トップアジア諸国の情報をさがす刊行物アジア情報室通報巻号から探す第16巻(2018年)>アジア資料・情報の有効活用に向けた図書館と大学教員の役割及び連携  ―平成29年度アジア情報関係機関懇談会 概要報告―:アジア情報室通報 16巻2号

アジア資料・情報の有効活用に向けた図書館と大学教員の役割及び連携  ―平成29年度アジア情報関係機関懇談会 概要報告―:アジア情報室通報 16巻2号

アジア情報室通報 第16巻2号(2018年6月)
南 亮一(国立国会図書館関西館アジア情報課長)

はじめに

 平成30年3月6日(火)、国立国会図書館関西館(以下、「関西館」という。)において、平成29年度アジア情報関係機関懇談会を開催した。

 今回は、「アジア資料・情報の有効活用に向けた図書館と大学教員の役割及び連携」をテーマとし、アジア専攻の大学教員、大学図書館等及び関西館から報告を行った後、図書館における利用者教育の研究者によるコメントを踏まえて出席者全員で懇談を行った。以下、各々の概要を紹介する。なお、本懇談会の当日配布資料等を当館HP内に掲載したので、御参照いただきたい[1]

 

1. 大学教員からの報告

1.1. 報告①:朝鮮関係資料・情報の利用教育と図書館との連携-天理大学での取組を例に-(天理大学国際学部准教授 長森 美信氏)

 天理大学には、朝鮮関係資料・情報が得られる図書館等が3施設ある。これらの施設に所蔵がない場合は、関西館が利用できる。学生にとって恵まれた利用環境にあるといえる。

 韓国・朝鮮語専攻の学生は、1年次には図書館等の使い方を、3年次には言語学・文学・歴史学の各分野に関する情報の検索方法や利用方法を学ぶ。紙媒体の資料に慣れていない学生には、現物を見せながら丁寧に説明する必要がある。4年次の夏に関西館を訪問し、比較的新しい資料や、関西館の契約データベースのKISS(Koreanstudies Information Service System)を利用することで、学内で閲覧できない資料をカバーしている。

 恵まれた利用環境を生かして学習や研究に取り組む学生を増やしていくかが課題である。

 

1.2. 報告②:インドネシア語資料・情報の利用教育と図書館との連携(南山大学国際教養学部教授・図書館長 森山 幹弘氏)

 南山大学の外国語学部アジア学科は1年次に中国語とインドネシア語が必修で、学科生の約半数が1年間現地に留学する。卒業論文では、アジア言語の文献、資料を使用すること、15ページ以上、日本語又はアジア言語で執筆することを要件としている。

 アジア学科の2017年度卒業論文69篇のうち、インドネシアを扱った13篇の中で努力賞を受賞した論文では、インドネシア語の紙媒体の文献や、インターネットで閲覧できる日刊紙の記事を活用していた。

 学生には、文法を学びしっかりとアジア言語の読解ができる能力を育成してもらうべく、半年から1年間留学し、その間に本を読むことを勧める。また、入学時から図書館利用を習慣づけるため、課題図書や指定図書を利用するレポートを課している。

 図書館の利用講習会には1年生向けの初級とゼミでの活用向けの中級がある。早い時期に講習会を開催し、紙しか閲覧できないものを示す。アジア言語を利用するための講習会では、指導教員が文献の活用法を教えている。

 デジタルネイティブ世代の学生には、インターネットを使って図書館の利用へ導く取組や、インターネットで入手できない場合に紙媒体を探させる指導等が必要である。

 

2. 大学図書館等及び当館からの報告

2.1. 報告①:大阪大学外国学図書館の利用教育における教員との連携(大阪大学附属図書館学術情報整備室 白石 真之氏(前・箕面地区図書館サービス課))

 大阪大学外国学図書館では、教員の要望に応じてゼミごとにガイダンスを実施しており、就職活動の時期を考えて秋にも行っている。

 論文検索ガイダンスと書庫ガイダンスの2つを実施し、演習課題の変更や紹介するデータベースの変更、指定雑誌掲載論文限定の検索用リンクの作成等、教員からの要望に応じ、ガイダンスの内容をカスタマイズしている。教員がデータベースの説明を行うこともある。

 専攻によりガイダンスの実施にばらつきがあること(14専攻語では申込がない)や2回生を対象としたガイダンスが極端に少ないこと、このようにアプローチできていない対象のニーズ把握が課題である。また、レファレンス対応の減少や担当者の異動により、サービスの向上・継承が難しいという課題もある。

 これらの課題に対し、教員等との接点を増やしてガイダンスのニーズを把握したり、各学年ごとのゼミガイダンスの試み、教員との共催イベントの実施等の取組を行っている。

 

2.2. 報告②:アジア資料・情報の有効活用をめざして-アジア経済研究所図書館の取組-(日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館研究情報レファレンス課課長代理 高橋 理枝氏)

 アジア経済研究所(アジ研)図書館は、現地語でしか得られない情報もあるとの考え方から、アジア言語資料の積極的な収集や活用を行っている。このため、アジア言語を解する利用者に対しては積極的にアジア言語資料を含めた情報提供を行い、また、NACSISにも積極的に目録を登録することで、資料の存在の可視化に努めている。

 アジ研図書館では、アジア言語資料の活用に関して、①図書館見学・オリエンテーション、②レファレンス、③大学図書館での資料展、④アジア情報研修、⑤書誌作成に関する情報交換会への参加の5つに取り組んでいる。

