昭和24年度貯蓄運動方策要綱

昭和24年4月12日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.396-397 当館請求記号:DG15-19

経済の終局的安定を図り、徹底的にインフレーションを終熄せしめ、更に豊かなる経済的発展を遂げるためには、国民自らの強烈な自主的精神と耐乏生活に徹した努力により、貯蓄の増強を図り、資金を蓄積することが急務である。
よって、昭和二十四年度においては、この要綱により、全国民一致の協力の下に貯蓄運動を一層強力に展開し、経済の安定と自立に資するものとする。

第一、一般預金増加目標額
年間二、五〇〇億円とする。

第二、方策
一、現段階における貯蓄の意義徹底と耐乏生活の提唱
(一)経済安定九原則の目途とする我国経済の安定及び自立のためには、通貨の安定と資金の蓄積を急務とし、このため貯蓄の実践が不可欠である所以の理解徹底を図ること。
(二)財政の真の均衡化により、生産増強輸出振興等のため必要な資金はすべて貯蓄の増強による蓄積資金による以外に途なき所以の理解徹底に努めること。
(三)国際社会における信用を得るためには、通貨を安定し、為替レートを維持することを要件とし、貯蓄の増強が絶対に必要な所以を強調すること。
(四)経済安定九原則は、通貨措置等を予想するものでなく、あくまで健全な通貨政策の下に真の経済安定を図るものであることを解明すること。
(五)今後の貯蓄の源泉は専ら国民の救国の真情に発する勤労意欲の向上と耐乏生活の実践によって生み出されるものであることを強調するとともに、今後の経済事情は、特に個人生活においても計画的な各種の準備貯蓄を必要とすることを啓蒙すること。
二、貯蓄推進の施策事項
(一)貯蓄組合の結成、充実を強力に推進し、末端の貯蓄実践を促進すること。
(二)貯蓄増加目標額の達成を期するため、都道府県別及び金融機関別の貯蓄増加目標額のほか、多角的に自主目標額の設定を指導すること。
(三)階層、季節に応じて、所得源泉の発生乃至は資金の移動等を科学的に追及捕捉して貯蓄勧奨の合理化に意を用いること。
(四)教育機関その他各種団体を通ずる等により、広く経済自立促進耐乏生活の実行を促すこと。
(五)貯蓄実践模範地区の一層の強化を図ると共に、これを好範例として各地方における貯蓄実践の刺戟とすること。
(六)貯蓄の増強に資するため、預貯金等の優遇を考慮し、課税上の取扱に工夫を加えること。
(七)割増金附定期預金を含む固定性預金の吸収に工夫を加え、現下喫緊とする長期資金の供給に即応せしめること。
(八)納税準備預金制度の普及に努め、貯蓄と納税の併進に資せしめること。
(九)貯蓄増強の一環として、健実な証券投資を勧奨すること。
(十)貯蓄運動の趣旨の末端までの浸透のため、特に中央地方を通じ、行政機関の積極的な活動を図ること。
(十一)金融機関は計画的且つ効率的な貯蓄吸収方途を講ずること。
(十二)金融機関等における貯蓄奨励上の勤労強化に対し、必要物資の特配を考慮し、その遺憾ない活動を期すること。
(十三)貯蓄の奨励に功績顕著な者を表彰し、気運の醸成を図ること。