鉄鋼業及び石炭鉱業合理化施策要綱

昭和25年8月18日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.350-351 当館請求記号:DG15-19

一、目的
国内炭価水準特に原料炭等の特殊炭の価格水準が国際水準に比し相当に割高であることが鉄鋼業を始め重要産業の自立化を妨げ、価格差補給金の撤廃乃至削減後の輸出採算を極めて困難にしている現状に鑑み、昭和二十八年を目標として輸出産業及び基礎産業として最も重要な鉄鋼業の合理化施策を強力に推進すると共に石炭鉱業合理化についての諸施策をも同時に推進して、炭価水準の引下げを図り、右目標年次に於いては両産業の努力と相俟って、日本産業自立態勢の基礎を整えることを目的とする。
二、目的達成の為に必要な施策
鉄鋼業及び石炭鉱業は生産性の向上、間接費作業費の大幅切下げ、品質の向上等夫々企業経営の全般に亘りあらゆる合理化努力を集中するものとし、これと併行して左の施策を行う。
(1) 合理化資金の確保とそれに付ての低金利措置
両産業の合理化に必要な資金に付ては、その確保を図ると共に企業の利子負担を軽減する如き措置を講ずる。
なお合理化資金に付ては夫々両産業に於いて効率的に使用されるよう特に配慮を行う。
(2) 復金借入金に付ては極力利子引下げを促進すると共にその回収は合理化の進捗状況その他企業の実情に応じて弾力的に実施する。
(3) 外国機械、外国技術の輸入に付て外貨資金の重点的割当等優先的取扱を行う。
(4) 炭鉱の機械化推進の為、炭鉱機械で試験的に使用せしめる必要のあるものに付ては、国家的助成を行う。
(5) 炭価の値下り、輸送の合理化と相俟って輸送費の可及的軽減を図る。
(6) 屑鉄対策を強化し其の必要量を確保すると共に鉄鋼業に於ける重油使用量の拡大を図る。
(7) 右諸施策の効果を確実にするため低価格の外国原料炭、発生炉炭等の輸入確保を図る。
(8) 右の諸施策の強力な実施と両産業の合理化努力を促進する為に主要炭鉱、工場の合理化について調査指導を行う。
三、経過的措置
右の如き諸施策によって鉄鋼業及び石炭鉱業の合理化を急速に実現するが、経過的に必要な場合に於いては鉄鋼業に対し助成措置を考慮する。
(注意)第三項「経過的措置」は当分の間新聞等に発表しないこと。