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近現代のアラブの人名を調べる(レファレンスツール紹介8) : アジア情報室通報第5巻第3号

アジア情報室通報 第5巻第3号(2007年9月)
邊見由起子

今回は、近現代のアラブの人名を調べるツールを、質問例にそって、言語別にご紹介します。
(丸数字に続く名前は当該事典での見出し語。 <   > は当館請求記号、 < ( ) > は関西館請求記号、*のついたものは東京本館所蔵。インターネットサイトの最終接続日は2007年8月10日。)

(質問例)日本語で読めるアラブの近現代文学について調べていたら、次の作家名に行きついた。彼らの経歴や著作について知りたい。
①アブドル・ラフマーン・アッ・シャルカーウィ
②カナファーニー
③カリール・ジブラン
④タハール・ベン・ジェルーン
⑤ナワル・エル・サーダウィ

1. アラブ人の名前を理解するのに役立つ資料

アラブ人の名前は父系の名を連ねるのが基本ですが、他の要素がいろいろ付加され複雑です。時代や国によっても違いがあり、アルファベット表記やカタカナ表記も一定でないため、事典を調べる際には注意が必要です。
東京外国語大学アラビア語専攻公式サイトアラビア語別館の「アラブ人の名前の作り方」(http://www.tufs. ac.jp/common/fs/asw/ara/2/words/name/name_info.htm外部サイトへのリンク)は、近現代人や歴史上の人物の名前のつくりを簡潔に説明し、Islamic names. Edinburgh Univ. Press, c1989.  < G27-A3 > は、第一章でクンヤやナサブ、ニスバといった名前の要素を解説しています。『第三世界の姓名』(明石書店, 1994) < G27-E3 > では、時代や地域による違いがよくわかります。ジェトロ「国・地域別情報(サウジアラビア)‐その他のサウジアラビア関連情報」(http://www.jetro.go.jp/biz/world/middle_east/ sa/others/外部サイトへのリンク)にある「アラブ人名の由来と正しい呼び方」 は、アラビア半島の人名(特に王族や首長)について詳しく、称号についての解説もあります。
前掲のアラビア語別館の「アラブ人名の表記と読みに関する注意点」(http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ asw/ara/2/words/name/name_note.htm外部サイトへのリンク)では、カタカナ化の問題、翻字のバリエーションがよくまとめられています。『岩波イスラーム辞典』(岩波書店, 2002) < GE8-G15 >  の転写法は、カタカナ表記の一例ですが、詳しい解説があり参考になります。

2. 日本語の事典

近現代のアラブ人は名前の最後の要素を姓とみなすことが多く、アッやエルはアラビア語の定冠詞で、事典の排列では無視されることが多いので、①シャルカーウィ③ジブラン ⑤サーダウィでひいてみます。④のベンは、マグリブ地方でイブン~(~の息子)のことなので、ベン・ジェルーンのようにセットで扱います。
近現代の欧米以外の人物をよく収録する『コンサイス外国人名事典』(第3版、三省堂, 1999) < GK2-G9 > には①シャルカーウィー ②カナファーニー ③ジブラーンが、『20世紀西洋人名事典』(日外アソシエーツ, 1995) < GK2-E12 > にも①シャールカーウィー ②ガッサーン,カナファーニー③ジブラーン,ハリール・ジブラーンが載っています。カリールのخ (kh)は、カタカナ表記ではハ行で表す場合もあり、長音の位置には揺れがあります。『新版世界人名辞典. 東洋編』(増補版、東京堂出版, 1994) < GK2-E3 > の増補部分には、西洋編と同様アジア・アフリカ地域の人名が多く収録されており、①シャルカーウィー ②カナファーニーが載っています。
①はエジプト、②はパレスチナ、③はレバノン出身でアメリカに帰化したことがわかったので、国別に章立てされた『中東人名事典』(中東調査会, 1979) < GE12-31* > をひくと、①シャルカーウィー ②カナファーニーが確認できます。『中近東要人写真名鑑』(外務省中近東アフリカ局中近東課, 1970) < A6-18* > には、アラブ連合→シァルカーウィーの項目があり、①の顔写真も掲載されています。
作家であるので『集英社世界文学大事典』(集英社, 1996) < KE112-G2 > を調べると、①(アッ・)シャルカーウィー アブド・アッ・ラフマーン ②カナファーニー、ガッサーン ③ハリール・ジブラーン ジブラーン ④ベン・ジェルーン,タール[タハール]について詳しい経歴や作品名などが載っています。とくに②は写真も掲載されています。④はモロッコのフランス語作家、⑤はサーダウィの長音の部分が ع(ʿ)である可能性を考えてサアダーウィーで索引をひき、エジプトの女性作家であることがわかりました。『岩波イスラーム辞典』は収録項目数が多く、人名もよく収録しています。④ベン・ジェッルーン ⑤サアダーウィーの項目があり、③は他の事典で併記されているアルファベット表記Khalil Gibranを索引でひくことでジュブラーン・ハリール・ジュブラーンの項目へたどり着けます。『新潮世界文学辞典』(増補改訂版、新潮社, 1990) < KE112-E2 > にもジュブラーン…で載っています。また、『日本大百科全書』(2版、小学館, 1994) < UR1-G71 > には、②ガッサーン・カナファーニー ③ジブラーン・ハリール・ジブラーンが収録され、②の作品の和訳の情報もあります。

