企業再建整備法の整備計画についての経理に関する認可基準

昭和22年9月23日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.848-850 当館請求記号:DG15-19

企業再建整備法による整備計画のうちで経理に関する事項については左の一般方針に基き具体的事案について実情に即して認可を行うものとする。
一、存続、解散及び資産の処分
(イ)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独占禁止法という。)に規定する持株会社に該当する会社は、同法の趣旨に従い解散すること。但し、有価証券以外の資産を以て第二会社を設立することは認める。
(ロ)主たる事業を外国(外地を含む。)で営んでいた会社は、原則として解散するを適当と認めるが、当該会社の内地に在る資産を以て事業を継続することができる場合には、それが日本の平時経済に寄与するものである限り、その資産を以て第二会社を設立することを認める。
(ハ)前二号に掲げる場合を除くの外、会社の事業が経理的に不健全であると明らかに認められる場合を除いて、存続するか、解散するかは、整備計画の申請通りこれを認めること。
(ニ)解散又は資産の処分に当つては、その結果他の企業について独占を生じないように適当な措置が考慮せられなければならない。
(ホ)資産の一部を処分し、又は資産の一部を以て第二会社を設立する場合には、存続する会社は残余の資産によつて独立して堅実に事業を営み得るだけの資産内容を有するものたらしめること。
二、資本構成
特別経理会社又はその第二会社の資本金額については、固定資産と通常固定すべき運転資金の合計額を下らない額を標準として、できるだけ資本金額を調整すること。
三、資本の増加
(イ)新株は全て全額払込の株式とすること。新株の発行は商法の規定に従つて行い、且つ十分経理的に満足し得る様にすること。
(ロ)無議決権株の発行は、株主又は債権者である金融機関に対する割当の場合を除いては、これを認めない。
資本構成を是正する為債務の資本への振替等による資本増加を必要とする場合であつても、金融機関が特別損失を負担しない旧債権の債権者である場合には、新株の割当はこれを行わず、已むを得ない場合には寧ろ当該債務を社債に更改する方法をとること。
無議決権株は、資本の四分の一を超えないようにし、且つこれを発行する場合には発行を必要とする理由を開示させること。
無議決権株は、配当及び残余財産に対する優先の株式とすること。
(ハ)旧債権が特別損失を負担しない場合には、新株の割当については左の順位によること。
(一)個人又は金融機関である旧株主。現在の持株数に比例して割当てるものとすること。但し、金融機関については、独占禁止法の規定によつて保有を認められる株式に限ること。
(二)従業員。一定の限度まで前号に掲げる者の引受のない株式を割当てること。
(三)地方居住者。前二号に掲げる者の引受のない株式を割当てること。
(四)一般公衆。同右
(ニ)旧債権が特別損失を負担する場合には、個人又は金融機関である旧株主と共に、個人又は金融機関である旧債権者に対しても新株の割当を認めることとし、それ以外の株式は(ハ)の定ある順位により割当てること。
(ホ)(ハ)及び(ニ)の場合において金融機関以外の会社である旧株主又は旧債権者には、新株の割当は行わないが、そのかわりとして、(ハ)の(一)乃至(四)に掲げる者に対して新株が割当てられ額面以上の価額を以て引受が行われた場合には、右の債権者及び株主に対してそのプレミアムの交付を特別経理株式会社に対して請求する事ができるという方法により含み益を享受する事を認める事。
(註)この為必要な法律の改正案を国会に提出する。
尚この場合におけるかかるプレミアムの額は、妥当なものであることを要し、且つ新株発行後六十日以後に請求しなければならない。又旧債権者については、特別損失負担による債権の消滅額を超えることができない。
(ヘ)金融機関以外の会社である旧株主又は、旧債権者については、前号に掲げる方法によるの外、他の旧株主又は旧債権者と同一の比率で計算した新株の引受をすることができる権利を証券処理調整協議会を通じ、又は直接に他の者に有償譲渡をすることによつても含み益を享受するを認める事。(この場合においては譲渡を受けた者は自己の名前で新株の引受をすることとなる。)
尚金融機関や個人である旧株主又は旧債権者も、新株の引受が困難な場合には(ホ)又は(ヘ)の方法によることを妨げない。
(ト)金融機関に対しては、(ハ)又は(ニ)の方針に従つて独占禁止法の規定によつて保有を認められる限度までは新株の割当を認めるが、これを超える株式については、(ホ)又は(ヘ)の方法によること。
四、合併
(イ)合併を認めるか否かは、独占禁止法に基いて、これを定めること。営業の全部若しくは一部の譲受、他の会社の営業全部の賃借、他の会社の経営の受任又は他の会社の営業の損益全部を共通にする契約についても同様である。
(ロ)合併に際しては、利害関係人の権利の公正なる取扱に留意すること。
五、第二会社
(イ)第二会社は旧会社に対し旧会社から出資を受けた純資産の対価として株式を与え、旧会社は当該株式を処分するを原則とすること。旧会社は現物出資によらなかつた株式をも総て引受けることが認められる。
(ロ)新旧勘定併合後支払不能となり、又は支払不能となる虞のある場合には、第二会社を設立することを適当とすること。
(ハ)新旧勘定併合の後支払能力のある会社は、他の原則の許す限り、単に新旧勘定を併合することにより其の儘存続することを認めること。
六、役員又は清算人
存続会社若しくは第二会社の役員又は解散会社の清算人の選任については、特別管理人が債権者側の立場をも考慮して、これを定めること。