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平成18年度アジア情報関係機関懇談会概要報告 : アジア情報室通報第5巻第2号

アジア情報室通報 第5巻第2号(2007年6月)
大西啓子

平成19年2月23日(金)に国立国会図書館関西館においてアジア情報関係機関懇談会を実施した。講演及び報告の概要を以下に紹介する。

1.講演及び海外司書からの報告

(1)「中央アジア研究と図書館」(講師: 堀 直 甲南大学文学部教授)

中央アジア(=シルクロード地帯)研究は、日本では根強いファンが存在するジャンルである。この地域は、前近代においてはユーラシア世界史の主役であったが、近代国民国家が成立せず、列強による征服と探検の対象となった。社会主義を経験した地域でもあり、階級史観に立つ研究もなされた。歴史学研究においては長く机上文献主義がとられ、現地体験を前提とはしてこなかった。前近代に関しては世界水準に照らしてみても一定の成果をあげており、中央アジア古代史・中世史研究は日本東洋学のひとつの頂点といえるが、近代についてはイスラーム学の伝統がない日本での研究は困難である。1980-90年代からは現地での研究・調査が展開されるようになったが、中国の改革・開放政策、ソ連の解体と社会主義離れ、9.11以降のイスラームと民族主義をめぐる国際情勢の変化など、現地の情勢に左右されることも多い。

近代中央アジア史料の所蔵は世界に分散しており、日本国内では国会図書館の深田久弥旧蔵書、東洋文庫、京都大学の旧羽田記念館、大阪外国語大学の石濱純太郎文庫、天理大学のマンジュ語コレクションなどが挙げられる。中国では中国第一歴史档案館、中国社会科学院や諸大学の文書館、トルコではイスタンブルやアンカラの文書館、旧ソ連各国の科学アカデミーや東洋学研究所、モンゴルにも所蔵されている。またイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスがそれぞれ充実したコレクションを所蔵するほか、フィンランドにはフィノ=ウグル協会のマンネルヘイム資料、スウェーデンにはデジタル化が進むルンツ大学のヤリング=コレクションや中央公文書館の内陸伝道協会資料などがある。

世界の図書館を訪れた経験から、中国は公開性よりも所有・保管を重視しているとの印象を受けるが、近年は新疆ウイグル自治区档案館の対外公開や有料サービスによる効率化など改善の傾向にはある。スウェーデンのウプサラ大学図書館では、中国語・ウイグル語併記の文書がアラビア語写本の補強材として用いられているのを見つけ、続きの文書を探してもらった思い出がある。

今後の中央アジア研究と図書館についていえば、まず現地の流動性への対応が鍵である。研究者個人では現地情勢に左右されることも多く、図書館には逐次刊行物の継続的な購入と保持を望む。電子化と検索エンジンの将来にも課題はある。キーワード検索は漏れも多いうえに、文字に残る情報は人間の営みのごく一部に過ぎない。記号化だけでは表現しきれない情報をどう扱うかが課題であろう。また、著作権・所有権についても写本のコピーのルール策定など利用の簡便化が望まれる。研究者の個人コレクションの行方も注目されるところであり、寄贈ルールの確立を望んでいる。国・地域・機関を超えた収蔵ルートやルールはできないだろうか。

最後に、情報は利用されてこそ価値を生ずる。作成者・収集者・保管者と利用者との対話によって、より良い関係が築かれることを期待する。

(2)「韓国国会図書館について」(ユンヂニ氏 韓国国会図書館・国際交流基金研修生)

韓国国会図書館は1952年に設置された立法支援のための国会資料室に始まり、国家図書館、立法支援機関としてサービスを行っている。なかでも1998年に立ち上げた電子図書館事業を最優先に進めている。現在は学位論文の分類を担当しており、今回の研修の間に日本語を習得して日本の図書館システムやサービスについて学びたい。

(3)「ロシア国立図書館について」(ロシリナ・アレクサンドラ・ブラジミロブナ氏 ロシア国立図書館東洋文献センター・国際交流基金研修生)

ロシア国立図書館は1862年にモスクワに創立。247言語、4,300万冊以上を所蔵し、そのうち日本語図書は古文書を含め約68,000冊。東洋文献センターでは日本語、中国語、韓国語、アラビア語、タジク語、ウズベク語などの東洋言語図書を扱っており、現在は日本語図書・雑誌の目録カード作成を担当している。電子目録作成がセンターの課題であり、日本の電子目録の特徴や図書館システムを学びたい。

2.参加機関からの報告

参加機関は以下の12機関である。(五十音順)

アジア図書館、大阪外国語大学附属図書館、大阪府立中央図書館、九州大学附属図書館、京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター、京都大学地域研究統合情報センター、慶應義塾大学メディアセンター本部、国際交流基金関西国際センター、東京外国語大学附属図書館、東京大学東洋文化研究所、東京都立中央図書館、日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館

アジア経済研究所図書館からは、デジタルライブラリーの構築・公開と、図書館職員の専門性深化を目指した「エリア&サブジェクトライブラリアン制度」の導入について紹介があった。また、今回初めて参加いただいた京都大学地域研究統合情報センターからは、「京セラ文庫『英国議会資料』」の開設が報告された。そのほか、各機関から遡及入力や目録作成などの事業・活動について報告が行われた。

3.当館からの報告

当館主題情報部からは、電子情報提供サービスの拡充と第72回IFLAソウル大会参加について、支部東洋文庫からは、オスマントルコ語・南アジア諸語(アラビア文字)図書の書誌データの公開についての報告を行った。関西館アジア情報課からは、ホームページのリニューアルや「AsiaLinks-アジア関係リンク集-」「アジア情報機関ダイレクトリー」の拡充など、関西館中期基本計画にもとづくアジア情報発信事業の強化について報告した。

おわりに

今回初の試みとして、アジア研究者による講演、海外司書からの報告を行ったが、連携・協力の視野が広がるものとして好評であった。質疑応答では活発な意見交換が行われ、今後の図書館員のあり方や育成方法への高い関心がうかがわれた。参加いただいた方々にあらためてお礼を申し上げたい。

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