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『中国台湾問題:幹部読本 改訂版』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(16):アジア情報室通報 16巻1号

1.23. 中共中央台湾工作办公室, 国务院台湾事务办公室『中国台湾问题 : 干部读本 修订版(中国台湾問題:幹部読本 改訂版)』北京:九州出版社, 2015, 3, 3, 190p.【A76-C196】

1998年、本書の初版である『中国台湾問題』が、中国共産党中央台湾工作弁公室及び国務院台湾事務弁公室の編集により刊行された[5] 。その後、『台湾問題読本:党校教材』[6] (2001年)、『中国台湾問題外事人員読本』 [7](2006年)が刊行され、中国においては、この3冊が台湾問題に関する宣伝及び教育において重要な機能を果たしてきた。今回紹介するのは、これらを基礎とした改訂版である。

「幹部読本」の副題があるが、共産党及び政府のトップレベルだけでなく、各地各部門の幹部と大衆が対台湾政策への理解を深め、両岸関係の発展と平和的統一に資することを目的としている。なお、関連法規や文献等を収録した資料集[8]も、併せて刊行されている。

本書は7章からなる。1998年版、2001年版と見比べると、その時々の情勢や編者の問題意識を反映して、構成や内容に変化が見られる。本稿では、以前の版には見られなかった内容を中心に紹介する。

第3章では、1949年から2014年までを、5つの時期に区切って概観している。

このうち、第4節では、党綱領で「台独」を謳う民進党の初政権となる2000年から2008年の中台の動きを取り上げ、陳水扁政権が進めた新憲法の制定、住民投票などについて、「台独」実現のための施策であると批判している。また、2005年の「反国家分裂法」の制定、胡錦濤総書記及び国民党の連戦主席との会談などを、「台独」に対抗する措置として紹介している。

第5節では、国民党の馬英九政権が誕生した2008年5月以降の状況について、中国共産党と国民党が、「92年コンセンサス」[9]及び反「台独」の立場を取ると合意するなど、両岸関係が改善したとしている。この時期の成果として、中国の海峡両岸関係協会及び台湾の海峡交流基金会[10]の協議の9年ぶりの再開、2009年の「三通(通商、通航、通信の直接往来)」の実現、「海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA)」の締結交渉などを紹介している。

第6章では、中国返還後の香港及びマカオと、台湾との関係について考察している。両地域は、「一つの中国の原則」に則り、台湾との交流を推進しているが、特に、2008年の両岸関係の改善以降は、人の往来、貿易、公的交流など、様々な面で、台湾との関係が発展してきたと評価している。また、台湾が、「一国二制度」の成功例である香港及びマカオと交流を深めることが、問題の解決に好影響を及ぼすとしている。

第7章では、中国と台湾の対外政策及び台湾問題に対する国際社会の態度を取り上げている。後者については、アメリカと日本の動向のみを扱っており、特に日本については、1998年版及び2001年版に比して多くの紙幅を割いて論じている。

日本政府は、1972年の日中共同声明において「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」と承認しているが、日本国内には、台湾が貿易上重要な地理的位置にあるため、中国の支配下に置かれることを望まない人がいる等と指摘している。

さらに、台湾問題は、日中間の不安定要素の一つであるとして、例えば、2005年の日米安全保障協議委員会での共同発表[11]において「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す。」との文言を含めたことについて、台湾海峡の有事の際には日本は米国の武力介入に参加する可能性があり、これは中国の領土と主権に対する侵犯かつ内政干渉であると警戒している。また、李登輝元台湾総統や森喜朗元首相の訪日・訪台や、日台民間漁業取決め[12]への署名など、日台双方が交流を深めていることを例に挙げ、日本政府は台湾問題を利用して継続的に中国を牽制している、と批判している。

(アジア情報課 水流添 真紀)

[5] 中共中央台湾工作办公室, 国务院台湾事务办公室 [编]『中国台湾问题』九洲图书出版社, 1998.9.【A76-C73】

[6] アジア情報室では、書誌情報がやや異なる下記資料を所蔵している。前言に「党校教材として編集」との説明があるため、内容はほぼ同一であると思われる。
中共中央党校, 中共中央台湾工作办公室编著『台湾问题读本 : 试用本』中共中央党校出版社 : 九州出版社, 2001.9.【A76-C40】

[7] 国务院台湾事务办公室 [编] 『中国台湾问题外事人员读本』九州出版社, 2006.【当館未所蔵】

[8] 中共中央台湾工作办公室, 国务院台湾事务办公室 编『中国台湾问题 : 配套资料』修订版. 九州出版社, 2015.3.【A76-C172】

[9] 1992年に台湾と中国の間で「一つの中国」について形成したとされる合意。下記も参照。
湯野基生「『「九二共識」文集』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(5)」『アジア情報室通報』13巻2号, 2015.6, pp.18-19.
http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin13-2-5.php

[10] それぞれ、双方の交渉窓口となる機関。

[11] 共同発表 日米安全保障協議委員会」2005.2.19. 外務省ウェブサイト
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/2+2_05_02.html

[12] 「「公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の漁業秩序の構築に関する取決め」(略称「日台民間漁業取決め」)について」2013.4.10. 公益財団法人交流協会ウェブサイト
https://www.koryu.or.jp/news/?ItemId=637&dispmid=4259

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