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タイの出版、書店、図書館、日本関係機関―出張報告 : アジア情報室通報第6巻第2号

アジア情報室通報 第6巻第2号(2008年6月)
小笠原綾(国立国会図書館アジア情報課)

1. はじめに

2008年1月に、地域研究コンソーシアム・情報資源共有化研究会主催の海外調査1に同行し、タイのバンコク、シンガポール、インドネシアのジャカルタとジョグジャカルタで、出版社協会、図書館、書店等を訪問する機会を得た。また、バンコクでは、日本関係の資料を所蔵する図書館を訪問することができた。

シンガポールの出版および図書館事情については、すでにいくつか国内の図書館関係雑誌などで言及されているので、ここでは、タイの状況について報告し、次号でインドネシアについて報告する。

2. 出版事情

タイには現在、550以上の出版社があり、2006年1年間で新刊図書11,201タイトル、新聞53タイトル、雑誌430タイトル以上が出版されている。内容は、小説、ハリーポッターなど海外小説の翻訳、ビジネスやPC関連の実用書が目立つが、学術書も地道に出版されている。2仏教国であるタイでは、仏教の教えを家庭生活や職場の人間関係などの日常生活に引き付けて易しく説いた、宗教書がよく売れている。テレビなどメディアとの相乗効果で、アイドルのような存在の僧侶が出現し、その僧侶の著書がシリーズで出版されベストセラーになるなど、タイならではの面白い現象が見られた。

政府や王室を批判する考えや、共産主義的な思想は発表しにくく、本が出版されても政府が発売禁止にする場合もある。これまでに発売禁止になった出版物は104件で、一番最初の例は、นิราศหนองคาย (Nirāt Nǭng Khāi『ノーンカーイ紀行』)(1875年)である。著者のティム・スックヤーンはこの詩集の中で、当時タイの属国であったラオスに侵入してきたホー族と戦いこれを鎮圧した、タイ軍の指揮官シー・スリヤウォンを批判し、そのために逮捕された。

สมาคมผู้จัดพิมพ์และผู้จำหน่ายหนังสือแห่งประเทศไทย
The Publishers & Booksellers Association of Thailand(PUBAT)
タイ国出版社・書籍販売業者協会

1960年、タイにおける読書文化の定着を目標に設立され、2007年7月現在、531の出版社や書店が加盟している。

年に3回ブックフェアを開催しており、その最大のものがNational Book Fairである。2008年のNational Book Fairは3月25日から4月7日までの12日間行なわれ、延べ約150万人が来場した。このほか、読書推進に関する政策目標を策定するよう政府へ提案したり、文学賞を設けて優れた文学者、文学作品や挿絵を表彰したり、青少年読書コンクールを開催するなどの活動を行なっている。また、出版界におけるニュースや新刊書の紹介、インタビュー記事などを掲載する雑誌วารสารหนังสือ (Wārasān nangsư̄『図書雑誌』)を発行している。

3. 書店

書店の数は、2004年759店、2005年848店、2006年1,309店と急増しており、このうち約60%はバンコクに集中している。また、この数字には含まれていないが、コンビニエンスストアでも書籍を扱っており、小説や宗教書などを気軽に買うことができる。

2008年1月4日に国王の姉、ガラヤニ王妃が逝去されたため、滞在時には国全体が喪に服しており、書店には王妃や王室関係の書籍が平積みになっていた。


Thailand Book Tower (TBT)
タイランド・ブック・タワー

バンコクの南方、サートン通りのチョンノンシー駅近くにある。2006年に開業したばかりの9階建ての大型書店で、主要な駅やショッピングモールから送迎バスも出ている。1階にはベストセラーや新刊本、雑誌を置き、2階以上は文学、社会科学、児童書、マルチメディアといったように、分野ごとにフロアが分かれている。各フロアにはその分野に強い出版社のコーナーが設けられており、学術書や学術雑誌も置かれている。タイ語、英語両方の資料を扱っている。

