昭和11年度予算編成方針

昭和10年6月25日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 第3巻 大蔵省昭和財政史編集室 東洋経済新報社 1975.9 pp.616-617 当館請求記号:342.1-O635s

我国財政ノ運用状況ハ今後相当ノ期間毎年多額ノ公債発行ヲ必要トスル形勢ナルヲ以テ各省ハ此ノ非常時財政ノ情態ニ鑑ミ所管政務ノ立場ニ偏セス全面的ニ事物ノ先後緩急ヲ商量シ依テ以テ予算ノ編成ニ一致協力シ公債発行ノ増加ヲ避クルノ緊切ナルヲ念トシ努メテ左記ノ方針ニ準拠スルコト

一、各省ハ財政ノ全局ヲ稽ヘ国務ノ緩急ヲ較量スルニ十分ナル考慮ヲ払ヒ予算編成ニ協力スルコト
二、昭和十一年度予算ニ於テ新ニ発行スヘキ公債ノ額ハ昭和十年度予算ニ於テ新ニ発行スヘキ公債ノ額ヨリ昭和十一年度予算ニ於ケル歳入ノ自然増収見込額ヲ目安卜シテ之カ減少ヲ図ルコト
三、近来特別会計ニハ歳入ノ状況良好ニシテ経理上比較的余裕ヲ存シ為ニ一般会計トノ間ニ新規経費ノ計上等ニ付テモ彼此均衡ヲ失セントスルモノアルニ顧ミ、一般及特別会計相互間ノ調整ニ関シ適当ナル方策ヲ講スルコト
四、各省新規経費ノ要求ハ真ニ緊急已ムヲ得サル事項ノミニ限リ且其ノ金顛ヲ出来得ル限リ少額ニ止ムルコト
各省ハ既定経費ノ節約ヲ為スト共ニ収入アルモノハ其ノ増加ヲ図リ新規経費ノ要求ハ出来得ル限リ之ニ其ノ財源ヲ求ムルコト
臨時部ノ既定経費ニシテ予メ年限ヲ附セサルモノニ付テハ特ニ此ノ際再検討ヲ遂クルコト
各特別会計ノ予算ニ付テモ当該会計ノ状況ニ応シ大体右ニ準スルコト
五、各省歳入歳出概算ハ昭和十年七月三十一日限リ各特別会計ノ概計ハ昭和十年八月二十日限リ之ヲ提出スルコト