主要食糧配給制度強化に関する措置要領

昭和24年5月19日 閣議決定

収載資料:食糧管理史 V 制度篇 各論(上) 食糧庁食糧管理史編纂室・統計研究会食糧管理史研究会編 統計研究会 1958 pp.661-664 当館請求記号:611.31-Sy9576s-T

三月三日付連合最高司令部より日本政府宛発せられた「食糧配給制度強化に関する措置」に関する覚書に基き、主要食糧の配給制度強化のため次の措置をとる。
一 人口の区分に関する措置
(一)生産世帯、準生産世帯及び消費世帯の区分の基準を別紙の通り明確にする。
(二)都道府県知事は総理庁統計局の昭和二十三年八月一日現在の常住人口調査を基礎とし食糧事務所長と連絡して現行の食糧管理台帳に登録せられ且一般消費世帯として取扱われている世帯に対する一般用主要食糧購入通帳(以下通帳という。)を農家用通帳に切り換え、農家人口に繰り入れる措置を推進する。この措置は、六月末日迄に完了するものとし、都道府県知事は、毎月その結果を農林省に報告するものとする。
(三)一定期日(本年七月一日)において食糧管理法第十三条に基き都道府県知事をして調査表により生産世帯、準生産世帯の調査を行わしめる。
都道府県知事は、前項の調査を市町村長に委任することができる。
食糧検査官は、右の調査に協力するものとする。
(四)市町村長は、前号の調査に基き配給台帳に各世帯の区分を記入し、その区分に従い夫々特定の通帳(農家通帳、準農家通帳若しくは一般消費者通帳)を交付するものとする。
(五)準農家通帳を交付せられた世帯に対しては別紙により一定量の配給差引を行うものとする。
二 主要食糧の配給計画割当に関する法制的措置
主要食糧の配給計画並びにその配給を適正に行うため、食糧管理関係法規につき都道府県知事、市町村長及び食糧配給公団の主要食糧配給計画の実施に対する監督の徹底を期するため必要な改正を行う。
三 農家配給に対する措置
農家配給については、一層その適正を期するため左の措置をとる。
(一)市町村長が一般消費者の増加の形式において農家配給の増加を計ることを抑止するため食糧管理台帳に登録された世帯に対し一般消費者通帳を発給することない様指示すると共に市町村長の農家用通帳の交付に際しては、食糧配給公団の当該市町村に於ける責任者の検印を押なつせしめるものとする。
(二)配給が配給割当計画を超過する虞れある場合は必ず事前に市町村長は、都道府県知事に、都道府県知事は、農林省にその増額の申請を為すものとする。
市町村長が、この増額の申請を為さない場合は食糧配給公団の当該地域の責任者は、公団支局を通じ配給割当計画の増額の要ある旨を知事宛具申すべきものとする。
(三)農家用の配給実績が結果に於て配給割当計画を超過した場合においては、その理由及び今後の対策につき当該市町村長及び都道府県知事より報告書を提出せしめ、要すれば、その実体を調査し、その是正につき指導監督を行う。
(四)定期的に農家用通帳を回収し、市町村、食糧検査官、食糧配給公団三者立会の上完全保有農家及び一部保有農家に対し不必要な配給が実施されているか否か、又新穀喰附期以降において通帳が未回収のまま放置されているか否かを精査せしめる。
四 農林省の機構に関する措置
主要食糧の配給計画を適正に実施すると共にその実施状況を審査監督するため、食糧管理行政機構に必要な改正を行う。
五 不正受配の撲滅のための措置
(一)警察は、検察庁、経済調査庁及び農林省、都道府県庁その他関係機関と、緊密なる連絡のもとに一般消費者及び農家の不正受配(主要食糧購入通帳の不正使用、二重登録、不実申告、届出の懈怠等)の絶滅を期し全国的に一斉取締をする。
(二)経済調査庁、警察は、農林省その他の関係機関と緊密な連絡のもとに主として工場、事業場等における労務加配食糧の配給状況を調査する。
(三)外国人の、不正受配防止については、外国人登録証明書と通帳との照合を行い、照合がなされない者には必要により配給停止の措置を講ずる。
(四)新聞、ラジオ等を通じ不正受配絶滅のため弘報措置を講ずる。
六 本施策全般の総合連絡調整については、中央に於ては農林大臣、地方においては都道府県知事これにあたるものとし、その運営に当つては、必要に応じ経済調査委員会を活用する等、関係各庁の緊密な連絡調整に遺憾なきを期するものとする。

生産世帯準生産世帯及び消費世帯区分基準
一 区分の基準
(一)生産世帯
(1)畑作のみの生産世帯は、作付延面積五畝以上(北海道一反以上)のもの
(2)田作又は田畑兼作の生産世帯は、作付延面積三畝以上(北海道五畝以上)のもの
(二)準生産世帯
(1)畑作のみの生産世帯は、作付延面積五畝未満三畝以上(北海道は一反未満三畝以上)のもの
(2)田作のみの生産世帯又は田畑兼作の生産世帯は、作付延面積三畝未満二畝以上(北海道は五畝未満三畝以上)のもの
なお学校、試験場、会社等の如く団体として主要食糧を生産しているものについては特殊生産世帯として別箇の取扱を為すものとする。
二 区分の時期
前号の区分は、原則として冬作主要食糧の収穫面積及び夏作主要食糧の作付予定届がほぽ確定する期日に於て為すものとする。

準生産世帯配給差引取扱要領
生産世帯に対しては、市町村長並びに食糧配給公団は、左の取扱を為すものとする。
一、配給差引数量
配給差引数量は冬作(麦、春蒔馬鈴しよその他の冬作雑穀)水稲及び夏作別主要食糧耕作面積を基準とし、左の数量を標準として都道府県知事の指示する数量とする。
(一)水稲のみを作る準生産世帯
水稲耕作面積一畝につき内地一八瓩(精米換算以下同じ。)北海道十五瓩を標準とする。
(二)水稲を作らない畑作の準生産世帯
夏作、冬作夫々一畝につき内地十二瓩、北海道八瓩を標準とする。
(三)水稲と畑作物を兼作するものについては、(一)及び(二)の標準による。
二、配給差引期間
前号に基き市町村長の各世帯別に定める配給差引量は、収穫時期より原則として三ケ月に分ち、平均的にその世帯に対する配給量から差し引くものとする。
三、配給差引の取扱
市町村は、準生産世帯別に、収穫時期に配給差引量を決定し、これを準生産者通帳に朱書を以て記入すると共に食糧配給公団に通知する。食糧配給公団は、右により適確に配給差引を実施するものとする。