リサーチ・ナビ>本の万華鏡>過去の常設展示一覧>第154回常設展示 虫を記録する‐昆虫図鑑古今東西‐
第154回常設展示 虫を記録する‐昆虫図鑑古今東西‐
キーワード:昆虫;昆虫図鑑;虫譜;昆虫採集 カテゴリ:科学技術 件名(NDLSH):昆虫 分類(NDC):486
PDF版 PDF file 0.77MB
平成20年6月19日(木)〜8月19日(火)
◇メーリアン『スリナム産昆虫変態図譜』(1719)【WB32-2(61)】◇
図は、中南米に生息するアサギドクチョウ。青緑色の美しい蝶ですが、その名の通り体内に毒を持っています。これに擬態するミドリタテハという無毒の蝶も存在します。
『スリナム産昆虫変態図譜』については、第2章Iをご参照ください。また、当館HP「ディジタル貴重書展」で一部をご覧になれます。
目次
はじめに
国立国会図書館は、多種多様な昆虫図鑑を所蔵しています。今回の展示では、当館の所蔵する特徴ある昆虫図鑑およびその関連資料を選び出し、第1章から第3章の3部構成でご紹介します。
第1章では、日本の昆虫を扱った図鑑を取り上げます。一口に日本の昆虫の図鑑といっても様々なものが刊行されていますが、地域別の図鑑や特定の種類の昆虫 を取り上げた図鑑、戦前の昆虫図鑑など、特徴的な図鑑をご紹介します。また、本物の蝶の鱗粉を糊で写し取った『蝶蛾鱗粉転写標本』といった珍しい資料も展 示します。
第2章では、世界の昆虫を扱った図鑑をご紹介します。主に18〜19世紀に海外で刊行された資料を取り上げます。ドイツに生まれオランダで活躍した女性昆 虫・植物画家メーリアンも、博物学が盛んだったこの時代に美しい昆虫図譜を残しています。また、20世紀初めに出版されたドイツのザイツ博士による蝶類図 鑑Die Gross-Schmetterlinge der Erdeは、全部で32冊にもなる大著です。
第3章では、研究者から在野の昆虫愛好家まで、昆虫が好きな人々が手がけた著作物として、初心者向けの案内書(昆虫の採集法、標本製作・保存法、標本ラベ ルの記録法など)や、独自の視点による昆虫観察記等の作品をご紹介します。日本で最初に一般に流通した昆虫採集書『採虫指南』(1883(明治16)年) や、フランスの博物学者ジャン=アンリ・ファーブル(Jean-Henri Casimir Fabre)の「昆虫記(Souvenirs entomologiques)」の大杉栄による日本初の翻訳本(1922(大正11)年)も展示します。
虫たちの振る舞いは、私たち生き物の社会の縮図ともいえます。このような昆虫図鑑や昆虫案内書を通じて、昆虫の生態に注目してみませんか。昆虫を観ることは、身近なところで自然と触れる好機となるでしょう。
◇毘留舎那谷 『東莠南畝讖』(とうゆうなんぼしん)(享保16 (1731)序)【特1-217】◇
上方の「錦蝶」と記載のある蝶はギフチョウ。本図は、ギフチョウの最古、かつ江戸時代でもっとも正確な図とされています。中央のカエルがなんともユーモラス。
『東莠南畝讖』【特1-217】は、美濃養老の僧侶が描いた動物90品・植物377品のスケッチ集。図で薄く見える朱筆は、江戸時代の本草家・博物家である小野蘭山が書き入れたものです。当館HPの電子展示会「描かれた動物・植物」第一章でご覧いただけます。
資料をご覧になる場合のご注意
- 展示資料には1〜22までの通し番号を、パネルにはA〜Nまでのアルファベットを付けています。
- 【 】内は、国立国会図書館の請求記号です。
- 【YDM】【YD】から始まる請求記号の資料及びマイクロフィッシュでのご利用をご案内している資料は、マイクロフィッシュまたはマイクロフィルムでの閲覧となります。展示期間中のご利用も可能です。
- 資料名のあとに[近デジ]とあるものは、当館のホームページ内「近代デジタルライブラリー」で画像をご覧になれます。タイトルにはられたリンクからご利用ください。
