石炭と重油との調整について

昭和29年3月30日 閣議了解

収載資料:通商産業政策史 第17巻 通商産業省 通商産業調査会 1994.12 pp.374-375 当館請求記号:DC55-E185

1 わが国のエネルギー消費は、その資源の賦存状況および国際収支上の観点からみても、石油等の国際情勢により供給量を左右され易い資源に過度に依存すべきではなく、基本的には電力および石炭の使用に重点をおくべきである。
2 重油を使用する場合には、燃料費およびこれに関連する間接費の相当な引下げならびに品質の向上等相当顕著な効果をもたらすが、他面、重油転換の急激な進展に伴い石炭需要は減退し、今後引き続き重油の輸入を増大する場合には、出炭規模の縮小は免れず、竪坑開さく等による石炭鉱業の合理化は著しく困難となり、むしろ石炭生産費を昂騰させるおそれがある。
3 国際収支の面においても、29年度の総輸入規模はおおむね今年度と同一水準と見込まれるが、食糧および今後増加が予想される輸出原材料等を確保するためには、不急、不要の輸入抑制を強化することに止まらず、特に国内資源の活用を推進し、外貨流出の増加を防止しなければならない。
4 よつて今後は極力炭価の引下げに努めるとともに、重油の消費増加を抑制するため、左の措置を講ずるものとする。
(1)消費節約の勧奨
一般に重油の消費節減運動を展開し、消費の節減を図るとともに、今後の重油への転換を抑制し、さらに業種(例えば、火力発電、セメント等)、設備状況等を勘案の上、混焼設備を有するものについては専ら石炭を使用せしめ、重油専焼設備を有するものについても石炭との伴用に切り替えるよう勧奨し、石炭の使用を推進する。
(2)消費の規制
煖ちゅう房用、浴場用等強いて重油を使用しなくともすむ用途に対しては、昭和29年10月1日以降消費規制を行うことを直ちに予告する。
(3)内燃機関用の確保
農林、水産用、船舶用等重油を内燃機関用に使用する用途に対しては、前記(1)により重油の消費を節減せしめるとともに、その所要量については、これが確保を図る。
(4)炭価の引下げ
以上の措置を円滑に実施するため、出炭規模の適正化等により石炭鉱業を安定し、諸般の炭鉱合理化施策を強力に推進して炭価の引下げを図る。