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平成19年度アジア情報研修及び平成19年度アジア情報関係機関懇談会概要報告 : アジア情報室通報第6巻第1号

アジア情報室通報 第6巻第1号(2008年3月)
渡部淳

平成19年11月21日(水)、22日(木)、平成19年度アジア情報研修及び平成19年度アジア情報関係機関懇談会を実施した。今回は初の試みとして、アジア情報研修の終了後に、アジア情報関係機関懇談会を行い、研修生の懇談会聴講を認めた。

1.アジア情報研修の概要

第6回目となる今年度は、テーマを「中国の学術情報を入手する」として実施した。
受講者の内訳は、館種別では大学図書館12名、公共図書館2名、専門図書館他6名、地域別では関東4名、中部1名、近畿9名、中国2名、九州3名、沖縄1名の計20名であった。昨年度は関東・近畿圏からの参加のみであったが、今年度は全国から参加が見られた。

2.アジア情報研修の内容

研修各科目の概要を以下に紹介する。

■ 1日目

(1)「中国の知的財産権と中国文献データベース」
(講師:馬場錬成 独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター長)

現在、中国では日本企業の製品を偽造した「ニセモノ」が数多く出回っている。日本貿易振興機構北京センター内には「日系企業ニセモノ展示館」があり、多数の偽造品が展示されている。展示されている偽造品は、スクーター、アイロン、乾電池、電卓、電動工具、インクカートリッジ、靴、靴下など、機械製品から日用品に至るまで、多岐にわたっている。

偽造品が大量に出回るようになった理由として、偽造品の品質の大幅な向上が考えられる。偽造品は、正規の商品との区別がつかないほど巧妙にできており、品質も正規の商品とほとんど差がない。1990年代から始まったIT産業革命に伴い、中国は技術力を驚くほど進歩させ、世界最大規模の偽造品製造地となったのである。

偽造品の流通は、全世界的な通商問題であり、安全問題である。2004年5月には「第1回ニセモノ対策世界会議」が開催され、また同年6月のシーアイランド・サミットでは、知的財産の不正使用及び海賊行為と戦う必要性が国際的に確認された。日本も「ニセモノ輸出防止条約」を世界に提唱している。

一方、中国でも知的財産権に関する認識が変化しつつある。最近の最高人民法院の判例を見ると、商標権を無断使用していた販売会社に、8340万元(約1億2500万円)の支払いを命じるなど、知的財産権侵害の賠償金が高額化してきている。また著作権侵害の罰則も強化されてきている。

中国文献データベースは、中国国内で発行されている科学誌約770誌を選定し、その雑誌記事をデータベース化したもので、誰でも無料で利用できる。キーワードを入力すると、該当記事の標題、著者名、収録誌名、日本語の抄録などが表示される。別途有料の複写サービスを利用すれば、全文を閲覧することもできる。日本語での検索が可能なことが、大きな特徴である。現在の収録件数は約12万件だが、年間約10万件のデータを新たに収録している。

(2) 「中国経済の調査研究及び資料収集」
(講師:山本裕美 京都大学大学院経済学研究科教授・上海センター長)

アジア経済研究所や京都大学などで、中国経済の研究にあたってきた。個人の研究史的な視点から、中国経済の調査研究及び資料収集についてお話したい。

アジア経済研究所の研究体制は、基本的に共同研究会の単位で行われてきた。1年目に予備研究会、2年目に本研究会を行い、研究会終了後、研究成果をアジア経済出版会から出版した。

当時は、気軽に現地に行ける時代ではなかった。「人民公社研究会」に参加し、人民公社制度の研究を行ったときは、『人民日報』『経済研究』からの統計データの分析、中国からの帰国者へのヒアリングを元に調査を行った。

アジア経済研究所が発行している雑誌に、『アジア経済資料月報』がある。これは、新聞・雑誌に掲載された論文を、国別・テーマ別に分類して収録し、文献の解題をつけたもので、研究者にとって非常に有用なものである。現代中国の研究に関しては、小島麗逸編『中国経済統計・経済法解説』(1989年刊)がある。現代中国の経済用語を、新聞・雑誌の記事をもとに解説したもので、現在でも非常に有用である。

アジア経済研究所では、『人民日報』『光明日報』などの中国の全国紙を航空便で収集していた。航空便は費用は割高になるが、2~3日で最新の情報に接することができ、研究に大きなメリットがあった。また、研究所内に専門のスタッフがいて、購入した全国紙をマイクロフィルム化する作業も行っていた。

1997年に京都大学に所属を移してからは、中国情報の収集に、インターネットを活用することが多い。例えば、国務院の各部や国家統計局のホームページから、政策情報及び統計を利用している。新聞も「人民網」や「新華網」を利用すれば、かなりのものがインターネット上で読める。情報は昔と比べて、とても容易に得られるようになった。中国の世界に対する発信力の強さを感じている。

