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『新中国の軍事外交と国際平和維持研究』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(16):アジア情報室通報 16巻1号

1.22. 杜农一, 周辉, 杨凯 著『新中国军事外交与国际维和研究 = Military diplomacy of new China and international peacekeeping(新中国の軍事外交と国際平和維持研究)』北京 : 国防大学出版社, 2015, 3, 3, 2, 236p. 【A99-C9-C149】

「軍事外交」とは中国の特徴的な概念であり、本書では、「①軍事的性質を帯びた、または安全保障に関連する外交活動、②軍事力をもって行う外交活動、または軍事力による外交的手段を通して国益を実現し国家の安全を維持すること [1]」と定義している(p.11)。

本書では、中国の軍事外交と、その重要な構成要素と位置づける国連平和維持活動(以下、「PKO」という。)について論じている。実際に軍事外交に携わる者(著者のうち杜農一は、元人民解放軍国際関係学院副院長、2014年から駐韓国中国大使館の駐在武官)の視点も反映されており、中国の軍事外交やPKO参加について理解するうえで有用な資料であると思われる。主な内容は、下記のとおりである。

まず第1章「中国軍事外交理論概説」では、中国の軍事外交の概念やその歴史的変遷を整理している。軍事外交の発展を大きく2つの時期に分け、後半の1979年以降は「平和と発展の時代」であるとして、①相互訪問等の交流、安全保障対話、合同演習、技術協力といった多様な軍事交流、②「上海協力機構 (SCO)」「ASEAN地域フォーラム (ARF)」等の地域安全保障機構の構築による多国間軍事外交、③テロリズムへの対処等非伝統的安全保障分野での国際協力、④PKO参加等による国際協力活動への関与の拡大、⑤国際的な「話語権[2] 」の拡大による中国軍の良好なイメージの形成といった活動によって、中国の軍事外交は全面的に発展したとしている。

第5章「国際平和維持活動と中国の参加」では、まず、中国のPKO政策について、1980年代に、国連の活動に積極的に参加し個別柔軟に対応する方針に転換してPKOを肯定し、90年代以降は積極的な参加を続け、現在では、安保理常任理事国中最多の要員を派遣している、と整理している [3]。次に、PKOに対する中国政府の基本的立場は、1995年に銭其琛副首相兼外交部長(当時)が示した基本原則(内政不干渉、平和的手段による解決、二重規範への反対、PKO基本原則(当事国の同意、中立性、自衛を除く武力不使用)の遵守、条件の整わないPKOの不実施)と、その後強調している5点(①「国連憲章」の趣旨・原則に基づく安保理の主導的役割の発揮、②国連の主導的役割の下での地域組織との協力強化、③平和的手段による紛争解決の堅持、武力使用の反対、④PKO基本原則の遵守、⑤実事求是(事実に基づく真理の追求)、力量に応じた行動という原則によるPKOの機能強化)であると説明している。

第6章「中国の国際平和維持活動参加の戦略的チャンスと制約要因」では、中国のPKO参加には、責任ある大国としての国際的な責任の履行、和諧世界(調和のとれた世界)の理念の集中的な体現、中国軍の良好なイメージの提示、軍の新たな使命の履行、外国軍との交流や協力の促進といった意義があるとしている。また、現在、中国と国連は良好な関係にあるが、PKO参加には「韜光養晦(とうこうようかい)[4] 」政策と「責任ある大国」の役割の矛盾や、PKOにおける中国の話語権の欠如といった制約要因もあると指摘している。

第7章「中国の国際平和維持活動参加に関する戦略的思考」では、今後は、中国の話語権やPKOの政策決定権及び指揮権の強化によって、「PKO参加」から「PKO主導」へ転換すべきであり、PKO参加規模の拡大や作戦部隊の選択的な派遣を進めていく必要があると提言している。

アジア情報課 山本 彩佳

[1] 例えば、第1次、第2次台湾海峡危機における対応(金門島への砲撃等)を、軍事外交の代表例として挙げており、軍事力の行使も外交活動の一種であると位置づけている(pp.14-15)。

[2] 発言する権利を指す「発言権」よりも積極的な言葉で、自らの発言を聴いて受け止めさせることのできる力を意味している。鎌田文彦「中国からみた日米関係―「話語権」概念による一視角―」『日米関係をめぐる動向と展望 : 総合調査報告書』国立国会図書館調査及び立法考査局, 2013, p.117.
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8278214

[3] 各国の派遣要員数等のデータは、下記を参照。
"Troop and police contributors," United Nations Peacekeeping website.
https://peacekeeping.un.org/en/troop-and-police-contributors

[4] 1990年代に鄧小平が掲げた「力を隠し蓄える」という外交方針。

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