- 資料名のあとに[デジタル化資料]とあるものは、当館のホームページ内「デジタル化資料(貴重書等)」で画像をご覧になれます。タイトルにはられたリンクからご利用ください。
第1章 日本の昆虫図鑑
第1章では主に日本の昆虫を取り上げた昆虫図鑑を紹介します。日本昆虫学会のホームページ
によれば、日本では現在約32,000種の昆虫の記録があり、実際には10万種以上がいると推定されているとのことです。日本の昆虫を描いた資料は古くからあり、江戸期には本草家の水谷豊文による虫の絵(虫譜)や絵師の喜多川歌麿による狂歌絵本が残されています。明治期に入ると教育の一環として昆虫採集の普及が図られるようになり、明治末期には昆虫学の大家松村松年による『日本千虫図解』が登場しました。昭和初期には昆虫ブームが起こり、『分類原色日本昆虫図鑑』など本格的な昆虫図鑑が相次いで刊行されました。戦後は地域別のものや特定の種類の昆虫を扱ったものなど、多種多様な昆虫図鑑が出版されています。
■ 虫譜
【寄別11-35】 [デジタル化資料]
江戸時代後期の本草家水谷豊文による虫の図。水谷豊文は尾張藩の薬園御用であり、写生図に初めてリンネの学名を付記したことで知られているが、虫の絵も描いている。下の画像は、セミの成虫と幼虫を描いたもの。
■ 狂歌絵本
[江戸] : 耕書堂蔦屋重三郎, 1788(天明8)
【WA32-8】 [デジタル化資料]
虫に関する狂歌に絵を添えた狂歌絵本。絵は喜多川歌麿が描いている。下の画像では赤蜻蛉とイナゴに関する狂歌と絵が掲載されている。
■ 明治期から終戦までに刊行された昆虫図鑑
1. 日本千虫図解 巻1 / 松村松年著
東京 : 警醒社, 1904(明治37)
【YDM57633】 [近デジ]
「日本昆虫学の開祖」と称される松村松年の初期の著書。主要な日本産の昆虫を図と文により示して、その種名を調べられるようにしている。この『日本千虫図解』初巻以前に日本で刊行された昆虫図譜は、他の著者による蝶類に関するもの3点のみであり、『日本千虫図解』の刊行は日本の昆虫学界に多大な貢献をしたと言われている。著者の松村松年は『日本昆虫大図鑑』【563-444イ】、『日本通俗昆虫図説』【553-106】など数々の図鑑・図説を出版したほか、日本人による最初の昆虫学テキストとされる『日本昆虫学』【YDM57626】も記している。
岐阜 : 名和昆虫研究所工芸所, 1909(明治42)
【YDM57531】 [近デジ]
1909年に名和昆虫研究所工芸所から刊行された資料。蝶の羽の部分は、糊を使って実際の蝶の鱗粉を写し取っている。蝶・蛾の羽の模様や色などが詳細に分かる貴重な資料であり、美術的な価値も高い。

◇ツマベニテフ◇ ※当該資料はマイクロフィッシュ(白黒)でのご利用になります。
3. 分類原色日本昆虫図鑑 第8輯 / 加藤正世著
東京 : 厚生閣, 1933(昭和8)
【486-Ka641b】
1933〜1934年に刊行されたカラーの昆虫図鑑。第1輯から第12輯まであり、直翅目(バッタ目)・蜻蛉目(トンボ目)など種目別に昆虫を紹介している。巻末に和名索引を付している。本書で紹介されているテナガコガネは台湾・インドに分布しており、台湾が日本の植民地だった当時は日本最大のコガネムシとされていた。なお、現在日本最大のコガネムシは、沖縄県に生息するヤンバルテナガコガネである。
■ 地域別の昆虫図鑑
札幌 : 北海道大学出版会, 2006.6
【RA7-H15】
札幌市周辺に住む虫約1,700種を紹介した資料。虫の写真のほか、成虫が主に見られる時期・場所、成虫の大きさ等を記している。下の画像のヒメウスバシロチョウなど、日本国内では北海道だけで見られる種類も紹介している。巻末に学名を併記した和名索引を付しており、和名から学名を調べることもできる。

