2004年3月初旬、韓国の出版および図書館事情を調査するためにソウルに渡った。折りしも韓国は100 年ぶりの大雪となり、連日雪にまみれながらの行軍となった。以下に、大韓出版文化協会とその事業に関連して韓国の出版概況、そして韓国雑誌情報館について紹介する。
< 大韓出版文化協会 >
大韓出版文化協会は、日本の『出版年鑑+日本書籍総目録』(日本書籍出版協会,出版年鑑編集部編)に当たる『韓国出版年鑑』を刊行しており、韓国の出版・出 版界に関するさまざまな統計の提供元である。協会を訪問したのは大雪となるほんの数日前、雪が降り始める直前の寒い日であった。
李 朝の王宮として有名な景福宮の東側、大きな路を挟んだ向かい側に出版文化会館の建物がある。小ぢんまりとした造りのビルで、入り口を入ってすぐ横に納本受 付窓口があり、大韓出版文化協会の事務室はその上にあった。大韓出版文化協会は1947 年に「出版の自由の確保と出版文化の建設および向上発展」のための活動を行なう機関として創設された。1952 年に社団法人として認可され、1957 年には国際出版協会に加入。その後、韓国出版研究所(1986年)、著作権相談室(1988 年)、編集者養成のための出版大学(1989 年)など関連機関を次々と立ち上げ、出版事業を支援している。
図書館員として最も関心を持ったのが「納本受付業務代行」である。韓国では文化観光部・国立中央図書館・国会図書館の3 機関が、それぞれ違う法律に依拠して納本を規定しており、分野によって対象機関と納本部数が異なる(表「対象機関・分野別納本部数」を参照)。
大 韓出版文化協会は、納本の窓口として出版社が送付してきた資料について『韓国出版年鑑』に目録を載せるため、また納本対象機関に合わせた種類・部数を選別 するために、目録・分類作業を行なう。必要部数よりも多く納本された場合には、適宜出版社へ返却することもあるそうだ。これらの納本資料を基にして、毎 年、出版統計を集計し(政府刊行物や出版社から直接各機関に納本される資料は含まない)、ホームページ上でも広く公開している。
な お、協会の主要事業の一つに国際交流推進が挙げられており、私が訪問した3 月には「2004 東京国際ブックフェア」の参加出版社募集が行なわれていた。『出版文化』(大韓出版文化協会発行)2004年6 月号を見ると、韓国館に39 の出版社から1,200 点余りが出品され、特に韓国の児童書が観客の関心を引いたようだ。また現在は、「2004 北京国際図書展」の韓国館参加募集の公示が掲げられている。
● 出版概況
統計およびグラフから、韓国出版界の動向を見てみよう。図1 は1980 年~2003 年までの出版統計である。まず目に付くのが1991 年の急激な減少であろう。これは1991 年に納本制度が変更されたことに起因している。変更点の一つに、それまでは内容や体裁が同じでも追加印刷されたものは納本対象であったが、「重版を除外し た初版および改訂版(全訂版を含む)」に縮小したことが挙げられる。つまり、内容が同じならば納本する必要はないということである。これにより初版以外の 発行点数、発行部数はそれぞれ前年比約20,000 点、102,570,000 冊と激減した。その当時の出版年鑑を見ると、国内の出版量の全貌を把握できなくなったという意見がある一方、重版までも納本していた出版社側の負担と煩雑 さが軽減されたこと、またこれを機に「版」と「刷」の概念が厳密に区別されるようになったことが利点として挙げられている。
< 対象機関・分野別納本部数 >
| 部数 | 6部 | 4部 | 2部 | |
| 対象機関 | 文化観光部 国立中央図書館 国会図書館 |
文化観光部 国立中央図書館 |
国立中央図書館 国会図書館 |
国立中央図書館 |
| 分野 | 小説 | マンガ、 写真集、 画報集 |
総類、 哲学、 社会科学、 学・芸術、 文学一般(戯曲、随筆など)、 歴史 |
詩、 児童、 宗教、 学習参考書、 技術科学、 純粋科学、 語学、 問題集、 青少年 |
