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モンゴル国立中央図書館について: アジア情報室通報第2巻第3号

アジア情報室通報 第2巻第3号(2004年9月)
林 明日香(国立国会図書館アジア情報課)

 

はじめに

今年の1 月から7 月にかけて、当館の在外研修制度を利用してモンゴル国立大学に語学留学する機会を得た。マイナス40 度の厳寒の冬からナーダム(相撲・競馬・弓道を競う国民の祭典)が行われる真夏の期間であった。この間、モンゴル国立中央図書館(Улсын Төв Номын Сан. 以下УТНС)を数回見学し、館長のЖ.Сэржээ 氏、および収集整理担当のЭнхтунгалаг 女史とお会いすることができた。以下、簡単ではあるが同館について紹介してみたい。

沿革

УТНС は、人民革命が起こった1921 年に設置された典籍委員会(現在の科学アカデミー)に付設された図書館を前身としている。その後1924 年にこの図書館を国立の公共図書館とすることが決定され、1990 年、名称が国立中央図書館となった。現在、УТНС は 首都ウランバートル市の中心であるスフバートル広場の南側にあり、政府宮殿(国会議事堂)や政府機関の庁舎にも近く便利な立地である。1951年に完成し た図書館の建物は地上3 階地下1 階の図書館専用の庁舎である。建物の両端と地階は主に書庫である。また本館以外にも、2003 年5 月に開館した子供図書館*1などの閲覧室を持っている。

УТНС の総職員数は92 人、うち司書業務に携わっているのは53 人である。以前は6 つの部局があったが、昨年組織機構の改変によって、3つの部(フォンド部、情報・社会関係部、収集・教育・交換部)*2と1 つの支部(子供図書館)になり、職員数も減少したようである。

УТНС は研究者を利用の対象にしているが、大学の授業期間中は大学生の利用が非常に多く、閲覧室が混雑している。ウランバートル市にはУТНС のほかに、モンゴル国立大学図書館をはじめとする大学図書館、公共図書館としてナツァグドルジ記念ウランバートル市中央図書館などがある。

(モンゴル国立中央図書館)

モンゴル国立中央図書館

所蔵資料

УТНС の蔵書数は、ホームページ*3 によれば1998年で350 万冊である。また1991 年発行の同図書館のパンフレット*4に は300 万冊の蔵書のうち200 万冊がマニュスクリプト類であると記載されている。このことからかなり細かく仏典などのマニュスクリプトの断片を数に入れていると考えられる。今回直接お 話をうかがったときには現在の蔵書数は350 万冊、そのうちチベット語の資料が120 万冊ということであった。

УТНС の マニュスクリプト資料の多くは、典籍委員会が1920 年代に収集した資料に由来し、世界的にみても大変貴重なコレクションである。13世紀のパスパ文字文献、17 世紀のトド文字文献、17 世紀後半のソヨンボ文字文献などモンゴル文字以外の文字で書かれたモンゴル語文献、『アルタン・トプチ』『元朝秘史』等の歴史書、14世紀のチベット大蔵 経のモンゴル語訳などの仏典が収められている。またチベット語資料、満州語資料が数多く収蔵されていることも特徴である。

資料の収集

УТНС の報告*5 によると、モンゴル人民共和国時代の1935 年、政府決定によりすべての出版物を3部ずつ納本することが決定されたとあるが、館長の話では、現在納本制度はないということであった。

図書の収集は購入、寄贈、国際交換の三つの手段によって行われている。購入に関しては今年の予算が36,000,000 トゥグルグ(約360 万円)であり、年間に7,000~8,000 冊の図書を購入している。УТНС で は各閲覧室に配置したり国際交換に提供したりするため、1タイトルにつき5~15 冊購入しており、購入タイトル数は年間約1,500 程度ということであった。またモンゴルにある各国大使館や国際機関などから定期的に年間3,000~4,000 冊の寄贈を受けている。担当者によると、購入と寄贈による資料収集によって、モンゴル国内で出版された図書の大部分は収集できているということであった。 また国際交換は、当館を含め世界17 ヶ国の22 の図書館と資料を交換している*3。1968 年からは国連の寄託図書館にも指定されている。逐次刊行物に関しては、1921年以降のすべての新聞、雑誌を所蔵しているという。逐次刊行物は1 タイトルにつき2 部以上収集され、1部は保存用書庫に保管される。現在新聞のタイトル数は121 タイトルである。