◇ヒメウスバシロチョウ◇
東京 : 筑摩書房, 1988.7
【RA531-E23】
東京で観察される昆虫を季節ごとに紹介した資料。文庫本形態のコンパクトな資料であり、昆虫のカラー写真が美しい。目次から季節ごとに昆虫を調べることができるほか、巻末に和名から引ける「昆虫名索引」を付している。

◇ナミテントウ◇
新潟 : 新潟日報事業社, 1981.7
【RA7-16】
新潟県で観察される昆虫を紹介した図鑑で、上巻では268種(チョウ類97種、ガ類122種、バッタ・コオロギ類49種)を収録している。昆虫のカラー写真のほか、住み場所、からだの特徴、生活の様子に関する解説を掲載しており、巻末に和名索引を付している。

◇オオルリシジミ◇
4. 長野県昆虫図鑑 上 / 信州昆虫学会解説 ; 行田哲夫, 堀勝彦写真
長野 : 信濃毎日新聞社, 1979.7
【RA7-13】
長野県で観察される昆虫を紹介した図鑑。上巻では259種(チョウ類146種、ガ類70種、セミ類9種、バッタ類34種)を収録している。昆虫のカラー写真に簡潔な解説を付しており、巻末に和名索引がある。
浦添 : 沖縄出版, 1987.1
【RA7-29】
沖縄で見られる昆虫を種類ごとに紹介した資料。第2巻では甲虫目を紹介している。各昆虫についてカラー写真を添えて解説するほか、体長、分布、出現時期等を付記している。巻末に和名索引を付す。本書で紹介されているオキナワオオミズスマシは体長が15〜20mmにもなる日本最大のミズスマシであり、日本では徳之島以南の琉球列島に生息している。
■ 特徴ある昆虫図鑑
6. 昆虫顔面大博覧会 : 日本の昆虫たち / 海野和男著
[東京] : 人類文化社, 2001.7
【RA531-G282】
主に昆虫の顔写真のアップを掲載し、各昆虫について簡単な解説をつけた資料。巻末に和名・学名索引を付している。
7. 日本産カミキリ大図鑑 / 日本鞘翅目学会編
東京 : 講談社, 1984.11
【RA7-26】
日本産のカミキリムシ670種を取り上げた図鑑。巻頭にカミキリムシのカラー写真を掲載するほか、各カミキリムシについて学名、分布などを詳細に解説している。巻末に学名索引・和名索引がある。本書にはオオアオカミキリ、ルリボシカミキリ、ベニボシカミキリなど、様々な色のカミキリムシが掲載されている。
東京 : 昆虫文献六本脚, 2007.11
【RA7-H23】
コガネムシ科食葉群に属する7亜科104種43亜種を対象とする図鑑。カブトムシやカナブン、ハナムグリといった昆虫を取り上げ、さまざまなアングルからのカラー写真を掲載するほか、特徴や生態、分布、体長、雌雄の区別等に関する解説を加えている。下の画像のオオヒゲブトハナムグリは雌雄とも色彩変化に富む美麗種で、石垣島、西表島等に生息する。巻末に学名および和名から引ける索引を付している。

◇オオヒゲブトハナムグリ◇
◆コラム◆ 日本から世界へ −日本発世界の昆虫図鑑−
第1章では主に日本の昆虫を扱った図鑑を取り上げましたが、日本で刊行された昆虫図鑑の中には、世界の昆虫を取り上げたものもあります。
東京 : むし社, 1996.11
【RA7-G5】
世界のオサムシの97%にあたる690種の標本写真をカラーで掲載している。巻末の著者紹介によると、井村氏は産婦人科医、水沢氏はガス会社社長。世界に80万種とも言われる昆虫の研究には、アマチュア研究家が寄与するところが大きい。

◇オサムシ◇
東京 : 木曜社, 2000.10
【RA531-G292】
「G」は「ギネス」の略。世界の大型クワガタ58属409種をカラー写真で紹介しており、各種について過去に知られているオスの最大体長を付記している。例えば、フローレスキバナガノコギリクワガタのオスの最大体長は118mmに達する。
