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タイの新聞コラム (レファレンス事例・ツール紹介(11)):アジア情報室通報 16巻3号

新谷 扶美子(国立国会図書館関西館アジア情報課)

当課では、現地で出版された資料に関するお問い合わせを受けることもあります。

本稿では、「タイの元首相ククリット・プラモートが1950年代に執筆し、『サイヤム・ラット』紙に掲載されたという、特定のコラムの掲載年月日が知りたい。」という質問を例として、ウェブサイトを中心に、タイの新聞コラムの調べ方をご紹介します。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2018年8月7日です。

1. 前提条件の確認

 まず、『サイヤム・ラット』が1950年代にタイで刊行されていた新聞であることと、元首相ククリット・プラモートによる寄稿の有無を確認します。タイについての主な事典類や、アジアの新聞事情に関する資料には、以下があります。

  • 石井米雄, 吉川利治 編『タイの事典』(同朋舎出版 1993.3)【GE8-E8
     「東南アジアを知るシリーズ」の第3冊目として刊行された事典です。本編となる項目編のほか、巻頭に「地理」「言語」などのガイドラインが、巻末には資料編として、統計資料や年表、歴代王朝系図などが収録されています。
  • 日本タイ学会 編『タイ事典』(めこん 2009.9)【GE8-J4
     日本タイ学会の編纂によるもので、「総説」「項目編」「主要統計」「資料」「文献案内」「索引」からなっています。
  • 林理介 [ほか]著『アジア・太平洋の新聞』(日本新聞協会 1985.12)【UC129-30
     東アジア・東南アジア・南アジア・オセアニアの新聞事情を、国ごとに解説しています。主要な国内紙が列挙されており、巻末には新聞タイトルの五十音順索引が付されています。
  • アジア経済研究所 編『第三世界のマスメディア』(明石書店 1995.12)【UC21-G3
     東アジア・東南アジア・南アジア・中東など、第三世界のマスメディアについて解説しています。巻末に資料編として、主要新聞や放送の名称、使用言語、発行・放送形態、創刊・放送開始年等の情報を、国別に掲載しています。

上記資料により、『サイヤム・ラット』が1950年創刊のタイの新聞であり、英語名称がSiamRathであること、ククリット・プラモート元首相が社主であるとともに論説主幹であったことがわかります。前提条件が確認できましたので、該当のコラムの探索に進みます。

2. 新聞記事を検索する

新聞名と記事タイトルがわかっていて、掲載年月日がわからない今回のような事例の場合、新聞社のウェブサイトで記事検索ができないかを確認します。国立国会図書館リサーチ・ナビ内のAsiaLinksは、こんなときに便利なアジア関連情報のリンク集です。タイ>新聞・ニュースサイト[1]とたどると、『サイヤム・ラット』紙のウェブサイトも、英語名のSiamRathで掲載されています(図1)。

図1 AsiaLinks>タイ王国 : 放送局, 新聞・ニュースサイト, 雑誌, サーチエンジン・ポータルサイト

สยามรัฐSiamRath
https://siamrath.co.th/
 タイ語版のみのサイトですが、機械翻訳等を使うことで、どこに何が記載されているかといったことは確認することができます。『The Nation』や『Daily News』など、タイにはある程度の検索ができる新聞社サイトもありますが、『サイヤム・ラット』のウェブサイトは、残念ながら記事検索そのものができないようです。

 なお、当館では、『サイヤム・ラット』紙は2004年以降のものしか所蔵していませんので(【Y745-SN-6】)、1950年代を対象とした今回のお問い合わせには使えません。また、同紙の記事が検索できる索引のような資料の所在は確認できませんでした。

3. 図書としての刊行の有無

このように、該当する新聞記事を直接探すことは難しそうですが、執筆者は1.で確認したとおり後年首相になった人物であり、当該新聞の論説主幹を務めた人物でもあります。そうなると、語録や著作集、コラム集のかたちで、図書としての出版がされている可能性があります。

まずは国立国会図書館オンライン[2]を、新聞タイトルสยามรัฐ、そのローマ字翻字形Sayām rat、英語表記SiamRath、ククリット・プラモートのタイ語表記คึกฤทธิ์ ปราโมช、英語表記Kukrit Pramojなどで検索してみましたが、小説やエッセイはあるものの、語録やコラム集と思われるものは見つけられませんでした。

次に、そういったものが実際に刊行されているかどうかも含めて調査を進めます。米国議会図書館(LC)やオーストラリア国立図書館(NLA)のOPAC[3]は、書誌の注記に資料の概要を掲載していることが多く、こういう事例では参考になります。それぞれのOPACを「Sayām rat」「sayamrat」「kukrit」などのキーワードに「columns」を掛け合わせて検索します。ヒットした書誌を順に見ていくと、NLAの書誌に「Collection of author's columns on page five of political review Sayamrat on various national and international political problems.」と書かれた『Sayamrat na 5』という資料が見つかりました(図2)。ククリット・プラモートのコラム集はほかにもいくつかヒットしていますが、年代や内容から判断すると、該当しそうなのはこの資料のみです。

図2 NLAの検索結果

4. 所蔵の確認

では次に、この資料の国内所蔵を確認します。NLAの書誌にはISBNが記載されていませんでしたので、タイトルで検索をしていきます。  当館では所蔵していませんでしたが、CiNii Booksで『Sayamrat na 5』を検索したところ、『สยามรัฐหน้า ๕』という書誌がヒットしました(図3)。タイトルよみに「Sayāmrat nā 5」とあり、著者及び出版年も一致することから、同一資料とみてよさそうです。所蔵機関のうち、京都大学東南アジア地域研究研究所図書室には、Vol.1-13がそろっています。詳細を確認するため、京都大学蔵書検索KULINE[4]を改めて検索しましたが、どの巻に何年のコラムが載っているか、ということまではわかりませんでした。

 図3 CiNii Books検索結果

念のため、タイの図書館のOPACも確認してみます。主なOPACに、以下があります。

 これらのサイトへのリンクも、AsiaLinksからたどることができます[7]

 現地の図書館ですので、タイ語で検索をします。先述の京都大学の書誌もタイ語表記で作成されているため、タイ語がわからなくてもここからコピー&ペーストが可能です。しかし、「สยามรัฐหน้า ๕」で検索したところ、3館ともヒットしませんでした。所蔵がない、と思ってしまいがちですが、数字の5を表す「๕」を外して、「สยามรัฐหน้า」で検索したところ、「สยามรัฐ หน้า 5」という表記で、無事ヒットしました(図4)。

図4 タイ国立図書館OPAC検索結果

ただ、ヒットした書誌にも各巻の詳細な情報は含まれておらず、何巻にお求めのコラムが含まれているかは、結局確認できませんでした。

まとめ

今回の事例では、収録されている可能性がある図書資料の国内所蔵までは確認できましたが、実際に該当のコラムが含まれているか、含まれているとすると何巻に該当するかを確認することはできませんでした。調査のポイントとしては、次のとおりです。

  • 新聞記事は、新聞社HPでの検索の可否を確認する。(機械翻訳を有効利用。)
  • 図書の内容は、欧米図書館の資料概要を含む書誌が参考になる。
  • 現地語での検索は、数字やアルファベットなど別の形で表記される可能性のあるものに注意する。

言語がわからないと、調査も難しく感じてしまいがちですが、今回ご紹介したツールや、国立国会図書館リサーチ・ナビが、少しでも調べもののお役に立てば幸いです。

(にいや ふみこ)

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