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漢字の調べ方 (レファレンス事例・ツール紹介(12)):アジア情報室通報 16巻4号

丹治 美玲(国立国会図書館関西館アジア情報課)

漢字の総数は5万字ともそれ以上とも言われます[1]が、日常的に使われているのは、その一部でしかありません。当課では、資料や書画などで知らない漢字を見かけた利用者の方から、読み、意味等についてお問合せを受けることもあります。本稿では、2つの質問を例として、パソコン上・ウェブ上で利用できるツールを中心に、漢字の調べ方をご紹介します。

*【 】内は当館請求記号、ウェブサイトの最終アクセス日は2018年11月27日です。

1. 部首や総画数が不確かな漢字

質問①「右図の漢字の読みと意味を調べたい。総画数は20画だと思うが、『大漢和辞典』の総画索引を引いても見つからない。」


漢字を調べる際は漢和辞典の音訓・総画・部首索引を引くのが一般的な方法ですが、特に総画数が不確かな漢字は簡単には見つからないことがあります。『大漢和辞典』【KF4-E18の総画索引の20画の項を見ても、確かにそれらしい漢字は見当たりません。

 『大漢和辞典』や汉语』【KK12-C37などの代表的な大型の字典には、漢字の四隅の字形を4桁の数字で表した「四角号碼」という検字法[2]による索引がありますが、慣れていないとこの索引で検索するのは難しいかもしれません。ここでは、それ以外のツールを使って調べる方法をご紹介します。

1.1. 手書きツールを使う

卑近な方法ですが、IMEパッドのような手書き文字認識ツールを使って、漢字を書いてみます。今回探している漢字は、残念ながらIMEパッドではヒットしないようです(図1)が、ヒットした場合は、その漢字を検索エンジンで検索することで手がかりが得られます。IMEパッドの場合、候補の漢字にカーソルを合わせると読みが表示されますので、それを参考にすることもできます。

図1 IMEパッドでの手書き結果

なお、こうした手書き認識機能のなかには、筆画の方向や書き順などを候補抽出のヒントにしているものもあります。別々の筆画をつなげて書くなど誤った書き方をした場合は、探している漢字が候補から外れる可能性があることにも留意する必要があります。

1.2. 漢字を構成する部品から調べる

指定した部品を全て含む漢字の一覧を表示してくれる以下のデータベースを使います。

今回は、「熊」という部品で検索してみます(図2)。CHISEでは、複数の部品を指定することも可能です(例えば、「糸白水」で検索すると「線」などがヒットします)。

図2 CHISEの検索結果

探している漢字と思われる字が5番目にヒットしました。当該漢字の上部は「曹」の上部のように2本の縦の筆画が横の筆画を貫いているのではなく、草冠と網頭に分かれています。

文字の画像部分をクリックすると、画面が遷移し、部首や総画数等の情報が表示されます。調査対象の漢字の部首は草冠であり、正しい総画数は23画であることがわかります(図3)。また、「Morohashi Daikanwa」という項目の数字「32595」は、『大漢和辞典』内で漢字に振られている通し番号です。

図3  CHISEの文字詳細画面

これらの情報を基に『大漢和辞典』を改めて引くと、当該漢字は第9巻に収録されており、読みは「ヒ」、字義は「かねかけの飾。また、草の名。」であることがわかります。

2. 漢字の古代文字

質問②「書の参考にするため、「鑵」と「金編に「歸」」という字がそれぞれ金文[4]でどのように書かれているか知りたい。」

2.1. 日本語の字典で調べる

金文の字体が収録されている日本語の字典には、例えば次の資料があります。「鑵」は『書作のための金文字典』および『金文字典 : 拓影展大』に収録されていましたが、「金編に「歸」」は見つかりませんでした。

  • 『甲骨金文辞典』(雄山閣出版, 1995.7)【KK24-E41
  • 『書作のための金文字典』(木耳社, 2003.5)【KC612-H1
  • 『金文字典 : 拓影展大』(木耳社, 1989.4)【KC612-E16