3. 欧米語の事典

欧米語の事典も姓とみなす部分を見出しにするものが多く、定冠詞al-やel-は排列上無視されることがしばしばですが、慣習的にalを一体化して綴る場合もあります。また、ش(sh)がch、ج(j)がdjやdzで表されたり、母音の表記にもバリエーションがあったりします。
主に活躍中の人物を収録するWho's Who in the Arab World. Publitec Pub.  < Z62-A116 > の2006/2007年版では、①SHARQAWI(Abdulrahman, al) ⑤SAADAWI(Nawal, el)が確認できます。20世紀のアラブ人を包括的に収録するThe International who's who of the Arab world. International Who's Who of the Arab World Ltd., c1978  < GE12-30* > には、①SHARKAWI, Abdul Rahman al-が簡潔に紹介されています。Biographical dictionary of the Middle East. Facts on File, c1991  < GE12-A26* > は、主に政治や社会的リーダーを約500名収録するものですが、③JIBRAN(Jubran), JIBRAN KHALILの比較的詳しい記述が載っています。Biographical dictionary of modern Egypt. Lynne Rienner Pub., 2000  < GF12-A8 > には、エジプト人である①al-Sharqawi, 'Abd al-Rahman ⑤al-Sa'dawi, Nawal [al-Sayyid]について詳しい情報があり、参考文献も充実しています。
百科事典類では、Encyclopedia of the modern Middle East. Macmillan Reference USA, c1996  < GE8-A66 > に、①Sharqawi, Abd al-Rahman al- ②Kanafani, Ghassan ③Gibran, Khalil ⑤Saʿdawi, Nawal al-の項目がありましたが、その後版であるEncyclopedia of the modern Middle East & North Africa. 2nd ed. Macmillan Reference USA, c2004  < GE8-B46 > では、②③のみ収録されています。パレスチナの作家・ジャーナリストでありPFLP(パレスチナ解放人民戦線)のスポークスマンでもあった②Kanafani, Ghassanについては、Encyclopedia of the Palestinians. Rev. ed. Facts on File, c2005  < A2-B44 > に詳述されています。
文学事典では、Encyclopedia of Arabic literature. Routledge, 1998  < KM22-A30 > が、全員を収録しています。モロッコの著作家を約150名収録するDictionnaire des ecrivains marocains. Eddif, c2005  < KR82-B4 > は、④BEN JELLOUN TAHARについて11ページにわたって説明しています。また、エジプトやモロッコはアフリカなので、Encyclopedia of African literature. Routledge, 2003  < KM52-B1 > や、 Postcolonial African writers : a bio-bibliographical critical sourcebook. Fitzroy Dearborn, 1998  < (KM52-S6) > で、④Ben Jelloun, Tahar、Tahar Ben Jelloun ⑤el-Saadawi, Nawalの詳しい記述が得られます。
当館ではほかに、国別の人名事典として、Who's who in Saudi Arabia. Tihama, 1977  < GE12-23* > 、A biographical dictionary of the Sudan. 2nd ed. Cass, 1967  < GF12-1* > 、Mémoire algérienne : le dictionnaire biographique. Dahlab, [1996]  < GF12-A7* > 、Who's Who in Lebanon. Publitec Pub.  < Z62-A224 > を所蔵しています。また、テーマ別の人名事典として、70人の政治家について詳述したPolitical leaders of the contemporary Middle East and North Africa : a biographical dictionary. Greenwood Press, 1990  < A2-A62 > 、経済関係のダイレクトリーと人名事典からなるThe APS who's who in Middle East banking & trade. 2d ed.1984/85. APS Press & Enterprises Ltd., c1984  < D4-245* > などがあります。

