貯蓄奨励方針決定

昭和13年4月19日 閣議申合

収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 p.254 当館請求記号:338.21-N684n

今後発行せらるべき巨額なる国債の消化を図り且つ必要なる生産力拡充資金の供給を円滑ならしむる為めには此際資本の蓄積を図るの要あり、又将来支出せらるべき巨額なる政府資金の国内撒布に依り生ずる臨時的国民所得が消費の増加に振向けらるゝに於ては物資の不足、物価の騰貴を招来し、其経済界に及ばす悪影響至大にして延ては軍需並に国民生活に支障を生ずる虞大なりと認めらるゝを以て此際国民をして出来得る限り貯蓄に努めしむるは最も緊要なり、依て政府は大体左記方針に依り国民貯蓄奨励に努むるものとす。
一、国民一般に従来行ひ来りたる程度の貯蓄の外、事変前に比し所得の増加したる者に対しては従来に比し其生計を膨脹せしむることなく、原則としては其増加所得の全部を出来得る限り貯蓄に向けしむること、右の外国民全般に於ても出来得る限り貯蓄を増加すること。
二、貯蓄の方法は確実なるものならば如何なる方法に依らしむるも可なること。
三、各鍾金融機関に集積する貯蓄額並に国債公社債等に対する直接投資額として大体今後一年間に増加を要する国民貯蓄の額は約八十億円程度を目標とすること、但し政府資金撒布其他経済状況等に依り適当の斟酌を加ふること。
四、貯蓄の大増加を要する理由並に其経済界に及ぼす影響等に付国民全般に十分徹底する様説明に努め以て国民の心よりの理解に基く協力を促進すること。