰安婦」問題合意において被害者はどこにいる(た)か?:その内容と手続(ヤン・ヒョナ(ソウル大学校法学専門大学院教授))

2015合意は、内容・手続の両面で被害者不在であるとしている。被害者として、韓国政府に登録された「狭義の被害者」、特定できない20万人の「広義の被害者」のほか、被害者的性格を持つ者として、前二者それぞれの家族、親族、市民らも挙げている。これら重層的な被害者の存在が、被害の回復や問題解決の方法が一筋縄ではいかない原因であると指摘している。被害の回復のために、故人となった「慰安婦」被害者に対する記憶事業(慰霊事業)、遺骨の収集と返還、真相究明の努力と教育の継続のほか、韓国政府に対しては、国際人権法及び国際人道法に照らした、慰安婦問題の解決に向けた行動を求めている。

  • 第2論文 2015韓日外交長官合意」の実態と問題点(キム・チャンノク(慶北大学校法学専門大学院教授))

2015合意について、「女性のためのアジア平和国民基金」設立時に出された内閣総理大臣名義の「おわびの手紙」とほぼ同様の文言で、日本が改めて法的責任を認めたのではない点、財団設立と10億円拠出は、同基金と同様、賠償金ではない点、強制性の認定は河野談話より後退し、真相究明や慰安婦に関する歴史教育に対する言及がない点を指摘している。また、「不可逆的に解決」や「国際社会において互いに非難・批判することを控える」ことは、韓国政府に対して過度な要求であるとし、2015合意は韓国外交の失策であると結論付けている。

  • 第3論文 韓日外交長官合意が法的に意味するもの」(チョ・シヒョン(誠心女子大学校、建国大学校副教授等を歴任))

2015合意について、条約ではなく政治的な合意に過ぎないとし、国際法に対する言及もなく、法的な謝罪でもないとする。財団設立と日本政府による資金拠出については、定款も作成されておらず、事業の円滑な遂行に疑問があるとしている。また、少女像移転問題については、日本がこの問題を国際法の観点からアプローチしており、韓国政府がこれを「認知し」たのは、国際紛争の余地を認めたと受け止められかねないと指摘する。互いに非難・批判することを控えることが盛り込まれたことについては、今後の韓国の外交活動の制約となる可能性があるとしている。

  • 第4論文 フェミニズムの観点から見た日本軍「慰安婦」運動の歴史と「2015韓日合意」の問題点(イ・ナヨン(中央大学校社会学科教授))

日本軍「慰安婦」運動について、民間団体が歴史に埋もれていた問題を社会的・政治的に争点化し、世界的に取り上げられるようになった点において、韓国女性運動史上画期的であるとする。2015合意については、生存者が求める犯罪行為の認定と真相究明、その行為に対する処罰と法的賠償を無視した、加害者とその同調者による政治的野合であると一蹴し、この合意によって、日本軍「慰安婦」運動が、個人や特定集団に対する見返りの要求ではなく、責任の継承と不正義をただすという義務感を呼び起こし、かえって運動が拡散されることになったと指摘している。

(アジア情報課 田中 福太郎)

[16] 日韓両外相共同記者発表」外務省ウェブサイト, 2015.12.28. http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html

[17] 「국내외 학자 56명 모여 '일본군위안부연구회' 발족(国内外学者56名が集まり「日本軍慰安婦研究会」発足)」聯合ニュースウェブサイト, 2016.1.29. http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2016/01/29/0200000000AKR20160129140700004.HTML

  • 国立国会図書館
  • NDL-OPAC 国立国会図書館蔵書検索・申込システム
  • 国立国会図書館サーチ
  • 国立国会図書館デジタルコレクション
  • ひなぎく
  • レファレンス協同データベース
  • 本の万華鏡