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アジア資料―諸地域資料―(関西館の資料紹介 12 ):国立国会図書館月報2006年12月号

国立国会図書館月報 2006年12月号(no.549)
関西館資料部アジア情報課 小笠原 綾・邊見 由起子・大西 啓子

はじめに

関西館アジア情報課が対象としているアジア地域は、 日本を除く東アジアから、 アフリカのサハラ砂漠より北の国々までです。 当館では、 中国、 韓国、 北朝鮮以外のアジア地域を諸地域としています。 本稿では、  < 東南アジア > 、  < 南アジア > 、  < 中東・北アフリカ、 中央アジア等 >  の3つの地域に分けて、 図書、 雑誌・年鑑をご紹介します。 新聞については次号でご紹介します。

所蔵資料概要

アジア諸地域に関する資料は、 人文、 社会科学分野を中心に、 参考図書、 古典的文献、 研究書等を所蔵しています。 各地域の現地語資料に加えて、 日本語、 欧米言語資料も収集しています。 各国の国立図書館等と国際交換を行っているので、 政府刊行物や、 各国の全国書誌を所蔵している点が当館の特徴です。 また、 図書館情報学関係の資料は力を入れて収集しています。 本稿では地域ごとに項目を立ててご紹介します。

関西館所蔵の現地語資料は右の表のとおりですが、 1985年以前に受け入れ、 整理した図書は東京本館で所蔵しています (38ページ検索方法参照)。 なお、 年代に関わらず、 法令議会資料は東京本館議会官庁資料室、 児童書は国際子ども図書館で所蔵しています。

 

関西館所蔵アジア言語資料 (中国語、朝鮮語を除いた概数。2006年10月現在。)

関西館所蔵アジア言語資料
地域 言語 図書
[単位:冊]
雑誌・年鑑
( )は継続中
[単位:タイトル]
東アジア モンゴル語 600 18 (4)
東南アジア インドネシア語 4,250 172  (43)
マレーシア語
ベトナム語 2,130 128  (60)
タイ語 2,200 78  (19)
ビルマ語 1,500 111  (2)
タガログ語 150 13  (2)
南アジア ヒンディー語 800 10  (4)
ベンガル語 120 2  (0 )
ウルドゥー語 80 1 (0 )
中東・北アフリカ ペルシャ語 2,800 58  (10)
アラビア語 2,220 56  (7)
トルコ語 1,000 27  (4)
その他 650 15  (14)
合計 18,500 689  (169)

東南アジア

現地出版物を効率的に収集するため、 1998年から米国議会図書館 (LC) の東南アジア共同収集プログラム (CAP-SEA) に参加しています。 これは、 参加館の収集希望をもとに LC ジャカルタ事務所が一括して現地での収集活動を行う仕組みです。 図書については発行国、 分野、 言語などによって分けられた項目の中から希望する項目を、 雑誌についてはタイトルリストから希望するタイトルを選択します。 参加館は選択範囲に応じて収集活動に必要な費用を負担することになっています。 現在当館は9か国 (フィリピン、 インドネシア、 シンガポール、 マレーシア、 ブルネイ、 タイ、 ベトナム、 ラオス、 カンボジア) の資料を CAP-SEA により収集しており、 一般には入手の困難な政府刊行物や地方出版物も収集可能です。

○図 書

当館で所蔵する現地語図書は、 歴史・文学などの人文分野の占める割合が大きく、 例えばタイ語資料では、 タイ近代史学を拓いたダムロン親王の著作のほか、 『三国志演義』 の訳本で散文小説の先駆けとなった "สามก๊ก " (『三国』)、 詩人スントーンプーの作品や、 タイで最初の著作権売買作品として知られるモーム・ラーチョータイの"นิราศลอนดอน " (『ロンドン紀行詩』) など著名な古典文献を所蔵しています。 このほか、 自然科学分野では、 東南アジア固有の植物、 魚類、 昆虫の図鑑を所蔵しています。

事典類としては、 "สารานุกรมไทย ฉบับราชบัณฑิตยสถาน" (『タイ学士院版百科事典』) のように権威がある総合百科事典から、 文化、 芸術、 宗教など各主題別の事典まで幅広く所蔵しています。

○雑誌・年鑑

例えばインドネシア語では、 "Tempo" (『時』)、 "Gatra" (『節』)、 "Warta ekonomi" (『経済ニュース』) などの主要誌のほか、 大衆向け女性誌 "Femina" (『女性』) も所蔵しています。 写真や広告を含めて時代を反映する資料といえます。

