税制改正及び資産再評価に関する要綱

昭和26年1月23日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.224-226 当館請求記号:DG15-19

税制の改正に関しては、先に酒税、物品税、砂糖消費税及び揮発油税について、国民負担の軽減合理化を図るとともに、昭和二十六年一月-三月間に支払われる給与所得の源泉徴収額について暫定的軽減を行うこととしたのであるが、更に一層負担の軽減合理化、税制の簡易化を図るとともに資本の蓄積に資する等のため、次のとおり税制を改正するとともに重ねて資産の再評価を行い得るものとする。
一 所得税
(一)基礎控除
基礎控除額を三万円(現行二万五千円)に引き上げること。
(二)扶養控除
扶養控除額を扶養親族一人につき一万五千円(現行一万二千円)に引き上げること。
(三)不具者控除
控除額を一万五千円(現行一万二千円)に引き上げること。
(四)税率
税率を次のように改正すること。
課税所得金額
五万円以下の金額   百分の二十(現行同上)
五万円をこえる金額  百 分の二十五(現行五万円をこえる金額
百分の二十五
現行十万円をこえる金額
百分の三十)
十万円をこえる金額  百分の三十(現行十万円をこえる金額
百分の三十五
現行十二万円を超える金額
百分の四十)
十五万円をこえる金額 百分の三十五(現行十五万円をこえる金額
百分の四十五)
二十万円をこえる金額 百分の四十(現行二十万円をこえる金額
百分の五十)
三十万円をこえる金額 百分の四十五
五十万円をこえる金額 百分の五十(現行五十万円をこえる金額
百分の五十五
百万円をこえる金額  百分の五十五
(五)新たに次の特別控除制度を設けること。
(イ)老年者控除
年齢六十五歳以上の者について、その者の所得から年一万五千円を控除すること。
(ロ)未亡人控除
扶養親族を有する未亡人について、その者の所得から年一万五千円を控除すること。
(ハ)勤労学生控除
一定金額以下の所得を有する勤労学生について、その者の所得から年一万五千円を控除すること。
(ニ)生命保険料控除
年中に払い込んだ生命保険料のうち二千円までの金額を控除すること。
(六)資産所得の合算及び扶養親族の所得の合算の制度を廃止すること。
(七)預貯金利子等に対する課税に当り源泉選択制度を認め、その税率を百分の五十とすること。
(八)青色申告書に対しては、再調査及び審査の請求中は、差押公売を行うことができないものとすること。
(九)農業所得者以外の納税者の申告時期及び納期を農業所得者と同様七月、十一月及び翌年二月の三期とすること。
(十)その他所得税制の簡素合理化を図る等のため規定の整備を行うこと。
二 法人税
(一)積立金に対する法人税を廃止すること。但し、同族会社に対する積立金の五%(現行七%)課税は存置すること。なお、非同族会社の子会社に対しては同族会社の積立金許税は行わないものとすること。
(二)今後新規に取得した特定の機械設備等に対して取得の年以後三年間に限り法定償却額の五割程度の増加特別償却を認めるものとすること。
(三)見返資金の所有する優先株式に対する利益の配当を所得の計算上損金に算入するものとすること。
三 相続税
被相続人の死亡に因り取得する生命保険金のうち十万円までの金額を特別に控除するものとすること。
四 通行税
航空機の乗客に対して課税することとするとともに汽船の二等乗客に対する課税を廃止すること。
五 物品税
高級織物に対し百分の十程度の税率で物品税を課税するものとすること。
六 砂糖消費税
輸入砂糖に対する臨時免税措置を廃止すること。
七 印紙税、骨ぱい税
物品切手、手形、貯金証書、売買契約書、受取証書等に対する和紙税の課税最低限を引き上げるとともにトランプ等に対する骨ぱい税の税率を引き下げること。
八 その他
国税徴収法、税務代理士法等の規定の整備を図ること。
九 資産の再評価
資産の再評価を前回と略々同一の条件で再び実施し得るものとするとともに再評価積立金の資本組入れを早期に行い得ることとすること。
(閣議決定附帯条件)
第五号 物品税の項は留保する