電子展示会 本の万華鏡

第11回本の万華鏡 はやり病あれこれ 第1章

2012年11月21日
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第1章 疱瘡(ほうそう)/天然痘

天然痘ウィルス アメリカ疾病管理予防センター
(Centers for Disease Control and Prevention)より転載

テンネントウウィルス

  天然痘はウィルスによって引き起こされる感染症で、医学界では一般に痘瘡と呼ばれています。強い伝播力と高い死亡率、また、命を取り留めても顔や体に跡が残ることから、古くから恐れられてきました。 1796年イギリスの医師ジェンナーが開発した牛痘法が世界に広まり、1980年5月WHOは天然痘の世界根絶宣言をしました。以来これまでに世界中で天然痘患者の発生はありません。人類によって根絶された唯一の感染症です。

 

江戸時代の医学

天然痘は、6世紀に日本に伝わったといわれています。江戸時代には日本にも定着し、幾度となく流行を繰り返しました。徳川幕府の将軍が何人も天然痘にかかっています。天然痘の特徴的な症状を記載した資料や種痘についての資料が残されています。

1) 痘瘡面上図 / 【849-60 [国立国会図書館デジタルコレクション]

トウソウメンジョウズ

  天然痘にかかると、高熱の後、主に顔や手足に特徴的な発疹ができます。発疹はやがて膿を持ち、かさぶたとなってはがれおちます。治癒しても顔に跡が残るため、「疱瘡はみめ定め」といわれました。酷くなれば顔中に天然痘の跡が残るため、軽く済むように人は祈りました。
  本書は天然痘患者の顔に現れた症状を記録したものです。広範囲にわたってさまざまな跡が残ることがわかります。

 

 

 

 

2) 牛痘小考 / 楢林宗建著 刊  嘉永2 【847-184[国立国会図書館デジタルコレクション]

ギュウトウショウコウ

  嘉永2(1849)年に長崎出島の蘭館医モーニッケによって牛痘の種痘が日本へもたらされました。モーニッケの接種の成功によって、牛痘法種痘は全国に広まり始めました。著者、楢林宗健はそれを日本で広めた人物です。本書には種痘の成功に至る体験談と種痘の方法が詳しく書かれています。

 

 

 

 

 

 

天然痘の民俗

  天然痘は擬人化されて、疱瘡神と呼ばれました。「軽く済むように」「すぐよくなるように」と祭って機嫌をとったり、苦手なもので追い払ったりしようとしました。

3) 疱瘡神祭る図疱瘡心得草 / 志水軒朱蘭述  平安 : 蓍屋善助, 寛政10 [1798] 【852-26[国立国会図書館デジタルコレクション]

ホウソウココロエグサ

  古来、赤には魔よけの効果があり、呪力をもつと考えられてきました。疱瘡神もまた赤い物を苦手とするという伝承があるため、子どもに赤い着物を着せています。また、布団や身の回りの小物も赤い物づくしとなっています。

※サムネイル画像では赤色が薄く見にくくなっています。拡大画像もご覧ください。

 

 

 

 

4) 新形三十六怪撰 為朝の武威痘鬼神を退くの図 / 月岡芳年  東京 : 松木平吉, 1902 寄別2-2-2-5】 [国立国会図書館デジタルコレクション]

タメトモノブイトウキジンヲシリゾクノズ

  源為朝は平安時代末期の武将です。武勇で知られ、保元の乱では崇徳上皇側について敗北。伊豆大島に流されますが伊豆諸島を支配し、討伐を受けて自害しました。"八丈島に天然痘が流行らないのは為朝が疱瘡神を寄せ付けないのだ"として、疱瘡神を追い払う姿が描かれています。この絵の解釈には諸説あり、白い紙は疱瘡神の詫び証文という説や、左上の3人とも疱瘡神という説、手を広げているのは疱瘡神で後ろの2人は人間という説もあります。
  実際には八丈島にも天然痘が流行ったことはありますが、為朝にすがる気持ちからか、その神威が傷つくことはなかったようです。

 

 

5) 疫神とその周辺 / 大島建彦著  東京 : 岩崎美術社, 1985.9 GD33-576

湯尾峠孫嫡子の守り札(末口税氏提供)
(『
疫神とその周辺』より)

ユノオトウゲマゴチャクシ

  疱瘡神からの詫び状や、天然痘を逃れるもしくは軽く済むお守りも知られています。証文や守り札を鴨居や戸口に貼って、天然痘にかからないように、また天然痘が軽く済むようにと願いました。
  この札は疱瘡神の力に恐れ入った安倍晴明が「人々の疱瘡が軽く済むようにしてほしい」と、疱瘡神に頼んで、もらった札だといわれています。札には安部晴明の封印が加えられています。

 

 

 

 

 

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