タイ語雑誌は、 1990年代以降発行のものを多く所蔵していますが、 南満州鉄道株式会社東亜経済調査局が1941年からの数年間に収集した資料も所蔵しています。 その中の "วรรณคดีสาร" (『文学ジャーナル』) や "เอกชน" (『私人』) は、 第二次世界大戦下のタイでの言論統制や作家たちの創作活動がうかがえる資料として貴重です。

統計については各国の総合統計を所蔵するほか、 例えばラオス政府観光局の"Statistical report on tourism in Laos" のように産業別、 分野別の統計についても充実を図っています。 政府機関の出版物や年鑑は統計情報を得る上でも有用です。

○図書館情報学関係

各国の主要な図書館の出版物は重点的に収集しています。 例えば、 ベトナム国家図書館関係の雑誌では、 図書館界の動向を伝える "Tập san thư viện" (『図書館集刊』) や Tạp chí thư viện Việt Nam" (『ベトナムの図書館』) のほか、 文化芸術関係の"Thông tin văn hóa nghệ thuật" (『文化芸術通信』) を所蔵しています。

南アジア

南アジア地域の場合、 スリランカを除いて、 学術的な研究成果は英語で発表されることが多いため、 英語文献が重要な地位を占めています。

当館では、 各省庁の年報や調査報告書など、 政府機関による出版物を積極的に収集しています。 工業、 農業、 教育、 公衆衛生など、 内容は多岐にわたっています。

○図 書

欧米言語図書は、 現地発行のものも含めて約2,500冊所蔵しており、 そのうち約70%がインドに関する資料です。 内容は、 経済・統計関係が一番多く、 続いて歴史・地理、 宗教・思想、 文学・芸術等の分野を所蔵しています。 中でも地域研究において重要な資料として国勢調査 (census) が挙げられます。 これは、 様々な主題における基本的な文献で、 インドをはじめ主要な国のものを所蔵しています。

ヒンディー語図書の中には、 在日本インド大使館から寄贈された資料が多く含まれています。 ほとんどが人文分野で、 このうち約60%が文学作品や文学評論です。 民族運動高揚期にウルドゥー語やヒンディー語で精力的に作家活動を行ったプレームチャンドなど、 近現代の作家による作品が中心です。 文学に次いで多いのが、 辞書を含む言語学関係と、 宗教・思想関係です。

美術関係では、 " मिथिला की सांस्कृतिक लोकचित्रकला " (『ミティラー文化の民衆絵画』) のように、 モチーフをカラー図版付きで解説した、 見た目に楽しい資料も所蔵しています。 また、 1950年代から60年代にヒンディー語で書かれた、 高等学校レベルの社会科や歴史の教科書を数点所蔵しています。

○雑誌・年鑑

図書に比べてタイトル数、 分野とも充実しています。 "आजकल " (『今日』) などの一般誌、 "Journal of the asiatic society of Mumbai" などの学術雑誌のほか、 宗教・哲学関係誌や経済誌、 科学技術関係誌を所蔵しています。

中でも、 イギリス東インド会社に関する議事録 "Proceedings relative to ships tendered for the service of the United East-India Company" (当館所蔵:1780-91、 1798-99年) や、 カルカッタ自動車販売協会が発行していた "The Auto Age" (当館所蔵:1963-83年) などの業界誌は、 国内では所蔵機関の少ない資料です。

○図書館情報学関係

南アジアのうち特にインドでは、 図書館情報学関係の資料が多く出版されており、 研究書のほか、 4,000件以上の図書館を収録する "Directory of libraries in Delhi" や、 ヒンディー語普及協会が1950-55年に収集した写本のリスト "हस्तलिखित हिंदी पुस्तकों का संक्षिप्त विवरण" (『ヒンディー語写本の簡単な報告』) などを所蔵しています。 また、 "Cataloguing of Indic names in AACR-2 : a study" は、 インド人の姓名の意味や構成を地域別に解説し、 代表的な姓名のリストも掲載されているため、 著者標目決定の参考になる資料です。

中東・北アフリカ、 中央アジア等

○図 書

ペルシャ語資料は約40%を言語・文学関係が占め、 デフホダーの "لغت نامه " (『辞典』) などのペルシャ語辞典や、 フィルドウシーの "شاهنامه" (『王書』) をはじめニザーミー、 ハーフィズ、 サアディーなど著名な古典文学者の作品や研究書を所蔵しています。 次いで歴史・地理関係が、 25%を占めています。 また、 宗教関係にはイスラームだけでなくゾロアスター教についての資料も含まれています。