1999 年は発行部数だけが前年に比べて半減している。分野別に見ると、社会科学分野が91.6%も減少していることから、当時の出版年鑑では、前年まで含まれて いた教科書の発行量が1999 年の集計から除外されたためと分析している。また、その後の統計表注記には教科書の納本量が減少したためと記している。教科書は専門の出版社などから直接 納本 することが多いため、出版統計に含まれない場合があるそうだ。同じく1999 年には文化観光部への納本対象が縮小されたという事実も関係するかもしれない。従前の「全ての刊行物」から、「マンガ・写真集・画報集・小説」へと対象が 縮小された。文化観光部では猥褻物などを区別し、制限する(ビニール袋に入れるなど)ために納本を受けているという。たしかにビニール袋入りの本を書店で 見かけることがあった。
●翻訳図書
韓国では外国書籍の翻訳出版が非常に盛んである。新刊図書発行点数に占める翻訳書の割合は、2001年が28.2%、2002年が28.8%、2003年が29.1%と、3年続けて約3 割を占めている。図2 を見ると1995年以降翻訳書の発行点数は上がりつづけ、2003年で1.4%減少したものの、全体に占める割合は増加している。国別では日本とアメリカの翻訳が多く、両国をあわせると全体の約75%を占める。マンガを 含めると日本が一番多く、マンガを除くとアメリカがトップだそうだ。日本書の翻訳は、マンガ以外に社会科学、技術科学、文学、児童書が多いが(図3参照)、2002年以降は全体的にやや減少傾向にある。
訪問した3月頃、韓国では『아침형인간(朝型人間)』(税所弘著、한스미디어) がとても好評で、65 万を突破したと聞いたが、大韓出版文化協会の機関紙『出版文化』8月号によれば、「2004年上半期に最もよく売れた本」として挙げられ、昨年10月発行以降今年の上半期までで80万部を突破した。現在韓国では失業増加や不況の余波を受けてか、自己啓発を始めとした経済・経営分野の本に人気が集まっているという。その中で『朝型人 間』は単なる健康法ではなく、経済・経営分野における成功法として韓国人の注目を集めているようだ。
< 韓国雑誌情報館 >
汝矣島は漢江を埋め立てて作った人工島であり、国会議事堂や証券取引所、新聞社、放送局などが集まった政治・経済の中心地といえる。その南東の一角に「韓国雑誌情報館」がある。
「잡지회관(雑 誌会館)」と大きく銘打たれた7階建てのビルの地下1 階へ降りると雑誌情報館の入り口がある。まず、ドアの手前にあるロッカーに私物を入れてから入館する。といっても、特別な入館手続きなどは無く、誰でも自 由に利用できる。中に入ると、右側が「雑誌博物館」、左側は雑誌が開架された書架がいくつも並んだ「雑誌展示館」になっている。残念ながら、訪問したのが 平日の朝10 時頃で利用者は一人も見当たらなかったが、普段は記者たちの利用が多いそうだ。
2002 年3 月21 日に開館した韓国雑誌情報館は、それまで雑誌協会の附設として運営されてきた「韓国雑誌博物館」と「韓国雑誌総合展示館」が統合され、生まれ変わった姿である。月曜日から土曜日の10:00~18:00 まで開館しており、無料で誰でも利用できる。広く門戸を開くことで雑誌の宣伝も兼ねているという。
●雑誌博物館
雑誌博物館には『親睦会会報』創刊号(1896.2)や『開闢』(1920.6)をはじめ、2,775 タイトル、5,065冊に及ぶ歴史的に貴重な雑誌が保存、展示されている。展示室は左右に第1 館、第2 館の2 室に分かれ、「第1 期胎動期(1896~1909)」「第2 期武断統治時期(1910~1919)」「第3 期文化統治標榜時代(1920~1936)」と時代別に代表的な雑誌が並べられている。直接手にとって見ることはできないが、表紙・装丁などから視覚的に 雑誌の歴史を、同時に各時代の息吹きを感じることができる。ほとんどが原本であるが、ときどき影印も含まれているようだ。
(雑誌博物館)

●雑誌展示館
●Online 韓国雑誌情報館
韓国雑誌協会はインターネット上で「Online 韓国雑誌情報館」というサイトを公開している。画像情報が多く、非常に鮮やかに韓国雑誌の歴史を映し出している。また、雑誌検索機能も有する。


●Online 韓国雑誌情報館
韓国雑誌協会はインターネット上で「Online 韓国雑誌情報館」というサイトを公開している。画像情報が多く、非常に鮮やかに韓国雑誌の歴史を映し出している。また、雑誌検索機能も有する。











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