電力危機突破対策要綱

昭和22年11月14日 閣議決定

収載資料:内閣制度九十年資料集 内閣官房編 大蔵省印刷局 1976.3 pp.1035-1036 当館請求記号:AZ-332-6

第一 方針
先に衆議院において採択された電力危機突破に関する決議の趣旨に鑑み、この際電力施設の急速な補修、復旧、整備、火力発電用石炭の確保、自家用発電設備の動員等の諸方策を推進し、電力供給力の確保について強力な措置を講ずると共に需要の側についても極力、これが使用の合理化、消費規正の励行等を図ることゝしそのため官民協力して一大国民運動を展開し電力の合理的使用並びに消費規正の励行を勧奨する。
尚電力面に対する過当な負担を避けるため家庭用燃料の総合的確保対策を強力に推進する。
第二 要領
一 電気事業の優先
電気事業用資材、資金の割当及びこれが入手については石炭についで優先的に取扱う。
尚資金についてはその融資順位を甲(一)にする。
労務者用の物資についてはその供給力の範囲内で優先確保を図る。
二 電力供給力の増強
(一) 電力供給力の増強策としては特に来るべき冬季渇水期に対処して被災害発電所の復旧、能力低下発電所の補修等の繰り上げ実施を行う。
(参考)
発電設備の復旧整備計画(二十三年一月末完成目標)
(表省略)

(二) 供給力の増強は火力発電用石炭の増配に俟つこと極めて大である実情に照し本年下半期における予定割当量一四一万瓲は少くともこれを確保すると共に特に適正炭の配当に留意する。
(三) 自家用火力発電設備の動員については九州及び中国において現に一部実施中であるが、更に冬季における電力需給緩和のため左記各項の措置を講じ、これが動員の範囲を拡大する。
(イ) 所要石炭はこれを確保する。
(ロ) 当該自家用火力発電施設者に生ずる経費の増加については政府において補助する措置を講ずる。
三 電力需給の合理化
(一) 電力の供給を合理化するため積算電力計、電流制限器及び変圧器焼損防止器の増産と取付による電力擅用の防遏並に配電施設の整備による便乗負荷の減少に努める。
(参考)
積算電力計、電流制限器及び変圧器焼損防止器増産計画
(表省略)

(二) 電力の使用を合理化するため広く国民に電力危機の実相とその重大なる影響を周知徹底せしめ、電力使用の合理化を勧奨する。
四 電力の危機突破国民運動
(一) 本要綱の目的を達成するため官民協力して一大国民運動を展開するものとし、政府は本運動に必要なる経費について予算的措置を講ずる。
(二) 国民運動は経済復興会議を中核として電力自制会等の地域的協力機関を整備し、強力に展開する。
政府は国会の協力を求めてこれを強力に支援するものとしこれがため商工省内に電力危機突破対策本部を設置する。
(三) 国民運動としては次の各項を実施する。
(イ) 電力消費規正の励行と電力の擅用防止
(ロ) 電力使用合理化の指導
(ハ) 講演会又は展覧会の開催
(ニ) ポスター、パンフレットの配布
(ホ) ラジオ、小学生を通ずる宣伝等