第2章 世界の昆虫図鑑
第2章では世界の昆虫を取り上げた図鑑をいくつかご紹介いたします。18世紀のヨーロッパは、生物や鉱物などの自然物を記録・収集する博物学の最盛期で、世界中の珍しい昆虫の図譜が多く描かれました。その中には、実物以上に美しいものもあります。19世紀のイギリスでは、ヴィクトリア朝期の経済的な繁栄を背景に手彩色の図集や啓蒙的な図鑑が出版されています。また20世紀初めには、ザイツの大図鑑も刊行されました。現代でも、昆虫に対する関心は変わらず、昆虫の美を追求した写真集や野外での観察を主眼とした図鑑などが様々なかたちで出版されています。
■ 18世紀の図鑑
Amstelaedami : J. Oosterwyk, 1719
【WB32-2(61)】
メーリアンは、ドイツに生まれオランダで活躍した女性昆虫・植物画家。13歳の時に養蚕業者から卵をもらい部屋で飼育をはじめたという、まさに「虫愛づる姫君」である。本書は、南米北部スリナムの昆虫と、その餌になる植物を描いた手彩色銅版画図譜。幼虫・蛹・成虫とその食草を同一画面上に描く構成は、後の昆虫画に大きな影響を与えた。
Dortmund [West Germany] : Harenberg Kommunikation, c1978
【RA7-5】
レーゼル・フォン・ローゼンホフは、18世紀ドイツを代表する昆虫画家。本書は、1740年に出版された同名書から図版のみ176点を抜き出したポケット版。昆虫だけでなく、サソリやザリガニの図もある。
京都大学理学部動物学教室所蔵『Der Insecten Belustigung』![]()
京都大学電子図書館 貴重資料画像
(上記のウェブページで、同書の画像をご覧になれます)
London : H. G. Bohn, 1842
【46-120】
ドノヴァンは、イギリスの博物学者。昆虫以外にも鳥類や魚類など数多くの美麗な図譜を残している。本書は、1800年に出版されたAn epitome of the natural history of the insects of India(インド昆虫史要説)【WF3-3】をイギリスの昆虫学者ウェストウッド(John Obadiah Westwood)が改訂した新版。
下の画像は、同書に掲載されているコーカサスオオカブト。虹色の光沢の描写が美しい。

◇コーカサスオオカブト◇
■ 19世紀以降の図鑑
London : Wm.S. Orr, 1854
【RA531-92】
Jのウェストウッドが解説を、ハンフリーズが図版を担当。ハンフリーズは、イギリスの画家で、コインや印刷技術に関する著作もある。彼は蝶よりも蛾が好きで、とくに蛾の幼虫については、本書の序文で「金や銀の飾りボタン付きのビロードの衣装」とその美しさを絶賛している。
London : G. Routledge, [1860]
【57-275】
書物の大衆化が進み、少年向けの啓蒙書も出版された。本書はクロス装彩色図版で3シリング6ペンスだが、1シリングのボード装無彩色の廉価版も刊行されていたという。
◆コラム◆ プライヤーも読んだ!?−教育博物館の蔵書−
本書の標題紙には「教育博物館印」「明治九年十二月二七日購求」と朱印があります。教育博物館は現在の国立科学博物館の前身に当たりますが、当館の源流の1つである東京図書館と明治18(1885)年に統合されたため、多くの蔵書が当館に引き継がれました。19世紀後半の各分野の基本図書のほか、英米の教科書が多く含まれていたということです。
教育博物館では、明治9(1876)年に、『日本蝶類図譜』【RA531-235(複製版)】で名高いプライヤー(Henry James Stovin Pryer)を嘱託として四国へ派遣し、標本採集を行っています。ひょっとするとイギリス人のプライヤーは本書を手に取ったことがあったかも・・・?