Chulalongkorn University Book Center
チュラロンコン大学ブックセンター

バンコクの中心的なショッピングエリア、サイアムスクエアにあり、2階建ての広い書店である。政治、法律、経済、教育、言語学などの学術書や学術雑誌の他、CD付きの語学学習教材なども揃えている。チュラロンコン大学(後の4.で紹介する。)出版会のものに限定せず、絶版になった学術書の復刻を行うWhite Lotusなど、様々な出版社の学術書を揃えている。タイ語、英語両方の資料を扱っている。


Chulalongkorn University Book Center 入り口の垂れ幕

Chulalongkorn University Book Center 入り口の垂れ幕<

この他、タイ最大の書店チェーンSE-ED Book Centerは全国に多数の店舗を持ち、主にタイ語の資料を軽い読みものから学術書まで幅広く揃えている。Asia Booksは外国人が集まるエリアに店舗を持ち、英語の読み物や学術書を取り扱っている。日本の紀伊國屋書店は大型ショッピングセンターに3店舗を持ち、憲法やビジネス関係法令の日本語訳など、日本語の資料も置いている。

4. 図書館

หอสมุดแห่งชาติ
National Library of Thailand
タイ国立図書館

1905年、チュラロンコン国王が、王宮の庭園内にあったワチラヤーン図書館に、他の寺院にあった2つの図書館を統合し、「国民のためのワチラヤーン図書館」を設置したのが始まりである。その後1966年に王宮の外のサムセン地区に移り、現在は国立公文書館と隣接して立っている。5階建ての本館の他に、拓本や金箔入書櫃などを保存するワチラヤーン図書館と児童青年館がある。文化省芸術局が管轄し、タイ各地に17の分館を持っている。

納本制度により、国内の出版物は無償で2部納本され、さらに国際交換プログラムや購入により、海外の資料も収集している。また、UNESCOの国際逐次刊行物データベースシステム(International Serials Data System : ISDS)の東南アジア地域センターになっており、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシアの雑誌とその書誌データを集め、1980年からISSN-SEA Bulletin(1980年から1990年まではISDS-SEA Bulletin。2005年版以降はCD-ROM)を刊行している。

図書2,905,000冊、雑誌3,057タイトル、地図3,339枚、視聴覚資料101,554点などを所蔵している。図書と雑誌はホームページで公開しているオンラインカタログ3で検索することができる。雑誌記事索引も提供している。主にタイ語の雑誌3,121タイトルについて過去10年分の記事を収録しており、さらに遡及入力を続けている。また、タマサート大学、チュラロンコン大学、カセサート大学の過去4年分の学位論文を収録した、論文データベースも公開している。貴重書のデジタル化も進めており、順次ホームぺ-ジで公開される予定である。

สำนักงานสถิติแห่งชาติ ศูนย์ข้อมูลข่าวสาร
National Statistical Office Information Center
国家統計局図書室

統計局によるセンサスや調査レポート、テクニカルペーパーなど中心に、各省庁が発行する統計も含めて約15,000冊を開架している。特にCensus of agricultureは、1963年の調査開始からすべて所蔵している。18名のスタッフの中には統計の専門家がいて、利用者の相談に乗ってくれる。統計局による資料は全て購入可能で、CD-ROM複写のサービスも行っている。また、所蔵するすべての統計をデータベース化しており、閲覧室のPCを使って無料で検索、閲覧、ダウンロードすることができる。このうち主な統計はホームページ4上でも公開されている。

จุฬาลงกรณ์มหาวิทยาลัย สถาบันวิทยบริการ
Chulalongkorn University, Center of Academic Resources
チュラロンコン大学学術資料センター

チュラロンコン大学はタイで最初に設立された高等教育機関である。チュラロンコン国王時代の1871年に王宮内に設置された官吏養成学校を前身とし、1917年にワチラーウット国王の命で大学に昇格した。現在は18の学部、11の研究機関を擁するタイで最も権威ある総合大学である。

学術資料センターは、学内に37館あるチュラロンコン大学図書館のなかで中央図書館の役割を果たしている。官吏養成学校時代の1910年に設立され、その後設置されたThailand Information Center、Audio Visual Centerと統合され、1978年に現在のCenter of Academic Resourcesとなった。学内全体では、図書約1,050,000冊、雑誌約4,000タイトルを所蔵しており、そのうち学術資料センターでは、図書約380,000冊、逐次刊行物約1,100タイトル、視聴覚資料2,600点のほか、マイクロ資料35,000点、CD-ROM約2,000枚を所蔵する。ほとんどの雑誌は交換によって収集している。建物は7階建てで、館内のどこからでも無線LANでインターネットを使用できる。

