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台湾情報の調べ方 ~諸制度と統計を中心に~―平成29年度アジア情報研修 概要報告―:アジア情報室通報 16巻1号

アジア情報室通報 第16巻1号(2018年3月)
丹治 美玲(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

平成29(2017)年10月26日(木)及び27日(金)、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所(以下、「アジ研」という。)において、当館とアジ研との共催により、平成29年度アジア情報研修を実施した。この研修は、アジア情報の収集・提供に関する知識の増進と探索スキルの向上を図り、また、当館とアジア情報関係機関との連携を深めることを目的として、当館が平成14(2002)年度から毎年実施しており、今年度で16回目となる。

今回は、「台湾情報の調べ方」をテーマに、台湾の諸制度や統計の調べ方に主眼を置いた研修を行った。以下、その概要を報告する。

1. 研修の特徴と目的

ここ数年、本研修には3つの特徴と目的を持たせることとしている。

第一は、アジ研との共催である。今年度は一昨年度と同様に、アジ研を会場とした。これを反映してか、参加者19名のうち12名が、関東地方からの参加者であった。

第二は、研修の形式である。グループワークで調べる実習形式を中心とし、事前課題も課した。他の参加者の取り組み方や考え方を知ることで、各研修生が、主体的に成果を得られると考えた。

第三は、参加者の多様な属性である。本研修が情報交換の場ともなることを期待して、当館及びアジ研は、台湾研究の学会や、イベントカレンダー等も活用し、広く参加を呼びかけた。その結果、大学図書館員5、公立図書館員5、研究者4、大学院生3、大学職員1、企業1という多様な属性の研修生が集まり、グループワーク等において、活発な意見・情報交換が行われることにつながった。

さらに今回工夫した点は、事前課題の再調査及び解説を軸としたことである。これは、過去のアンケートで寄せられた、より多くの実習時間を求める声に応えたものである。

また、本研修は中国語の読解力を有することを参加要件としなかったため、約半数の研修生は中国語の読解力を有しない方々であった。中国語読解力の有無は調査プロセス等にも影響すると思われたため、その有無でグループ分けを行った(読解力ありの班が2つ、なしの班が2つ、計4班(各班4~5人))。

2. 各科目の概要

2.1. イントロダクション

(アジア情報課課長補佐 冨田 圭一郎)

最初に、前述した本研修の特徴と目的を明示した上で、諸制度や統計を信頼性の高い資料・情報にあたって調べることの意味や意義について説明した。

  • 諸制度や統計は、台湾に限らず、各国・各地域の事情を調べる際に把握しておくべき基礎的な情報である。
  • 諸制度や統計を調べる際には、他人によって編集・加工されていない一次資料・情報に当たることが重要である。
  • 一次情報を調べることは、自分で事実関係を確認する(裏を取る)作業である。多少手間はかかるが、図書館員や研究者だけでなく、一般の公務員や会社員等の仕事においても、必要かつ有益である。

2.2. 実習① 台湾の諸制度を調べる

(アジア情報課アジア第二係長 丹治 美玲)

研修当日の配布資料は、当館及びアジ研のウェブサイトに掲載したので、実習①②の講義内容はそちらをご参照いただくこととし[1]、本稿では、実習の流れと、研修中に気づいた点や当日の質疑等について簡単に紹介したい。

初めに、グループワークによって各参加者が事前課題の調査プロセスや参照したウェブサイト等について情報交換を行った。

次に、台湾に関する基本的な情報や最新情報を得るための参考となる資料・ツールを紹介した後、グループワークの形で事前課題について再調査を行った。研修生による調査結果の報告後に、解答例を紹介し、あわせて台湾の法令が検索できるウェブサイト等の参照方法を解説した。

課題に対し、各グループとも二次情報のみで満足せず、中国語の政府サイト等で一次情報を調べようとする意識が見られた。中国語の読解力を有するグループと有しないグループとの間に、調査プロセスや結果に大きな違いが見られなかったのが、やや意外であった。

質疑では、以下のようなやりとりがあった。

  • 乗用車の登録実態等、法令ではわからない現地事情は、どのように調べたらよいか。
    ⇒あまりに細かい現地情報は、情報として現れない可能性がある。調査の方法としては、現地の新聞記事等を見ていくことが考えられる。満足する情報が得られない場合、最終的には、現地調査が必要ではないか。
  • 古い資料や専門的な資料等のデジタルアーカイブ等はないか
    ⇒リサーチ・ナビのコンテンツ「アジアの文化機関のデジタルアーカイブ(中国・台湾・韓国)」[2]等で紹介している。

2.3. 実習② 台湾の統計を調べる

(アジア経済研究所図書館研究情報企画課課長代理 澤田 裕子 氏)