中国で刊行された工具書(参考図書)には、これらと収録範囲が異なるものもあります。近年では、複数の工具書の統合検索に近い機能を備えたデータベースもウェブ上で公開されています。次にデータベースで検索してみます。

2.2. ウェブ上のデータベースで調べる

台湾の中央研究院が提供する、甲骨文・金文・小篆など古代中国で用いられた字体を検索できる漢字のデータベースです。

調べたい漢字が入力できる場合は、図4の「字形」の項目に、探したい漢字を入力し検索(「確定送出」をクリック)します。検索結果は右側に表示されます。外字の場合は、部首、総画数(「筆畫」)、CHISEと同様に部品(「部件」)などを指定して検索し、検索結果の中から調べたい漢字を探します。「鑵」は見つかりますが、ここでも「金編に「歸」」はヒットしませんでした。ヒットした場合は、文字画像の下部の数字をクリックすると、図5の画面に遷移します。

図4 漢字古今字資料庫の検索画面・検索結果

 

図5 漢字の詳細情報画面

「相關連結」の1列目に「金文」と表示されるものは、金文の字形が登録されています。「金文」をクリックすると表示が切り替わり、金文の画像が表示されます(図6)。なお、図5および図6の画面下部の「相關索引」[5]には、この漢字を収録している工具書と収録ページ等が表示されますので、改めて紙の工具書でその漢字に関する情報を確認することもできます。今回は金文の事例でしたが、このデータベースには、甲骨文、戦国時代の文字、小篆なども収録されており、同様の方法で検索できます。

図6 金文の字形の画面

 

2.3. 中国語の工具書で調べる

 改めて、中国語の工具書で「金編に「歸」」を調べると、以下の資料に金文の字形が収録されていることが確認できます。

  • 『新金文編』(作家出版社, 2011.10)【KK24-C221
    殷代から戦国時代末期までの金文中に記された古漢字3,063字について、2010年までに刊行された拓本から採録した字形とその出典を収録しています。

含まれる部品から漢字を探すのは電子ならではの方法と言えますが、現在でも、すべての漢字がパソコン上で表示できるわけではなく、また、漢字を使用している国・地域間で完全に標準化されているわけではありません[6]。ウェブ上のツール等を使った調査と並行して、または組み合わせて、紙媒体の字典等を使用した調査を行うことも重要であるのは、言うまでもありません。

まとめ

 ここまでの調査のポイントは次のとおりです。

  • まずは字典を引いてみる。
  • 見つからない場合はウェブ上のツール等も活用する。
  • 紙資料とウェブ上のツールのそれぞれの特性等を考慮し、必要に応じて双方を併用する。

アジア情報課が作成・公開しているコンテンツ「AsiaLinks 言語・辞書 : 中国・香港・台湾」[7]では、中国語に関する一般的な辞典やツールも紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

(たんじ みれい)



[1] 漢字文化資料館 > 漢字Q&A
http://kanjibunka.com/kanji-faq/old-faq/q0003/

[2] 四角号碼の詳細は以下のページを参照。
ジャパンナレッジ > 収録コンテンツ > 字通 > 凡例 > 四角号碼について
https://japanknowledge.asia-u.ac.jp/contents/jitsu/hanrei06.html

[3] 京都大学人文科学研究所の守岡知彦助教を中心とするプロジェクトチームが提供している。使い方や検索結果の見方などについては、以下の記事も参照。
「解説:CHISEの使い方」『漢字文献情報処理研究』17号(2018.1)【Z74-D402】pp.96-98

[4] 金文とは、主に殷、両周時代に制作された青銅器に彫られた文字を指す。

[5] 「相關索引」で挙げられている工具書に収録された漢字すべてが「漢字古今字資料庫」で検索できるわけではない(2018.11現在)ことに留意する必要がある。

[6] 漢字使用圏の国・地域の標準化の状況については、次の資料で詳しく解説されている。
『日本・中国・台湾・香港・韓国の常用漢字と漢字コード』(京都大学未踏科学研究ユニット, 2017.3)【UL47-L21】
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications/UAKIS2017.pdf

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