昭和25年度予算編成方針

昭和24年8月6日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.174 当館請求記号:210.76-Si569

昭和25年度予算編成に際しては、総合予算の真の均衡をあくまで堅持し、既にその緒についた経済安定を確保するとともに、経済基盤の充実と輸出貿易の振興とを基軸として、経済の合理的かつ自主的運営態勢を推進することを建前とし、左記基本方針によって処理する。
1.総合予算の真の均衡と財政規模の縮減
一般及び特別会計、地方並に政府関係諸機関を通じて厳に収支の均衡を確保し、財政面よりするインフレの再発を防ぐとともに、極力財政規模の縮減を図り、財政の国民経済に対する干与を最少限に制約する。これがため
(1)一般会計歳出総額を合理的に改正せられた税制に基く租税収入及びその他の普通歳入の範囲内に止めると共に企業会計の収支を一層合理化する。
(2)行政機構改変後における効率の調査等にもとづき、更に一層権限の合理的調整を行い、事務を簡素化する。
(3)従来実施にかかる既定の経費についても、今後の事態に照して根本的に再検討を加え、社会経済上緊急止むを得ない新規の経費の財源を捻出し、標準予算の範囲内において最も効率的な国政の運用をはかる。
2.価格調整費の削減と統制の改廃
(1)内外の物価情勢に即応しつつ価格調整補給金を大幅に削減し、企業の自主化を促進する。
(2)主食輸入物資その他需給の逼迫している最少限度の物資を除き、生産配給及び価格に関する統制を大幅に撤廃又は緩和すると共に、とくに公団その他統制機構を徹底的に整理改善し財政負担の軽減に資する。
3.経済基盤の充実と失業対策
安定せる経済基盤の上に自立復興の基礎を養い、産業の振興による雇傭機会の増大により失業の積極的吸収を図る。これがため
(1)公共事業に関しては、直接および間接の雇傭吸収力を考慮しつつ、国土資源の維持、開発、治山治水、災害の復旧、交通、通信及び教育関係施設の改善に重点を置く。
(2)輸出の振興については海外市場の適確なる把握と関連産業の合理化等により極力市場の拡大と対外競争力の充実を図る外貿易金融の一層の疎通を期する。
(3)失業対策としては前各号による生産的事業の実施によって失業の吸収をはかる外、引続き失業応急事業等による応急的対策を併せ考慮する。
産業資金の供給については国民貯蓄の増強にまつのを原則とするが、基礎産業部門等における経済再建上緊要な資金並に前各号の経費については、必要に応じ、見返資金および預金部資金の一層効果的活用を図る。なお、一般金融機関において融通困難とする生業資金、住宅資金、中小商工業、農林資金等社会的及び経済的意義の重要な特殊金融の疎通については、必要に応じ財政資金を考慮する。
4.税制の合理化
歳出の縮減による余裕財源の大部分をもって、現行各税の税率控除等を現在の経済情勢に即応するよう合理化し、国民負担の軽減をはかるとともに、徴税方法の改善、徴税能率の向上等と相まって、負担の公平と租税収入の確保とを期する。
5.地方財政の健全化
地方財政については国と同調して行政の合理化と経費の効率化につとめるとともに、極力国有財源を充実し地方自治の強化をはかる。これがため
(1)国の財政規模の縮減による財源の一部を地方自治体に委譲する目途の下に、国税と地方税との調整等地方税制の根本的改正を行う。
(2)地方に対する補助金等は徹底的にこれを整理する。
(備考)昭和25年度予算は本年12月1日国会提出を目途とするため、各省各庁は概算要求提出期限の8月末日までに大蔵省と協力して標準予算につき充分の検討を遂げること。