4. アラビア語の事典

古今のアラブ知識人を肖像画つきで300名近く収録するMawsūʿat aʿlām al-fikr al-ʿArabī. 2vols. Maktabat Miṣr, [1999] < Y775-S105 > には、①عبد الرحمن الشرقاوي ③جبران خليل جبرانが載っています。排列は各巻ごとに生年順で、第2巻にはイスム(本人の名前)順の索引があります。Al-Mounged : English-Arabic. 2nd ed. Libraire Orientale, 1997  < Y775-T49 > やAl-Munjid fī al-lughah wa-al-aʿlām. 40th ed. Dār al-Mashriq, 2003  < Y775-M157 > はいずれも辞書ですが、人名の部があり世界の著名人を収録しています。前者には③Gibran, Gibran Khalil ④Ben Jelloun, Taher、後者には ②كنفاني (غسّان) ③جبران (حبران خليل)④بن جلّون (طاهر)が載っています。
Dhākirah lil-mustaqbal : mawsūʿat al-kātibah al-ʿArabīyah. 3 vols. Majlis al-Aʿlá lil-Thaqāfah, 2002  < Y775-D39 > は、国・地域別にアラブの女性著述家について解説し、いくつかの作品の抜粋を載せています。イスム順の人名録部分には略歴と著作一覧を収録し、⑤نوال السعداويの情報が得られます。Muʿjam al-muʾallifīn : tarājim muṣannifī al-kutub al-ʿarabīyah. 15 vols. al-Maktabah al-ʿArabīyah bi-Dimashq, 1957  < Y775-K18 > は著作家の人名事典です。排列はイスム+父の名順で、第14、15巻はシュフラ(よく知られた名前)の索引です。古典の人物を中心に20世紀前半頃の人物まで収録し、③の情報も掲載されています。

5. インターネット上の情報源

飯塚正人氏による「近現代アラブ・イスラーム研究」の「近現代中東人名辞典」(http://www.aa.tufs.ac.jp/~masato/biotable.htm外部サイトへのリンク)〔日〕には125名が収録され、①シャルカーウィー ②カナファーニーの簡潔な情報が載っています。アラブ総合情報サイトal-Babのal-bab Arab Gateway: prominent people(http://www.al-bab.com/arab/biog.htm外部サイトへのリンク)〔英〕は、人物情報へのリンク集です。②KANAFANI ③GIBRAN ⑤SAADAWIの情報があり、著作の翻訳リストなどもあります。アラブ人女性を国別や分野別などで検索できるWho’s Who Amongst Arab Womenhttp://www.whoswhoarabwomen.com/外部サイトへのリンク)〔英・アラビア〕には、⑤El Saadawiの情報や写真が掲載されています。エジプト高等文化評議会のサイト(http://www.scc.gov.eg/外部サイトへのリンク)〔アラビア〕では、 اعلام الثقافةにエジプトの文化人799名の生没年と生誕地、学歴、職歴、著作一覧、賞罰などを掲載しており、①の経歴や著作一覧が見られます。

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