◇「British butterflies」の標題紙◇
Stuttgart : Verlag des Seitzschen Werkes, A. Kernen, [1909?]-1954
【RA531-A124】
ドイツのザイツ(1860-1938)によって編集された全20巻(32冊)の大著。それまでの個人による執筆から各分野の専門家が分担する体制にすることで、世界の鱗翅類を網羅する大図鑑を作り上げた。1906年から刊行が開始され、第1次大戦などによる中断を挟みながら、一部未完のまま、ザイツ死後の1954年まで続いた。日本でも「ザイツ」と言えば、この図鑑を意味するほど有名。当館ではドイツ語版は全巻、英語版The Macrolepidoptera of the world【RA531-76】は14巻までを所蔵。
◆コラム◆ ザイツ博士、箕面滝(みのおのたき)に蝶を追う
ザイツは医師でもあったのですが、青年時代に熱帯医として東洋に滞在したことがあり、日本にも幾度も訪れていたそうです。ヨーロッパ留学中に60代のザイツに面会したこともある昆虫学者の江崎悌三は「誰が箕面で始めて採集したか?」という文章の中で、明治24(1891)年にザイツが箕面で蝶の採集をしたことをもって「箕面での最初の採集家」と認定しています。
その旅程は、上海から船で神戸に上陸、鉄道に乗り神崎(現在の尼崎)で下車、そこから人力車で田んぼの間を2時間休みなく走り続けて午前8時に箕面の滝に着いたとのこと。若いときからのこの情熱が、世紀の大事業をなさしめたのかもしれません。
■ 現代の図鑑
London : Thames&Hudson, 2000
【RA7-A4】
元はフランスのカルティエ現代美術財団で開催された展示会。色鮮やかな「奇虫」の造形もさることながら、幾何学的な配列もスタイリッシュで面白い。
New York : Oxford University, 2000
【RA531-B8】
序文にある「適度に採集することが、科学的な記録と進歩に必要不可欠」という理念のもと、野外で観察するだけで種の同定を可能としたフィールド型の図鑑。見開きの左ページに分布地域と季節、右ページに双眼鏡で覗いたかのような写真を配する。
第3章 昆虫案内書と昆虫愛好家たち
第1章、第2章でご紹介したような昆虫図鑑は、プロ・アマチュアを問わず昆虫が好きな人々の地道な作業の成果と言えます。第3章ではそのような昆虫愛好家が手がけた著作物として、初心者向けの案内書(昆虫の採集法、標本製作・保存法、標本ラベルの記録法など)や、独自の視点による昆虫観察記等の作品をご紹介します。
■ 昆虫採集・標本製作等の解説書
東京 : 穴山篤太郎 1883(明治16).11
【YDM57477】 [近デジ]
日本で最初に、一般に流通した昆虫採集の案内書。版元が有隣堂という農業書専門の大手の出版社であること、明治30年頃まで販売されていたことにより、研究者だけでなく一般の人々も入手が可能であった。ただし現代まで残されている部数は極めて少ない。
「虫類ヲ捕フル事」「捕虫具ノ事」「虫類ヲ輸送スル事」等11項目の解説に「附図」を加えた構成。「附図」では、棒で木の枝を叩き裏返した傘に虫を落とす採集法など、採集と標本製作に関して15ページにわたり図解している。
東京 : 開成館 1902(明治35).12
【YDM57461】 [近デジ]
農学校対象の昆虫学教科書。トノサマバッタの身体の構造、アゲハチョウの変態など、昆虫の形態・習性を中心に記述。昆虫採集や標本については最終章で概説している。
石川千代松は日本に進化論を紹介した人物のひとりとして知られる。外国語学校の担任であった蝶研究者フェントン(M.A.Fenton)の影響で蝶や蛾の採集にのめり込んだ。新種の蝶を発見したこともある。
東京 : 東洋社 1901(明治34).5
【YDM57489】 [近デジ]
日本で最初に、「少年」対象に刊行された昆虫採集入門書。そのため用具や方法に関してだけでなく、昆虫の定義、昆虫採集の意義、採集にあたり守るべきルールなども丁寧に解説している。
三宅恒方は『天使の翅』など、随筆集も執筆している。『初学昆虫採集法』は、三宅の文才が大いに発揮された入門書と言えよう。
