租税収入確保に関する措置

昭和22年10月28日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 p.1114 当館請求記号:DG15-19

本年度租税及び印紙収入の当初予算六九五億円に加え、今回更に追加予算として六三七億余円の租税収入を計上し、合計千三百三十余億円を本年度中に徴収することとなつたが、今日の税務行政は、闇取引の横行、国民経済組織の激変、納税者数の激増に伴い、課税標準の調査が著しく困難になるとともに、徴税上の困難が増しており、本年度申告納税分所得税の申告済額は当初予算の二割六分にすぎず、滞納税額も亦七月末には約百億円、百三十一万件に達しており、このままにて推移せんか、租税収入の相当部分は単なる机上の空文に終る虞れかある。而して従来の未申告額を調査し、滞納を整理し更に右の追加予算計上額を徴税するに当たっては幾多の抵抗と摩擦が予想されるので、これらの困難を克服し、所定の歳入を確保するためには、少なくとも左の諸措置を急速に実施しなければならない。
(一)租税危機突破運動の展開
全国民に、敗戦後のわが国民としては、荒廃に帰した国土の再建整備、敗戦に伴う義務の履行等のため、生活上、事業上の諸困難を克服しつつ旧に倍する租税負担を負わねばならぬことを理解せしめるとともに、進んで誠実な申告納税を励行せしめるために、強力な租税危機突破のための国民運動を興すこと。
このためには、国会をはじめ、政府各機関、民間諸有志の積極的協力を得ること。
(二)税務官署の執務態勢の整備
(イ)税務官署としては、大いに官紀を振粛して事務を刷新し、総力を挙げて滞納整理、間接税の犯則検査、課税標準の調査、未申告分の更正決定に当たるとともに、異議申し立ての迅速なる処理を行ふこと。
(ロ)直接税についても悪質な脱税者については、罰則を適用するとともにこれを社会に公表すること。
(ハ)間接税の犯則検査、直接税の課税標準の調査及び滞納処分に当たっては、税務官署、税務職員の保護につき万全を期すること。
(ニ)税務職員の人員については、十月十四日閣議決定(昭和二十二年度予算の節約等について)の二、第三項により、相当程度現員を超えて採用しなければならぬか、極力配置転換等によるよう努力すること。
(ホ)国税の調査及び検査並びに滞納整理に従事する場合には、その職責に応ずる国税の調査及び検査手当並びに滞納整理手当を支給するとともに危険手当及び現金取扱手当を設けること。
(ヘ)当面税務職員の事務が著しく加重するので、特に多忙を極める期間税務職員に労務加配米を支給すること。

編注 閣議決定にあたり、「(ニ)(ヘ)の点は留保する」のただし書きが付された