Chulalinet5というデータベースを公開しており、①学内全ての図書館の所蔵目録であるMain Database、②所蔵する全ての学位論文と、雑誌約800タイトル(うち約300タイトルは英語)を収録する論文記事索引Theses and Journal Index (TJI)、③学内からのみ利用可能なTJIのフルテキストデータベースの3つのコンテンツから成っている。③は中央図書館6階のThailand Information Centerで作成しており、学内でのみ利用可能である。

มหาวิทยาลัยธรรมศาสตร์ หอสมุดปรีดี พนมยงค์
Thammasat University, Pridi Banomyong Library
タマサート大学プリディ・パノムヨン図書館

タマサート大学は、タイで2番目に古い大学で、1934年に、法学者であり首相、元老などを務めたプリディ・パノムヨンによって創設された。元々は人文、社会科学系の大学だったが、1980年代より理系の学部も設置されるようになった。キャンパスは、バンコクのプラナコーン区にあるタープラチャン・キャンパス、パトゥムターニー県にあるランシット・キャンパスなど4箇所に分かれている。現在は22の学部、研究機関を持つ。

大学の創設者の名前を冠するこの図書館は、学内に13館ある図書館の中央図書館の役割を果たす。1934年の大学創設当時から図書室は設けられていたが、現在の建物は1997年に、タイで最初の地下階をもつ図書館として建設された。学内全体で図書約1,100,000冊、雑誌約4,700タイトル、新聞38タイトル、視聴覚資料27,600点を所蔵する。国王の葬儀の記念に刊行された三蔵経などの貴重書も所蔵しており、デジタル化を進めている。特色ある資料としては、タイポップスのパイオニアであり、タイ最大のレコード会社GMM Grammy社の創設者でもあるリワート・ブディナン氏が集めたレコードや楽譜のコレクションがある。

図書、雑誌のオンラインカタログの他、学位論文データベース、雑誌記事索引6を公開している。雑誌記事索引は、国立開発行政学院(NIDA)と、シーナカリンウィロート大学が作成した雑誌記事索引との統合検索が可能である。また、学内でのみ利用可能だが、タマサート大学の出版物や学位論文のフルテキストデータベースも作成している。

2年前には有料のDocument Library Service7を始めた。雑誌記事索引の検索結果に基づいて必要な文献を依頼すると、フルテキストのPDFファイルをメールで送付してくれる。タイ文字入力が困難な利用者には、検索代行サービスも行っている。年間契約料は7,000ドルで、現在北イリノイ大学、ワシントン大学などが契約しているという。

さらに現在Thai Journal Citation Index(TCI)という、引用関係から関連文献を検索するデータベースを、モンクット王トンブリ工科大学と共同で開発しており、タマサート大学からは、人文・社会科学系のタイ語学術雑誌97タイトルのデータを提供する予定である8

สถาบันบัณฑิตพัฒนบริหารศาสตร์ สำนักบรรณสารการพัฒนา
National Institute of Development Administration(NIDA), Library and Information Center
国立行政開発学院図書館情報センター

国立行政開発学院は、タイ唯一の社会科学系国立大学院大学で、1963年にタマサート大学の付属研究所Institute of Public Administrationとして設立され、1966年にフォード財団の援助を受けてNational Institute of Development Administrationとして独立した。現在、約3,500人の学生が所属しており、このうち10%がべトナム、カンボジア、ミャンマーからの留学生である。


国立行政開発学院図書館情報センター

国立行政開発学院図書館情報センター

1963年の研究所設立時から図書館は設けられていたが、1966年の大学独立時に、図書館もDevelopment Document Centerとしてオープンした。そして、その後の資料の増加に合わせて1970年に建物を新築し、Library and Information Centerに名称を変更した。さらに1998年には、NIDA Information Technology Centerなどいくつかの研究所や教育施設のために12階建てのビルが新設され、図書館は、現在、その2階~4階および6階を占めている。