東京 : 博文館 1909(明治42).5
【YDM57492】 [近デジ]
昆虫の採集・飼育・標本製作の方法、用具をきめ細かく解説した書。例えば「昆虫採集法」の章では、昼夜別の採集法、春夏秋冬別の採集法、洪水時の採集法のように、項目が多様であることが特徴。子どもも大人も学べるように、本文にルビをふる、挿絵が多いなどの配慮がされている。
名和靖は「名和昆虫研究所」を設立し、害虫予防の方法の普及につとめた昆虫学者。同研究所の付属施設で大正8年4月に開館した「名和昆虫博物館」は、日本最古の昆虫専門博物館である。木村定次郎は児童文学者で、『教育お伽噺』【YDM102970】といった児童書も執筆している。
鹿児島 : 南方新社 2005.8
【RA7-H10】
鹿児島県を中心とし、九州、沖縄の昆虫を主に取り上げた昆虫図鑑。昆虫採集、飼育、標本製作法について、写真やイラストを交えて解説している。
(明治時代の採集法、標本製作法の手順の一部が現代にも引き継がれていることを示すために、現代の昆虫採集案内書のひとつとして、ご紹介しています。)
東京 : 以文館 1912(明治45).7
【YDM301304】 [近デジ]
子どもが読み易いようルビがふられた博物採集の案内書。章ごとに「植物門」「動物門」「鉱物門」に関して解説。「動物門」の章では子どもでも採集・標本製作のやり易い生物として、昆虫やかたつむり等の小動物をとりあげている。
東京 : 金港堂 1890(明治23).12
【YDM57592】 [近デジ]
近代動物学の基礎を築いた東大教授の飯島魁による、学生を対象に書かれた解説書。「貝類」「昆虫」「蜘蛛類」「甲殻類」等の小さな生物の生態について、イラストを多く交えて解説している。
東京 : 博報堂 1906(明治39).2
【YDM57123】 [近デジ]
子どもを対象に書かれた博物採集の案内書。「植物採集」「動物(昆虫)採集」「鉱物採集」について解説。「イザやこれより明日の準備に取掛らん」とのように、読者である子どもの視点から論を進めているのが特徴。
■ 虫愛づる人々の作品集
東京 : 叢文閣 1922(大正11).10
【YD5-H-385-207】
フランスの博物学者ジャン=アンリ・ファーブル(Jean-Henri Casimir Fabre)の「昆虫記(Souvenirs entomologiques)」の初の和訳。その第1巻は一般にフンコロガシとして知られる「スカラベ・サクレ」の話から始まる。昆虫好きの読み物として有名な「昆虫記」は、ノーベル化学賞を受賞した福井謙一も少年時代に愛読書としていた。
日本初の翻訳は、社会運動家として知られる大杉栄が行った。大杉が生物学好きであったこと、学閥に属さないファーブルの生き方に共感したことが翻訳の動機である。
岐阜 : 名和昆虫研究所 1897(明治30).1
【YDM57467】 [近デジ]
名和靖が20代前半の学生のときのエピソード。祖父が育てていた薔薇に付いた虫を取り除こうと、虫の種類や性質を調べていた名和は、薔薇と虫たちが各々の生存のために絶妙なバランスを保っていることに気づく。
ある生物に変化が起きると、関わりのある他の生物も応じて変化することを一株の薔薇から導いた、現代でも古びない卓見を記した一冊である。
東京 : いそっぷ社 1998.4
【RA531-G116】
手塚治虫が描いた昆虫に関する漫画のアンソロジー。漫画「ファーブル先生の虫物語——タマコロガシのまき」や講演録「手塚治虫、昆虫を語る」などを収録。
そもそも「治虫」というペンネームは、手塚が小学生のときに『原色千種昆虫図譜』【642-163】を読み、オサムシという昆虫に感銘を受けたことが由来である。手塚は中学2年のとき、甲虫類300種を解説付きで載せた「原色甲虫図譜」を自作したほどの昆虫好きの少年であった。
[東京] : 日経BP社 2006.7
【RA531-H201】
著者が家庭用スキャナで昆虫をスキャンした画像を収録した「デジタル昆虫図鑑」。その写真は、家庭用スキャナでも「一五ミリほどのコアオハナムグリを撮ったら、毛の一本まで、きれいに写った」(同書「はじめに」から引用)という仕上がりである。
■昆虫の「スキャナ写真術」(同書pp.128-130を要約)■
