石炭対策について

昭和37年4月6日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.268 当館請求記号:210.76-Si569

政府は、石炭政策に関し、従来その確立に格段の努力を払って来たが、最近の情勢にかんがみ、更に石炭産業の安定化対策を一層促進するため、次の措置を講ずるものとする。
第一 当面の措置
政府は、この際権威ある調査団を編成し、これに対して石炭鉱業の近代化、合理化および雇用の実状調査を要請し、今後の政策について答申を求め、これを尊重する。
雇用に関しては、右調査団に対して特に早急に答申を求めることとし、その答申に基づく措置につき政府の決定があるまでは、経営者側は、新規の人員整理(石炭鉱山保安臨時措置法または石炭鉱業合理化臨時措置法に基づく事業の廃止によるものおよび現に実施中または労使交渉中のものを除く。)を行なわず・労働者側は、紛争行為を行なわないよう期待するものとする。
第二 今後の石炭政策
1 総合エネルギー対策の確立を図るため、近く通商産業省内に強力な審議機関を設けて審議検討するものとする。
2 出炭規模については、当面5500万トンの合理化基本計画は変更しないが、更にコスト切下げの可能な場合には、出炭規模の拡大について、総合エネルギー対策の一環として再検討するものとする。
なお、その際未開発炭田(主として原料炭)の開発については、今後の長期計画のなかで積極的に取り上げるものとする。
3 炭価の1200円引下げについては、従来の方針によるものとするが、37年度および38年度の年次計画については、近く開催予定の石炭鉱業審議会の答申をまって実施するものとする。
4 炭鉱労働者の雇用の安定を図るため、新たに雇用奨励金制度の創設をはじめその離職者対策等について昨秋以来特段の措置を講じたが、更に事態の推移に即応して雇用の安定を一層強化するため、次の措置を講ずるものとする。
(1)石炭鉱業の合理化に伴う整備計画(人員整理および閉山計画)については、これを地域別、炭田別に、毎年石炭鉱業審議会において審議検討する。
(2)石炭鉱業の第二会社化については、労使協議の上双方が雇用対策上、必要と認める場合に限定するものとする。
なお、租鉱権の設定については、坑口の開設および使用の許可基準を再検討する。
(3)石炭鉱業の坑内作業について法の禁止する労働者供給事業に該当する場合の基準を明確にし、その基準に該当する場合の取締りを強化する。
(4)炭鉱労働者の安定職場への計画的転換の促進に資するため、産炭地域振興事業団の融資機能の活用を図る。
(5)大手の企業に対しては、炭鉱労働者を解雇する場合には、解雇された離職者をできるだけ多く系列会社等に就職させるよう特に勧奨する。
(6)炭鉱労働者の再雇用を促進するため、政府関係機関、特定の成長産業に対して協力を要請する。
(7)炭鉱離職者に対する失業保険給付の改善を考慮する。
5 石炭鉱業の近代化、合理化を促進して、その安定を図るため、特段の金融措置を講ずるものとする。
6 石炭鉱業の最低賃金に関する中央最低賃金審議会の中間答申を尊重し、同答申にうたわれている専門部会を設置する。