 アジ研図書館のリソースをより広く社会に活用してもらうため、大学と連携したアジア言語資料の利用教育の促進、立地の悪さの克服及び所属学生を抱えていない図書館としての役割の在り方の検討を引き続き行っていく。

 

2.3. 報告:アジア情報室が行う連携協力活動-アジア資料・情報の有効活用のために-(国立国会図書館関西館アジア情報課課長補佐[2] 冨田 圭一郎)

 アジア情報課では、アジア地域に関する各分野を調査研究し、かつ、日本国内でアジア言語資料・情報を入手しようとする人を「コアとなる利用者」と位置付け、その情報ニーズや利用目的を知り、継続的に関与・サポートするという活動に取り組んでいる。

 その活動は大きく2つあり、1つめは、アジア情報の調べ方に関する研修である。①アジア言語の知識がない人向けの、すそ野(基礎となる部分)を広げる研修と、②一次情報を調べる実習を行う、積極参加型の研修の2パターンの研修を実施している。これらの研修を通じ、受講者の情報ニーズや利用目的を知り、受講者との情報ネットワーク等の関係構築を行うことができる。

 もう1つが、大学図書館や関係機関との連携協力活動である。①大学教員(アジア研究者)と連携して、アジア専攻の院生・学生を対象とする来館ガイダンスの実施、②大阪大学外国語学部の院生・学生を対象とする、同学外国学図書館との合同利用ガイダンスの実施、③東京大学附属図書館アジア研究図書館(U-PARL)主催セミナーへの講師派遣、④アジア諸言語資料の書誌作成に関する情報交換会への参加、といった活動が挙げられる。

 これらの活動を通じ、コアとなる利用者の情報ニーズに応えるサポートを、継続的かつ能動的に進めることが重要であると考える。

 

3. 各報告に対するコメント(青山学院大学教育人間科学部准教授 野末 俊比古氏)

 図書館における利用者教育は、現在では情報リテラシー教育という外部的な文脈に位置付けられ、その意義は、「学修」を進めるために必要な学習能力の育成(教育・学修支援)という枠組みから捉えられる。

 必要とされる文献・情報活用の能力におけるニーズは、現状と目標のギャップとして捉えられる。また、習得すべき内容は、技術依存性、分野指向性、修得必要性といった軸の上で位置付けることができる。その中で、特にアジア言語・情報に固有の状況・事項について検討していく必要がある。

 利用者教育を行う場合、修得すべき内容を踏まえて体系的なプログラムを組む必要がある。とりわけ、卒業論文の執筆等の「教える好機」を(待つのではなく)作ることが重要となる。特に初学者の時点では、具体的な検索法等の指導の前に、「印象づけ」や「サービス案内」の段階を踏まえることが肝要である。また実際の教授者については、多様に選択・設定でき、例えばOPACの指導も、すべて図書館員が担当するということにはならない。

 有効な情報リテラシー教育の前提となるのは、利用者の分析・把握である。デジタルネイティブの学生の情報利用行動には、スマートフォンで検索をして出てこなければ諦めがちである等、相応の特徴や傾向がある。

 また、教員と図書館との連携を効果的・効率的に展開するには、プログラムの共有が必要となる。図書館がそのメニューを事前に用意することがポイントの一つである。さらに、レファレンスサービス等の「利用の支援」、利用自体が容易なシステム構築などの「基盤の支援」も併せて考えておく必要がある。

 

4. 懇談-アジア資料・情報の利活用促進に向けた図書館と大学教員の役割及び連携-

 オブザーバー参加の大阪大学外国学図書館の野原亜希氏も含めた全出席者で意見交換を行い、次のような意見が出された。

・図書館のガイダンスは、教室では提供できない「非日常」の経験を学生に与えている。他機関での資料展示も直接利用者増につながるというより、非日常の演出という利点があるのではないか。

・デジタルネイティブの学生には、実際に資料を探す必要性を指導する必要がある。

・教員によって図書館活用の取組に温度差があり、活用する教員は固定化する傾向にある。教員がすぐに活用できるようなプログラムやマニュアルを作成する、FD[3]として取り組む、自己点検評価の指標として取り上げる、教員の図書館活用事例をオープンにすることが活用促進策として考えられる。

・教員と図書館との間で学生像を共有し、それに沿った形で図書館が「課題」と「リソース」をセットにしたメニューを用意し、教員は授業に組み入れるという方法もある。

・図書館の利活用促進のためには、図書館で講習を受けると何ができるようになるかという具体的なイメージの共有が重要である。

 

おわりに

 今回の懇談会では、アジア資料・情報の利活用にとどまらず、学生の図書館活用のための方策について、具体的な対応策が見いだせたのではないかと考える。出席者の皆様には改めて御礼を申し上げる。

 この成果を活かした取組を当課でも行っていくが、各関係機関におけるアジア資料・情報等の利活用促進のためのヒントにしていただければ幸いである。

(みなみ りょういち)



[1] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成29年度アジア情報関係機関懇談会」

http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-meeting29.php

[2] 懇談会当時の役職。2018年4月からは同館図書館協力課課長補佐。

[3] Faculty Developmentの略称。「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称。その意味するところは極めて広範にわたるが、授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などを挙げることができる」(中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像」答申(平成17年1月)による定義)とされている。

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