アラビア語資料は歴史・地理、 宗教、 言語・文学等、 人文系分野をバランスよく所蔵しています。 イスラームについてはクルアーン注釈やハディース、 哲学、 神学、 法学、 神秘主義についての基本的な古典文献を所蔵しています。 とくに法学関係は珍しいものが多く、 1910年にモロッコで出版されたマーリク派の "المعيار الجديد" (『新しい尺度』)、 1883年にエジプトで出版されたハナフィー派の" الفتاوى المهدية في الوقائع المصرية " (『エジプトの出来事についてのマフディーのファトワー集』) などがあります。 小口カバーのついた西アジア特有の装丁の資料や、 19世紀エジプトで盛んに行われた活版印刷で、 特徴ある版面をもつブーラーク版など製本や印刷の面で興味深い資料もあります。 また、 福沢諭吉 『福翁自伝』 や吉本ばなな 『つぐみ』 のアラビア語訳など日本関係の資料も所蔵しています。

 

“تاريخ الكامل”(『歴史全書』)

تاريخ الكامل ”(『歴史全書』)小口カバーのついた装丁のなされた資料。ブーラーク版特有の縦長の枠の中に本文、余白に別の歴史書が印刷されている。

 

 

トルコ語資料は圧倒的に歴史・地理分野が多く、 古代オリエントの時代から現代のトルコ共和国までを扱った資料を幅広く所蔵しています。 なかでも数が多いのはトルコ歴史学協会 (Tu¨rk Tarih Kurumu) の出版物です。 "صولاق‌زاده تاریخی" (『ソラクザーデの年代記』) などのオスマントルコ語史料も所蔵しています。 次いで所蔵が多いのが言語・文学関係で、 カーシュガリーの "Divanü lûgat-it-Türk" (『チュルク諸語辞典』) やトルコ文学の最も古い作品 "Kutadgu Bilig" (『幸福に関する智恵』) などがあります。

モンゴル語資料は言語・文学、 歴史・地理分野が約60%を占めますが、 馬の百科事典や、 草原の植生や馬の飼料となる草花についての本、 モンゴル伝統医学など、 科学技術関係も所蔵しています。

近年は統計資料やビジネス情報の需要も高まってきていますが、 現地語資料の所蔵が少ない中央アジアの情報は "Казахстан и Россия в цифрах" (『数字に見るカザフスタンとロシア』) "Кыргызстан в цифрах" (『数字に見るキルギスタン』) などのロシア語の統計集で得ることができます。 国連出版物の "The Arab Human Development Report" など社会情勢を詳しく分析した資料も数多くあります。

また、 現地語史料を校訂し欧米語タイトルで出版したものもあり、 たとえば M. J. de Goeje による "Annales, quos scripsit Abu Djafar Mohammed ibn Djarir at-Tabari" にはタバリーの有名なアラビア語の年代記 "تأريخ الرسل والملوك" (『使徒たちと諸王の歴史』) が収められています。

○雑 誌

継続収集しているものは多くありませんが、 イランの "ارمغان" (『贈物』) (当館所蔵:1919-1978年)、 "مهر" (『太陽』) (当館所蔵:1933-1967年) などは、 長期にわたって所蔵しており貴重なコレクションとなっています。 また、 戦前の在日タタール人により 「世界ノ回教諸國ニ [日本] ヲ紹介スル唯一ノ雜誌」 と銘打たれて発行された "یاپون مخبری = Yapon Mohbiri" (『日本通信』) など興味深いものがあります。

○図書館情報学関係

ペルシャ語と英語を対照させた図書館用語辞典、 世界各地のアラビア文字言語の写本目録などの参考図書や、 Türk Kütüphaneciler Derneği (トルコ図書館員協会) の出版物を所蔵しています。

検索方法

資料の種類や整理した時期によって、 所蔵館や検索ツールが異なります。 詳しくは右の表をご覧ください。 網掛けした部分は、 東京本館で所蔵している資料です。

  整理 アジア諸言語
(ベトナム語、モンゴル語、
インドネシア語・マレーシア語)
アジア諸言語
(その他)
日本語
欧米言語
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*1 ローマ字以外の文字を使用する言語は ALA-LC 方式でローマ字に翻字して検索します。

*2 アラビア語、 ペルシャ語、 ヒンディー語等の図書データも順次搭載する予定です。

*3 冊子目録については、 アジア情報室ホームページ 「アジア関係資料の検索」 (http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/contents/asia_03serch.html) でご紹介しています。

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