初めに、アジ研図書館が所蔵する統計コレクションを紹介し、国際機関の統計では台湾のデータが得られないことや、台湾の統計制度や統計組織について解説された。

次に、実習①と同様に事前課題に関してグループワークを行った後、事前課題についての使用言語別の解説や、台湾の省庁の統計データベース等の参照方法について紹介された。

グループワーク後の発表では、最初から中国語でアプローチする方法も紹介される等、実習①よりも調査方法にばらつきが見られたことが、筆者にとっては興味深かった。

質疑では、以下のようなやりとりがあった。

  • 台湾に関する参考図書を調べられるツールはないか。
    ⇒アジ研ウェブサイトには、所蔵する参考図書のリストがある。また、赤松美和子,若松大祐『台湾を知るための60章』(明石書店, 2016)の付録に「台湾理解のための文献案内」があり、ツールが紹介されている。
  • 台湾の統計について信頼性のある日本語情報が見つからなかった場合は、行政院主計総処のホームページを参照すれば良いか。
    ⇒行政院主計総処のポータルサイトが手始めとしてお薦めできる。様々な統計の情報が掲載されており、そこから政府各部のサイトに行くこともできる。

2.4. 講演 台湾情報の入手方法

(アジア経済研究所新領域研究センター長 佐藤 幸人 氏)

3つの観点から、台湾情報の入手に役立つウェブサイトや文献情報等が紹介された。

  1. 問題を発見する
    地域研究では、継続的に対象地域の動向を観察することが新たな問題の発見につながる。台湾の最新動向を知るためには、新聞や雑誌のウェブサイトが参考になる。具体的には、聯合報・経済日報[3]、中国時報・工商時報[4]、自由時報[5]、蘋果日報[6]、商業周刊[7]、今周刊[8]、新新聞[9]、財訊[10]、天下雑誌[11]、遠見雑誌[12]や、IT IS智網[13]、Y's News[14]、NNA倶楽部ビジネスニュース[15]等のニュースまとめサイトがある。
  2. 先行研究を調べる
    中国語の先行研究を調べるには、台湾国家図書館が提供するデータベース「台湾期刊論文索引系統[16]」「台湾博碩士論文知識加値系統[17]」「台湾人文及社会科学引文索引資料庫[18]」等が有用である。日本語の先行研究を調べるには、日本台湾学会作成の「戦後日本における台湾関係文献目録[19]」が有用である。
  3. 研究の材料を集める
    研究の目的や手法により、必要な材料は異なるが、ここでは文献情報について紹介する(佐藤氏はインタビューも重視している)。
  • 政策や産業に関する情報:政府の白書、報告書、ニュースリリース、統計は基本資料である。そのほか、経済団体、業界団体が独自の情報を発信している場合がある。前者はウェブサイトから無料で入手できるものが多いが、後者はその割合が低い。
  • 企業や企業家に関する情報:公式ウェブサイトを参照するのが基本である。伝記やオーラルヒストリーが刊行されていることもある。過去の発言等を調べる際には、台湾国家図書館内のみで利用できる、新聞記事の検索システムが有用である。

3. 研修に対する反応

終了時のアンケートでは、全研修生から、本研修に対して肯定的な評価(満足:14、どちらかといえば満足:5)が得られた。個別の意見や感想としては、事前課題があったことで研修の理解を深められた、語学力別のチーム分けは安心できてよかった、中国語ができなくても勉強になった、専門家による講演が良かった等、内容や形式を評価する声が多く寄せられた。一方、当日新たな課題に挑戦したかった、との意見もあった。

おわりに

短い研修では十分に紹介できなかった内容もあるが、本研修を通じて、①現地の最新情報を正確に把握するためには一次情報を調べる必要があること、②少し手間がかかるが、一次情報を調査すればそれに見合う正確な情報が得られること、の二点は実感していただけたのではないかと考えている。本研修が成功裡に終了したことについて、研修生の皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げる。

次回のアジア情報研修は、平成30年秋頃に関西館で実施予定であり、東南アジア各国の政府情報をテーマとする予定である。ぜひ奮ってご参加いただきたい。

(たんじ みれい)



[1] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成29年度アジア情報研修」http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop29.php
日本貿易振興機構アジア経済研究所「図書館イベント開催報告:平成29年度アジア情報研修「台湾情報の調べ方――諸制度と統計を中心に――」」http://www.ide.go.jp/Japanese/Library/Event_report/20171026_kouen.html
(ウェブサイトの最終アクセス日は2018年2月6日。以下同じ)

[2] https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-129.php
以下、本稿の注記では、本文中に明記している情報源の作成者及び名称の記述は省略する。

[3] https://udn.com/news/index

[4] http://www.chinatimes.com/

[5] http://www.ltn.com.tw/

[6] https://tw.appledaily.com/

[7] http://www.businessweekly.com.tw/

[8] http://www.businesstoday.com.tw/

[9] http://www.new7.com.tw/

[10] http://www.wealth.com.tw/

[11] http://www.cw.com.tw/

[12] https://www.gvm.com.tw/

[13] http://www.itis.org.tw/Default.aspx

[14] https://www.ys-consulting.com.tw/news/

[15] https://www.nna.jp/club_contents

[16] http://readopac.ncl.edu.tw/nclJournal/

[17] http://ndltd.ncl.edu.tw/

[18] http://tci.ncl.edu.tw/

[19] https://www.koryu.or.jp/publications/bibliography/

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