社会科学分野を中心に、約250,000冊の図書と、1,000タイトル以上の雑誌を所蔵し、重要な雑誌243タイトルについて過去20年分の記事を収録した雑誌記事索引9を作成している。また、同学院に提出された学位論文と、欧米で出されたタイに関する学位論文の一部に関しては、ホームページ上でフルテキストを公開している10。学内向けのサービスとしては、NIDA development journalなど、同学院が出版する雑誌15タイトルのフルテキストデータベースを提供しており、全ての記事を学内LANにつないだ自分のPCで閲覧することが出来る。

また、情報センターの運営に関して、他の図書館への協力、支援活動も行っている。

สยามสมาคมในพระบรมราชูปถัมภ์ ห้องสมุด
Siam Society Library
サイアム・ソサエティ図書館

サイアム・ソサエティは、1904年に王室の援助の下、タイ内外の研究者の協力を得て設立された研究機関で、The journal of the Siam Society、The natural history bulletin of the Siam Societyというタイ研究において重要な英文誌を発行している。

図書館は、人文分野を中心に、学術書約25,000冊、学術雑誌約200タイトルのほか、写真、マイクロフィルム、視聴覚資料などを所蔵する。特徴的なのは、古い稀覯本、貝葉写本などを多数所蔵していることで、保存やメディア変換にも力を入れている。訪問時に、ちょうど貝葉写本のデジタル化作業を見学することができた。1296年から600年間タイ北部に栄えたランナー・タイ王国の時代の文書などを撮影し、世界で3名しかいないという、タイ古語に精通した学者によって、現代タイ語への翻訳作業が行われていた。まずはタイ語で冊子体での公開を目指しているが、将来的には英語に翻訳され、ホームページ上で公開される予定である。


サイアム・ソサエティ図書館所蔵貝葉写本。装飾を施した板に挟まれ、伝統的な織物でできた袋に入っている。

サイアム・ソサエティ図書館所蔵貝葉写本。装飾を施した板に挟まれ、伝統的な織物でできた袋に入っている。

総合目録

タイでは、25の大学図書館が共同でThaiLIS11という総合目録を公開しており、2,422,504件の書誌データ、および44,004件の逐次刊行物データを収録している(2008年5月現在)。

また、科学技術省・科学技術開発局・技術情報アクセス局では、Journal Link12という逐次刊行物の総合目録を公開している。これは、タイ全国211館のタイ語と英語の逐次刊行物の所蔵データ17,616件が収録されており、オンラインでフルテキストを公開している雑誌については、そのデータへリンクを張っている。

図書館間の連携

今回、各図書館を訪問して、学術情報の電子化が非常に進んでいることに驚かされた。特に大学図書館では、自学の出版物や学位論文など、著作権の許諾を得やすいものから電子化し、機関リポジトリを進めていた。ただ、雑誌記事索引や、他機関の学位論文に関しては、各館で同様のデータベースを作成しているにも関わらず図書館間の連携がなされていない。この点が改善されれば、さらに使い勝手の良い機関リポジトリが構築され、他のアジア諸国のモデルになり得るのではないかと感じた。

5. 日本関係機関

จุฬาลงกรณ์มหาวิทยาลัย สถาบันเอเชียศึกษา
Chulalongkorn University, Institute of Asian Studies(IAS)
チュラロンコン大学アジア研究所

東南アジア、東アジア、中東に関する学際的な研究、教育を行う機関である。1967年に、政治科学部の中の1組織として設置され、1990年に研究所として確立した。Thai World Affairs Center(Thai WAC)など、8つの研究センターやプログラムを運営しており、その中の一つが日本研究プログラムである。

IAS全体で約20人の研究者が所属しており、毎年1回アジア研究に関するワークショップを開催し、その成果を研究書として発表している。これまでに研究書を130冊(うち英語46冊)、逐次刊行物をAsian review(2004年版以後未刊)、Asia yearbook、Annual reportの3タイトル出版している。

図書室は、研究者のために研究所内に設けられており、日本関係の資料は、レファレンスブックを中心に約600冊を所蔵している。新着資料の受け入れは年間10冊程度で、ワークショップのテーマに関する資料を購入することが多い。

