電気事業再編成要綱

昭和25年10月3日 閣議了解

収載資料:内閣制度九十年資料集 内閣官房編 大蔵省印刷局 1976.3 pp.1040-1041 当館請求記号:AZ-332-6

第7国会の審議状況及び自由党における討議の結果を勘案し、電気事業の再編成に関する重要事項については、左記の方針に基くものとする。

一、分割による再編成は、これを行うこととし、関係法案は最近の国会にこれを提出する。
二、再編成は、サイクルにより分割するを理想とするも、配電の現状を混乱せしめざることを考慮するとせば、九分割案を妥当とする。
三、電源は、原則として各分割地域の会社に所属せしめる。
四、当該発電所の発生電力の大部分が、他地区に供給せられていると認められる場合は、その電源の所属については、例外措置を講ずるものとする。
五、新会社設立後その実際の運営により電源の変更を必要とする場合は、これを認めるものとする。
六、公益事業委員会を速に発足せしめ、電力融通その他必要なる事項を管掌せしめる。
七、新会社間の電力融通の円滑を確保するため必要があると認めるときは、公益事業委員会は、関係新会社に対し、当該会社によつて構成され、電力融通に関する契約の履行又は委員会の命令を実施するため必要な機関の設置を命ずることができるものとする。
八、料金の地域差(比率)は現在以上にしないこととし、これがため調整金制度により、料金の地域差を調整する。但し、電源開発とにらみ合わせて、調整金制度については、五ケ年の期限を附する。
なお現行の料金自体についても、資産再評価その他特別の事情により料金の値上げとなる場合は、やむを得ないが、合理化により極力その低下を図る。
九、電源の開発は、急速に行うこととし、これがため電源開発金庫の如き機関を研究考慮する。
なお只見川の如き大電源の開発については別途に考慮する。
十、電気事業の公営に関しては、委員会が公共の利益を増進するため特に必要があると認める場合は、新会社の供給区域内に公営の電気事業を許可することができるものとする。又地方公共団体が電気事業の経営のため新会社の事業の譲受を必要とする場合は、原則として当事者間の協議により、協議調わないときは、委員会の裁定により事業の譲受に関する諸事項を決定するものとする。
十一、かつて地方公共団体が所有せる電源若しくは経営する電気事業又は工場、事業場が主として自己の用に供するため施設せる電源の復元に関しては、委員会が、関係地方の電力需給に著しい悪影響(国立国会図書館注)を及ほすと認める場合の外は、これを認めるものとする。
十二、新規自家用電源又は小水力利用による農事用電力の開発については、水力発電から見た河川の一貫運営に著しい支障を与える場合の外は、これを認めるものとする。
十三、地方公共団体の既得権を保護し、且つ、これで財政を圧迫せしめないため、地方公共団体の指定会社及び新会社の株式の取得又は保有を禁止しないものとし、又その取得し、保有する株式は、無議決権株としないものとする。
十四、新会社の資金調達を容易ならしめ、電源の開発を促進せしめるため、新会社の社債発行限度の特例を認める期間を三年とし、又今後発行せられる社債についても一般担保制(General Mortgage)の適用を認めるものとする。
十五、電気事業者に対し、測量又は工事施行のため他人の土地への立入、植物の伐採、土地の使用等の特権規定を認めるものとする。
(註) ガス事業者に対しても電気事業者に対する同様の特権を認めるものとすること。


国立国会図書館注:収載資料には「彰影」とあるが、国立公文書館蔵の原本には「影響」とある。