スキャナのカバーを外し、ガラス面の左右に同じ高さの本などを置いて虫を置ける隙間を作る → 埃を拭き取った後、虫の背が下になるようガラス面に置く → スキャナの設定・操作 → 昆虫の画像完成。適宜、背景を加工、明度を変更
◆コラム◆ 昆虫採集グッズ
第3章の「昆虫案内書」に掲載されている、特徴あるグッズのご紹介です。
■方形捕虫網<絵(1)>■
綿布の四隅に細い麻糸を結びつけて、対角線上に十文字に木片をくっつけた捕虫網。棒で木の枝を叩き、裏返した傘に虫を落とす採集法<絵(2)>で、傘の代わりに用いる。傘でもこの採集法は可能だが、大きさを変えたいとき、方形捕虫網を自作すれば適切な大きさの網に虫を落とせる。この採集法と捕虫網は、現代でも用いられている。
◇絵(1) 方形捕虫網◇出典 : 新式昆虫標本製作法【YDM57492】(画像をクリックすると「近代デジタルライブラリー」の当該ページにとびます)

◇絵(2) 裏返した傘に虫を落とす採集法◇
出典 : 初学昆虫採集法【YDM57489】
(画像をクリックすると「近代デジタルライブラリー」の当該ページにとびます)
■蝶類包紙(三角紙)<絵(3)>■
採集して動けなくしたチョウやガを一時的に入れる紙。翅に触れないように胸を持って紙の中に入れた後、ケースに入れて持ち帰る。
作り方は簡単。ハガキほどの大きさの紙を用意し、絵(3)の「イ」「ロ」の線で折り曲げ、続いて「ハ」と「ニ」で折り、「ホ」の形にすれば完成。

◇絵(3) 蝶類包紙(三角紙)◇
出典 : 初学昆虫採集法【YDM57489】
(画像をクリックすると「近代デジタルライブラリー」の当該ページにとびます)
■採集箱<絵(4)>■
採集した昆虫を、一時的に収容する箱。絵(4)は2つの箱をちょうつがいで接合した形。外側の左右に各1つの環をつけ、長い紐を結びつけて肩にかけられるようにしている。箱の材質は薄い銅版で、内部は「畳表と紙」または「コルク」敷きにして針を刺せるようにしている。

◇絵(4) 採集箱◇
出典 : 新式昆虫標本製作法【YDM57492】
(画像をクリックすると「近代デジタルライブラリー」の当該ページにとびます)
主要参考文献
【第1章】
◆図書◆
福岡 : 九州大学出版会 2000.11
【RA531-G223】
日本の昆虫標本商の歴史 : 戦前編 / 葛信彦〔著〕
東京 : オフィス・カツラ 2001.1
【RA531-G293】
◆雑誌記事◆
国立科学博物館ニュース 第373号 1986.4.18 pp.14-15
【Z21-420】
◆ウェブサイト◆
琉球文化アーカイブ沖縄天然記念物マップ![]()
沖縄県教育委員会
日本昆虫学会ホームページ![]()
【第2章】
◆図書◆
東京 : 平凡社 1991.8
【RA6-50】
江崎悌三著作集 第1〜3巻
東京 : 思索社 1984.8〜12
【RA411-121】
昆虫採集の魅惑 / 川村俊一著
東京 : 光文社 2002.7
【RA531-G297】
人と蔵書と蔵書印 : 国立国会図書館所蔵本から / 国立国会図書館著
東京 : 雄松堂出版 2002.10
【UM57-H2】
◆雑誌記事◆
季刊自然科学と博物館 44(3) [1977] pp.97-144
【Z14-213】
昆虫学のあゆみ--西洋編 / 小西正泰
インセクタリゥム 37(10) (通号 441) [2000.10]
【Z18-24】
【第3章】
◆図書◆
東京 : 雄山閣出版1995.4
【GK116-E45】
虫の日本史 / 奥本大三郎監修
東京 : 新人物往来社 1990.4
【RA531-E82】
虫の博物誌 / 小西正泰著
東京 : 朝日新聞社 1993.12
【RA531-E236】
虫の文化誌 / 小西正泰著
東京 : 朝日新聞社 2005.6
【RA531-H164】
稀本あれこれ : 国立国会図書館の蔵書から
東京 : 出版ニュース社 1994.5
【UP72-E27】
◆雑誌記事◆
インセクタリゥム 37巻1号 2000.1 p.14-19
【Z18-24】
石川千代松における進化論と社会 / 富澤英治
生物学史研究 20巻 1971.7 pp.10-17
【Z18-50】











