昭和11年度歳入歳出実行予算編成方針ニ関スル件

昭和11年2月4日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 第3巻 大蔵省昭和財政史編集室 東洋経済新報社 1975.9 pp.623-624 当館請求記号:342.1-O635s

第六十八回帝国議会ニ提出セル昭和十一年度総予算ハ衆議院解散ノ結果不成立ニ終リ従テ憲法第七十一条ノ規定ニ依リ前年度予算ヲ施行スル旨勅令ヲ以テ公布可相成自然右施行予算ノ範囲内ニ於テ実行予算ノ編成ヲ要スル次第ニ有之候ニ付大体左記方針ニ依リ之カ実行ヲ期スルコトト致度
歳  入
一、歳入施行予算ハ総テ前年度歳入予算ノ各款項金額ニ依ルモ実行予算ニ於テハ以下二項ニ依ルモノヲ除クノ外原則トシテ提出予算ノ各款項金額ニ依ルコト
二、法律ノ制定改廃ニ伴フ歳入ノ増加ハ実行予算ニ於テハ之ヲ見込マス実行予算ニ追加シ又ハ追加予算ニ計上スルコト
三、歳出ノ計上ニ伴フ歳入ノ増加ニシテ当該予算ニ於テハ之ヲ見込マス当該歳出ノ計上方法等ヲ斟酌シ適宜実行予算ニ追加シ又ハ追加予算ニ計上スルコト
歳  出
四、歳出施行予算ハ前年度歳出予算ノ各款項金額ニ依ルコト但シ継続費ニシテ昭和十一年度既定年割額アルモノハ該年割額其ノ前年度ニ於テ終了シタルモノハ該前年度年割額ニ依ルコト
五、前項施行予算額中昭和十一年度提出予算ニ於テ減額ニ係ル金額ハ実行予算ニ於テ之ヲ計上セサルコト但シ法律ノ制定改廃ニ伴フモノニシテ該法律ノ不成立ニ依リ又ハ予算ノ組替若ハ新規要求ニ伴フモノニシテ後ニ掲クル予算ノ実行ノ如何ニ依リ直ニ其ノ減額ヲ実行スルコト能ハサルモノハ此ノ限ニ在ラサルコト
六、提出予算中増加要求額ハ当然増加ニ属スルモノノ外ハ総テ新規事項トシテ更メテ詮議スルコト
七、当然増加及前項ニ依ル詮議ノ結果増加ヲ要スル経費ニシテ施行予算ノ範囲内ニ於テ支弁シ得ルモノハ之ヲ実行予算ニ計上シ然ラサルモノハ追加予算トシテ要求スルコト施行予算ノ範囲内ニ於テ該経費ノ全部ヲ支弁シ能ハサルモノハ追加予算ノ成立迄コレカ使用ヲ延期スルコト
八、実行予算(追加予算ヲ含ム)ニ計上スヘキ歳入歳出ノ事項金額ニ付テハ各省ノ要求ニ基キ大蔵省ニ於テ之カ査定案ヲ調製シ之ヲ閣議ニ提出スルコト
九、前年度予算ニ於テ翌年度ニ繰越使用ノ明許ヲ得タルモノハ昭和十一年度ノ支出残額ヲ翌年度ニ繰越使用シ得ルコト尚新規ニ繰越使用ノ明許ヲ要スルモノニ付テハ追加予算ニ於テ詮議スルコト
一〇、各特別会計ニ付テモ前各項ニ準シ実行ヲ期スルコト
大蔵省証券
一一、会計法第六条ノ規定ニ拠ル大蔵省証券及借入金ノ最高額ハ前年度予算ニ於テ定メラレタル制限ニ依ルコト
翌年度ニ亘ル契約金額
一二、会計法第十一条ノ規定ニ拠リ翌年度ニ亘ル契約ヲ為スコトヲ得ヘキ金額ハ前年度予算ニ定メラレタル制限ニ依ルコト
右至急閣議ヲ請フ
昭和十一年二月三日
大蔵大臣 高橋 是清
内閣総理大臣 岡田 啓介殿