また、チュラロンコン大学では、文学部の中に日本語学科が設置されている。現在の学生数は約120人で日本へ留学する学生も多い。日本文学や日本文化の研究者が所属し、古典から現代作品まで、日本文学の翻訳が活発に行われている。日本文学は2001年頃から爆発的なブームなっており、2004年までに135件の日本文学作品がタイ語に翻訳されている13

มหาวิทยาลัยธรรมศาสตร์ สถาบันเอเชียตะวันออกศึกษา โครงการญี่ปุ่นศึกษา
Thammasat University, Institute of East Asian Studies(IEAS), Japanese Studies Program
タマサート大学東アジア研究所日本研究プログラム

1981年にタイ国王第2王女シリントン殿下の賛助を得て設置された日本研究グループを基とし、1984年に東アジア研究所が設立された。現在は対象地域を東南アジア、オーストラリアおよびニュージーランドまで広げているが、中心となるのは日本研究プログラムである。チュラロンコン大学アジア研究所と同様、学際的な研究機関で、現在の所長はタマサート大学理学部の教授が務めている。

ランシット・キャンパスにある研究所は日本政府の援助によって1986年に建設され、研究室、語学用のセミナー室、講堂、宿泊施設のほか、東南アジアで初めて作られた日本式の茶室も備えている。茶室は、気温、湿度の高いタイでは維持管理が難しく、劣化しているが、日本文化を体験するためにタイ各地の学校や経済団体などが利用している。

日本研究プログラムの主な活動としては、日本語教育、日本研究、セミナー開催、学術書や学術雑誌ญี่ปุ่นศึกษา= Japanese studies journal(Yīpunsưksā)の刊行などを行っている。

日本関係の資料は、ランシット・キャンパスに2003年に新しく設立されたห้องสมุดป๋วย อึ๊งภากรณ์(Puey Ungphakorn Library)に所蔵されている。日本語図書も約20,000冊所蔵しているが、これらは20年ほど前に、慶応大学、名古屋商科大学などの日本の大学や個人から寄贈されたものである。


タマサート大学東アジア研究所の茶室から見た景色。日本風の庭園が造られている。

タマサート大学東アジア研究所の茶室から見た景色。日本風の庭園が造られている。

盤谷日本人商工会議所

1954年の設立以来50年以上の歴史を持ち、会員数1,294社を有する、上海に次ぎ世界で2番目に規模の大きい在外日本人商工会議所である。タイには6,000~7,000社の日本企業が進出しており、在留邦人は40,000人を超えると言われている。彼らを支援するため、同会議所では、貿易院、工業連盟、銀行協会、泰日技術振興協会などと連携して、講演会、見学会や関税に関する提案などを行っている。

出版事業にも力を入れており、労働法や移民法など、法律の日本語訳、『タイ国経済概況』(隔年刊)、『会員名簿』、『タイ国経済統計集』(ジェトロバンコク事務所と共同で編集)などの年鑑や、月刊誌『バンコク日本人商工会議所所報』を出版し、ビジネスに役立つ情報を日本語で発信している。特に『バンコク日本人商工会議所所報』は、タイ内外の研究者による業界動向分析や、国王が80歳の誕生日の祝典で述べたスピーチの日本語訳などを掲載し、生の情報を日本語でいち早く得ることができる。

また、事務所の入り口に資料コーナーがあり、会議所の出版物以外にも、『時事速報』(時事通信社)や『週刊タイ経済』(Thai Keizai Publishing)などの日本語の時事誌やビジネス誌を、誰でも自由に閲覧することができる。

ジェトロバンコクビジネスライブラリー

ジェトロバンコク事務所の1階にある、75㎡の小さな図書室である。日本とタイの法律や経済に関する資料を所蔵しているが、ほとんどが寄贈されたもので、新しい資料は少ない。

この図書室の活動の目玉はレファレンスサービスである。日本語に堪能なタイ人スタッフが2名おり、2007年は1年間で約3,900件の質問に回答した。質問は、電話、FAX、E-mailでも受け付けており、内容も、貿易手続きや、統計データなど多岐に渡る。回答はジェトロのホームページ14を紹介する場合が多い。

