行政機構及び公務員制度並びにその運営の根本的改革に関する件

昭和21年9月6日 閣議決定

収載資料:行政管理庁史 行政管理庁史編集委員会編 行政管理庁 1984.6 pp.1036-1037 当館請求記号:AZ-333-23

第1 方針
我国現下の行政機構及び公務員制度並びにその運営は明治初年以来多年の伝統の上に樹立せられ来ったものであって、今や、新日本を建設せんとするに当り、又は,改正憲法の十全的な運営を期せんとする上に於て完全なる民主化の線に副った根本的検討と改革とが要請せられている。
先に、内閣に設置せられた臨時法制調査会に於ては、目下、改正憲法施行に伴い必要な各種法制の整備に関し審議研究を進め、政府はこれが答申に基き、成文化した後、次期の帝国議会に法案を提出する予定の下に、内閣法、中央行政官庁法、地方行政官庁法、官吏法等、行政機構及び公務員制度に付いても、鋭意研究中ではあるが、改正憲法施行迄の間に存する期間は僅少であって、その間に之が全面的且つ根本的改革を立案実施することは極めて困難であるのみならず、かかる全面的且つ根本的の改革を断行するには、假すに相当の期間を以てし、充分科学的且つ慎重周到に調査立案がなされなくてはならぬ。依って、臨時法制調査会の答申に基いて次期議会に提出すべき行政機構及び公務員制度の改正は、改正憲法施行に伴い差当り必要とせられる諸点とし、之が根本的改革は、左の要領に依り特別の機構の下に、これが研究調査及び立案に当り今後約1年を期し、改正憲法下に於ける行政機構及び公務員制度並びにその運営に付全面的且つ根本的改革の実施を断行し、その徹底的民主化を図ることとしたい。
第2 要領
1 内閣に、臨時に、行政調査部(仮称)を置く。行政調査部は行政機構及び公務員制度並びにその運営の全面的且つ根本的改革に関し必要なる事項の研究及び調査並びに立案を掌る。
2 行政調査部に左の職員を置く。
部長
主幹
部員
主事
内閣に臨時に内閣事務官1級専任1人、2級専任1人、3級専人1人を置き、行政調査部に属せしめる。
3 部長は国務大臣を以て之に充てる。
主幹は法制局長官を以て之に充てる。
部員は学識経験者及び関係各庁官公吏並びに前号の内閣事務官(主事たる者を除く)を以て之に充て民間の達識者を充分活用することとする。研究及び調査並びに立案を掌る。主事は概ね前号の内閣事務官中若干人を以て之に充てる。庶務を整理する。
4 行政調査部に顧問を置く。両院議員その他民間の達識者を以て之に充てる。
5 行政調査部の所掌事項は概ね左の如くである。
(1)行政機構
(イ)内閣制、中央行政機構及び地方行政機構に関する内外の制度並びにその運営の比較研究及び資料蒐集並びに立案
(ロ)地方自治制度及びその運営に関する内外の制度及びその運営に関する比較研究及び資料蒐集並びに立案等
(2)公務員制度
(イ)官公吏等公務員の本質に関する研究調査
(ロ)官公吏等公務員の任用・試験・分限、服務、研修、待遇、給与等の内外の制度及びその運営に関する比較研究及び資料蒐集並びに立案等
(3)行政運営
(イ)行政能率の研究調査
(ロ)官公署事務の整理刷新及びその限界に関する研究調査並びに立案
(ハ)官公署分課に関する研究調査並びに立案
(ニ)官公署執務方法に関する研究調査並びに立案
(ホ)公務従事者の考科制度に関する研究調査並びに立案等
6 行政調査部の業務は今後約1ヶ年を以て完了することとし、業務状況は、これを定期に、内閣及び帝国議会に報告する。
7 行政調査部は、GHQ側と緊密なる連絡を取り、アメリカの行政制度調査顧問団の勧告を充分活用して研究、調査、立案に当り出来得れば我国よりもアメリカその他の調査員の派遣の承認を要請する。
8 右の結果は、之を集大成し、明年秋頃迄に国会の議決を経て確定し、実施することとする。
9 右に伴い必要な予算的措置を講ずる。
(備考)
(1)アメリカの行政制度調査顧問団の滞在中は、行政調査部に於て終連と連絡の上、顧問団と折衝に当ること。
(2)GHQ側の要望もあり、今後日本政府の行政機構及び公務員制度の改正に付GHQ側と折衝を為す場合には、行政調査部に於て終連と連絡の上、これをなすものとし、各庁区々にこれをなさざること。