昭和29年度予算の実施について

昭和29年6月1日 閣議決定

収載資料:国の予算 昭和30年度 財政調査会編 同友書房 1955 p.664 当館請求記号:344.1-Z11k

昭和29年度予算の実施に当つては、特に内外の経済情勢の推移に即応し、物価引下げ、国際収支均衡回復の目標を達成するため、下記により財政支出の節減を行うよう各省各庁は最大限の努力を傾注するものとする。

1 財政規模1兆円の枠を堅特するため、予算総額の増加を伴う補正は一切行わないこと。
2 官業その他の公共料金については、原則として当分の間これを据え置く外建設資材、繊維品、車輌、船舶等政府及び財政投融資対象事業による調達が多額に上るものについては、その調弁価格につき合理的に原価の再検討を行うこと等により、積極的にこれを引下げ、以て一般物価の引下げに資すること。
このため、調弁価格、方式の調整合理化等に資するための連絡協議会を設けること。
3 財政支出の縮減を図るため、別紙要領により一般会計予算において200億円以上の節約を行うこと。
4 財政投融資については、公募債の消化状況等をも考慮し、一般事業費の縮減に準じて、別に定めるところによりその圧縮を図ること。
5 以上各項の方針は、一般会計のみならず、特別会計及び政府関係機関の予算実施についても、当然適用又は準用すること。
地方公共団体においては、この際、行財政の徹底的整理を断行し、地方財政の圧縮整備を強力に推し進めるよう特に要望するとともに、これを促進するため、地方債の政府資金による引受及び公募については、特に厳格に規制することとする。
また、国会、裁判所及び会計検査院についても上記各項に準ずる措置を要請するものとする。
別紙
昭和29年度予算節約実施要領
1 目標
昭和29年度予算に対する三党修正により予備費50億円を減額され、これを補てんするため予算実行上少くも同額以上の物件費、施設費を節約することとなつていたのであるが、その後予算関係法律案の国会修正等によつて更に歳入の減少又は歳出の増加を生ずるに到つたこと等により、この際一般会計予算において200億円以上の節約を実施するものとする。
2 方針
1)物価の推移を勘案し、予算単価の引下げを図り特に政府及び財政投融資対象事業による調達が多額に上るものについては、関係各省庁の連絡協議会を通じて積極的に価格の引下げを検討し、財政支出の節減を図る。
2)不要不急の経費については厳にその支出を戒めるのはもちろんのこと、予算で予定した事業計画についても、状況によりその圧縮又は繰延べを行い,以て予算の節約を図る。
3)その他、予備費についても極力その使用を制限する外、出納整理期間における前年度予算の支出が予想外に多額に上つている等の事情にも鑑み、財政収支の時期的調整を強力に実施する。
3 措置
物件費、施設費等(補助費、委託費、他会計繰入等のうちこれらに準ずるものを含む)につき次にかかげるものの外、一率に予算額の10%を節約する。
1)節約を除外するもの-災害復旧費及び補充費(通信専用料、庁舎借料及び患者食糧費等を含む。)
2)5%を節約するもの-学校、病院、試験研究機関の物件費,施設費等。
なお、各省各庁は上記の方針にもとづく予算節約調書を作成し6月15日までに大蔵大臣に提出するものとする。