■ 2日目

(1)「中国の電子ジャーナル出版」
(講師:時実象一 愛知大学文学部教授)

現在、中国では、電子ジャーナルの構築が非常に発展してきている。その中でも、今日は、①清華同方知網(北京)技術有限公司、②万方数据、③維普資訊社が提供している電子ジャーナル・サービスについて、お話したい。

清華同方知網(北京)技術有限公司が提供しているのは、中国知識基礎設施工程(China National Knowledge Infrastructure: CNKI)である。CNKIは、1996年に電子化、1999年からオンライン・サービスを開始している。

CNKIの中で代表的なデータベースが、中国期刊全文数据庫(China Academic Journals: CAJ)である。これは、1994年以降に刊行された学術雑誌約8,900タイトル、2,500万件の論文を収録したものである。その他にも、学位論文・会議資料などの各種データベースがあり、博士論文6万件、修士論文29万件、会議資料51万件などが収録されている。

現在、CNKIは、Century Journal Projectを進めている。これは、約4,000タイトルの雑誌を第1号から遡って電子化するというプロジェクトで、すでに760万件の論文のうち半数の380万件の論文の電子化が完了している。ただし、所在が不明な雑誌が約1万冊もあるため、プロジェクト遂行には外国の図書館の協力が必要だという話も聞かれる。

次に、万方数据が提供しているのは、万方数据資源系統(Wanfang Data)である。万方数据は、1993年、中国科学技術信息研究所(Institute of Scientific and Technical Information of China: ISTIC)の子会社として設立、1998年に雑誌の電子化を開始した。

現在の雑誌の収録タイトル数は、約5,500タイトルである。この数字は、先ほどのCAJよりは少ないが、ISTIC及び北京大学で選定したコアジャーナルの98.5%をカバーしている。その他、1981年以降の学位論文80万件、1998年以降の学会資料33万件なども収録されている。万方数据は、Google Scholarとも提携しているので、Google Scholarから、タイトル・著者名・雑誌名などで検索することも可能である。

最後に、維普資訊社が提供しているのは、維普資訊網(VIP Information)である。VIP は、1989年以降の雑誌の電子化を進めており、約9,000タイトル、1,250万件の論文を収録している。VIPもGoogle Scholarからの検索が可能であり、契約すれば、1論文2元程度と非常に安価に論文を入手することができる。

(2) 「中国情報検索実習-中国の雑誌論文をさがす」
(講師:関西館アジア情報課 前田直俊、篠田麻美、清水扶美子、湯野基生)

実習の前半は、中国の雑誌論文の検索に有用な各種ツールを紹介した。実習の後半は、研修生が実際にインターネットなどを活用して、中国の雑誌論文を検索する演習問題を行った。

3.アジア情報研修の総括

研修終了後に行ったアンケートでは、「中国の電子ジャーナルについて大いに勉強になった」「どの講義も配布資料が充実していた」「今後の業務に大いに参考になる」と総じて高い評価を受けた。一方で、「実習の時間が短かった」「関西館見学の時間をプログラムに入れてもらいたい」など、当研修に対する要望も多数いただいた。ご意見をもとに、来年度以降の研修もより充実した内容にしていきたい。 また、第一日目終了後の懇親会にも多くの参加があり、当館職員と研修生同士の交流を深めることができたほか、ここでも中国情報の入手をはじめさまざまな問題について活発な意見交換が行われた。

なお、講義テキストの一部はアジア情報室ホームページ
(http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/contents/asia_workshop19.html)
に掲載している。

4.アジア情報関係機関懇談会

第7回目の開催となる今回は、「人材育成と研修」をテーマとして実施した。

参加機関は、以下の9機関である。(五十音順)

大阪府立中央図書館、九州大学附属図書館、京都大学人文科学研究所、京都大学地域研究統合情報センター、国際交流基金関西国際センター、東京外国語大学附属図書館、東京大学東洋文化研究所、東京都立中央図書館、日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館

当館からは、主題情報部主任司書、支部東洋文庫長、関西館次長、関西館アジア情報課長、アジア情報課員5名が出席した。また、アジア情報研修研修生10名が聴講した。

各機関から、新規採用研修・語学研修・派遣研修など職員研修の実施状況や実施体制、外部講習会への参加状況、人材育成の課題点などの報告が行われた。その後、今後の図書館員のあり方や育成方法について活発な意見交換が行われ、図書館業務に大いに資する内容となった。当館に対しては、アジア言語の文献を読める人材を集め、アジア関係資料の専門職として育成することを望む意見が寄せられた。

最後に、研修講師および懇談会参加各機関に、この場を借りて改めてお礼申し上げる。

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