資料の整理

長い間、モンゴルの図書館・図書館学はソ連の影響を強く受けていたため、現在でも整理法はロシア(ソ連)式を踏襲している。2003年にУТНС からモンゴルの目録規則“Баримтын ном зүйн бичилт, бичилтэнд тавих нийтлэг шаардлага дүрмүүд” (統一目録規則)が出版され、モンゴル国内の図書館はこれを採用している。分類は基本的に、1983年以前に整理されたものはデューイ十進分類法、1984年以降のものはロシアの分類法“Библиотечно Библиографическая Классификация” (図書館書誌学分類法)をもとに、モンゴル関係の分類だけを展開した“Номын сан номзүйн ангилал” (図書館書誌学分類)を使用している。現在モンゴル国立中央図書館が所蔵しているモンゴル語資料のすべての書誌データは、マニュスクリプト資料も含めて電子化され、2001年までに整理された図書の目録“Монголын үндэсний ном зүйн бүртгэл мэдээллийн сан I”(モンゴル基本書誌登録情報)がCD-ROM で販売されている。なおこのCD-ROM はモンゴル語(キリル文字)であり、英語版のWindows 以外では文字化けしてしまうようである。館内ではカード目録のほか、カタログ室にあるコンピューターから、登録されているすべての図書の目録を検索することができるが、今のところインターネットなどでの外部への公開は計画されていない。全国書誌は刊行していないが、“Шинэ номын мэдээ”(新着図書通信)が毎月発行されている。これは毎号約24 ページ、モンゴルのほか外国で出版された図書も含む100 件程度の書誌が掲載されている。

資料の閲覧

УТНС は 閉架式で、閲覧は館内においてのみである。閲覧室は、定期刊行物(新聞・雑誌)閲覧室、一般閲覧室、研究閲覧室に分かれている。研究閲覧室を利用するには 研究者カードが必要である。研究者カードは、大学院生以上であれば申し込んで作成してもらうことができる。どの部屋においても基本的にカードまたはコン ピューターによってカタログを検索して申し込み、資料を出納してもらう。マニュスクリプトなどの貴重書以外の資料は、有料でコピーすることもできる。

閲覧室のほかに貴重書の展示室があり、主にチベット大蔵経『ガンジョール』(仏語部)『ダンジョール』(教理部)をはじめとする貴重な仏典や元朝秘史などが展示されている。

また館内には有料でインターネットが利用できる部屋もあるが、これは図書館ではなく外部の団体が運営しているインターネットカフェのようなものである。

書庫

(書庫。床に置かれたたらいには、書庫内の湿度を上げるために水がはられている)

終わりに

私がУТНС を訪問したときはちょうど夏休みで、閲覧者はそれほど多くなく、天井の高い開放的なつくりとあいまってのんびりした雰囲気であった。社会主義時代の建築ではあるが、事務室や書庫はやはり日本の図書館とよく似ていて懐かしく感じた。

当館は、1996年に資料保存の調査のため職員を派遣し、同年当館が開催した第7 回資料保存シンポジウムにはУТНС の担当者が参加、報告*6 を行った。また1994 年には国際交流基金を通して日本語資料の整理に関する研修生をУТНС から受け入れるなどの交流があった。しかしその後継続的な交流は行われていない。

最後に、丁寧に応対してくださった館長をはじめとするУТНС の皆さんに謝辞を述べたい。

 

*1 “Book Palace for Children (News from the National Library of Mongolia)” CDNLAO newsletter(49):2004.3
(http://www.ndl.go.jp/en/publication/cdnlao/049/494.html 外部サイトへのリンクlast access:2004.8.20)

*2 各部局名のモンゴル語表記は以下のとおり。
Фондын хэлтэс
Мэдээлэл, олон нийттэй ха рилцах хэлтэс
Номбүрдүүлэх, боловсруулах, солилдох хэлтэс
Хүүхдийн номын ордон

*3 http://www.mnlibrary.org/外部サイトへのリンク (last access: 2004.8.20)

*4 “State Central Library of the Mongolian People’s Republic” (State Central Library of the Mongolian People’s Republic, 1991)

*5 “80 Years of Excellence of the State Central Library of Mongolia(News from the National Library of Mongolia)” CDNLAO newsletter(44):2002.7
(http://www.ndl.go.jp/ en/publication/cdnlao/044/441.html外部サイトへのリンク last access:2004.8.20)

*6 カンジャブ・ガンスフ「モンゴルの経典とその保存」(『保存環境を整える: 厳しい気候、各種災害から資料をいかに守るか: 資料保存アジア・オセアニア地域国際シンポジウム』)国立国会図書館編、日本図書館協会1997. pp. 69-73)

参考文献

中村真咲「モンゴル国の図書館について」『Newsletter』[近現代東北アジア地域史研究会編],(15):2003.12

西宮能敬「70 周年を迎えたモンゴル国立中央図書館」『びぶろす』43(6):1992.6

ナイダン・ツァガーチ「モンゴルの書籍と図書館」『国立国会図書館月報』(420):[1996.3]

小沢重男「モンゴル国立図書館」(『世界の図書館』徳永康元編 丸善 1981.10 pp.283-289)

D.マイダル著『草原の国モンゴル』新潮社1988.7

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