国際交流基金バンコク日本文化センター図書館

1992年に設立された、日本に関する情報と、日本語の学習者および教育関係者への情報提供を目的とした図書館である。図書約23,000冊(うち約14,000冊が日本語)、逐次刊行物約120タイトル、視聴覚資料約2,700点を所蔵する。各レベルの日本語学習テキストが揃っており、それ以外には日本文学の翻訳、漫画、アニメや日本文化に関するビデオなどが多い。漫画やビデオは非常に人気があるという。スタッフは専任のタイ人司書2名、臨時職員2名で、専任司書は、国際交流基金が主催する司書日本語研修の修了生である。来館者数は月平均約5,200人に上り、筆者が訪れた際も大勢の利用者でにぎわっていた。来館者の約7割がタイ人の日本語学習者である。

会員は資料を借り出すことができ、日本語教師会員は郵送でも資料を取り寄せることができる。

6. おわりに

タイと日本は古くから親交が深く、2007年には日タイ修好宣言が調印されてから120周年を迎え、両国で様々な式典や行事が行われた。また、同じく2007年には日タイ経済連携協定が発効した。このような状況の中で、両国のお互いへの関心はこれまでにも増して高まりつつある。タイでは、日本漫画や日本文学がブームになり、日本語学習者が増加している。また、日本でも、タイ経済に関するセミナーが盛んに開かれ、料理や音楽、映画などの文化を伝える教室や行事も頻繁に開催されている。当館としては、今後もタイの出版事情や図書館の状況に注目し続け、国民へのサービスに反映させていく必要があると感じた。


1 http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/jcas/infoshare/外部サイトへのリンク

2 出版事情の詳細や個々の出版社については、増田真「タイの出版界の状況について」『アジア情報室通報』5(4) 2007.12 pp.2~4 を参照。

3 http://www.nlt.go.th:81/ipac20/ipac.jsp?
session=1J11934J747Y6.940&profile=nlt&logout=true&startover=true#focus=
12W1429863DN0.2037&profile=nlt&menu=search&ts=1211429864308#focus
外部サイトへのリンク

4 http://web.nso.go.th/eng/en/stat/stat0.htm#proj外部サイトへのリンク

5 http://library.car.chula.ac.th外部サイトへのリンク

6 http://index.library.tu.ac.th/ipac20/ipac.jsp?
session=1W11431M0181H.6263&profile=main&menu=search&submenu=
advanced&ts=1211431713116#focus
外部サイトへのリンク

7 名称は筆者の聞き取りによる。

8 科学技術分野については、モンクット王トンブリ工科大学がデータを提供している。

9 http://library1.nida.ac.th:8000/ipac20/ipac.jsp?&profile=main#focus外部サイトへのリンク

10 http://libdcms.nida.ac.th/dlpublic/dcmstitle.htm外部サイトへのリンク

11 น้ำทิพย์ เมธเศรษฐ“การแปลวรรณกรรมญี่ปุ่นในประเทศไทย” ญี่ปุ่นศึกษา(Yīpunsưksā)= Japanese studies journal(1)2547[2004].5 pp.1~28

12 http://www.jetro.go.jp/外部サイトへのリンク

13 http://uc.thailis.or.th/外部サイトへのリンク

14 http://www.journallink.or.th/ 外部サイトへのリンク

(URLの最終アクセスは全て2008.5.20)

参考文献

・石井米雄, 吉川利治編『タイの事典』同朋舎出版 1993

・衣川恵「研究所通信 チュラロンコン大学アジア研究所訪問の報告」『地域総合研究』32(2) 2005.3 pp.197~199

・峯尾幸信「外国の情報センター・図書館を訪ねて--タイ国立図書館」『情報の科学と技術』37(10) 1987.10 pp.479~482

・山口学「世界の国立図書館-10-タイ国立図書館」『国立国会図書館月報』(296) 1985.11 pp.25~22

・「<海外研究機関紹介> タイ・タマサート大学東アジア研究所(IEAS)」『APCアジア太平洋研究』(5) 1999.12 pp.57~62

・『「タイ文学を味わう」報告書』(アジア理解講座 ; 1996年度 第2期)国際交流基金アジアセンター 1998

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