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『刑事司法分野の議員立法の成果と限界』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(18):アジア情報室通報 16巻3号

2.18.김한균(キム・ハンギュン), 임정호(イム・ジョンホ), 김정연(キム・ジョンヨン)[]형사사법 분야 의원입법의 성과와 한계 = Critical review of criminal justice bills during the 19th National Assembly of Korea (刑事司法分野議員立法の成果と限界

ソウル : 한국형사정책연구원(韓国刑事政策研究院), 2016.7, ix, 326pAK4-771-K57

 本書を刊行した韓国刑事政策研究院は、各種犯罪の実態、原因及びその対策について総合的・体系的に研究し、国の刑事政策の確立と犯罪防止に寄与することを目的として設置された、政府系研究機関である[1]。著者のキム・ハンギュンは同研究院の研究委員、イム・ジョンホは同研究院副研究委員、キム・ジョンヨンは、同研究院専門研究員である。

 本書は、第20代国会(2016年~2020年)における議員立法の成果を高めることを目的として、第19代国会(2012年~2016年)における刑事司法分野の議員立法の成果と限界を分析し、体系的かつ効果的な立法政策を提示している。具体的には、第19代国会期間中に議員から発議された法案(15,444件、全法案の87%)のうち、刑事司法分野の836件について、現行刑事法の体系とバランスが取れない法定刑の加重問題、刑事特別法の規定が大量に生み出されることによる基本法と特別法の体系の適合性の問題等を分析し、憲法に立脚した内容と形式を備え、政策効果を高めるための改善案を示している。

 7章からなり、巻末に、発議日、議案番号、制定・改正法案、発議者名、法案の主要内容等を記した一覧表「第19代国会における刑事司法分野の議員立法案分析資料」がある。

 以下、「第2章 第19代国会における刑事司法分野の議員立法の現況分析」(キム・ジョンヨン)、「第5章 刑事特別法の制定・改正法案分析」(キム・ハンギュン)、「第7章 結論:第19代国会における議員立法の成果と改善案」(キム・ハンギュン)の内容を紹介する。

 

 第2章では、議員提出法案の状況をまとめている。議員提出法案15,444件のうち、約5%(836件)が刑事法関連であり、うち、刑法及び刑事訴訟法改正案が19.7%(165件)、性犯罪に関する刑事特別法案が19.1%(160件)、その他刑事特別法、行政罰関連法案が61.1%(511件)であること、刑事司法分野の議員提出法案の可決率は4%(36件)で、議員提出法案全体の可決率(7%)や提出法案全体の可決率(16%)に比べて低いことを指摘している。内容面では、罰則規定関連法案のうち88%(458件)が、法定刑の上乗せ、罰則規定の新設等、処罰を強化するもので、これは、刑事法分野における厳罰主義化の傾向と関連があるとしている。

 第5章では、刑事特別法のうち、第19代国会における刑事法関連議員提出法案の成果と限界を最もよく示していると思われる「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法の一部改正案」及び「児童及び青少年の性保護に関する法律の改正案」[2]を分析している。

 前者については、再犯の増加を根拠として、性暴力行為に関する規定を新設し、犯罪化するものが多く、処罰強化の内容は、拘禁期間の延長のほか、保護観察処分の対象者拡大、処分要件の強化による厳罰化であるとしている。

 後者については、処罰範囲の拡大と処罰の強化が中心で、法定刑の期間延長や裁判官の量刑に対する裁量を縮小する傾向が見られるとしている、また、単なる罰則の強化ではなく、児童を対象とする性暴力犯罪者の保護観察の強化、被害者保護機関及び施設の拡充を図るため、法案の立案に際しては、専門的な知見が必要であると指摘している。

 第7章では、効果的で専門的な議員立法のため、下記のような改善案を示している。

・刑事立法の規範的な原則について、具体策を確立する。そのためには、憲法裁判所の決定を単に反映するのではなく、国会も主体的に取り組み議員立法を行う必要がある。

・また、法益保護原則や刑罰の謙抑性といった刑法固有の論理と、厳罰主義傾向や過剰刑罰の憂慮、行政罰の拡大との関係は、国会議員の積極的な立法活動により、国民の意思が反映されるように調整することが望ましい。

・議員立法の活性化のため、立法支援と研究基盤を制度的に確立すること、所管常任委員会

に小委員会を設置すること、量より質を評価するための刑事立法評価の制度化が必要である。

 

 なお、本書の全文は、韓国刑事政策研究院ウェブサイトにおいてPDFファイルで閲覧できる[3]

(アジア情報課 田中 福太郎)



[1] 「설립목적(設立目的)」韓国刑事政策研究院ウェブサイト

https://www.kic.re.kr/info/purpose/purpose.jsp

[2] 2012年9月、当時韓国内で性犯罪が相次いでいたことから、国会に「児童・女性対象性暴力対策特別委員会」が設置され、同年12月までに性暴力防止や被害救済等の関連法案58件が審査・処理された。同年11月22日に、「刑法」、「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」、「児童及び青少年の性保護に関する法律」等6つの改正法案が国会本会議で可決された。

藤原夏人「【韓国】性犯罪への対応を大幅に強化―親告罪の廃止等―」『外国の立法 月刊版』255-1号, 2013.4, pp.37-39.

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8196102_po_02550109.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

[3] 韓国刑事政策研究院ウェブサイトhttps://www.kic.re.kr/pubdata/public/Read.jsp?paramNttID=9106&paramPage=1

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