【目次】
1. PTSDとは
2. PTSDに関する参考図書
3. PTSDに関する雑誌記事・論文の探し方
4. PTSDに関するインターネット情報源
1. PTSDとは
PTSDは“Post-Traumatic Stress Disorder”の略で、日本語では(心的)外傷後ストレス障害と呼ばれます。災害、戦争、虐待など、死の恐怖に直面するような外傷的出来事(トラウマ)に遭遇した人が患者となります。遭遇した外傷的出来事を思い出してしまって日常生活を妨げられたり、逆に思い出してしまうことを恐れてその出来事にまつわる場所や人物などを極端に避けてしまうような状態が1ヶ月以上持続して出現するのが特徴です。日本では1995年1月の阪神淡路大震災でその症状が知られるようになり、その後も同年3月の地下鉄サリン事件、2005年4月のJR福知山線脱線事故などで話題となっています。
症状は主に次の3種類に分類されます。
・再体験症状
外傷的出来事に関する記憶が突然思い出されて(フラッシュバック)苦痛を感じたり、悪夢として反復される症状です。思い出したときに精神的に動揺したり、動悸や発汗などの身体生理的反応を伴うことがあります。
・回避・精神麻痺症状
出来事に関して考えたり話したりすることを避けたり、思い出させる事物を回避する症状です。また、興味や関心が乏しくなり、周囲との疎隔感や孤立感を感じ、感情が麻痺したように感じられることもあります。
・過覚醒症状
睡眠障害、いらいら感、集中困難、過剰な警戒心、ちょっとした物音などの刺激に怯えるような過敏反応です。
PTSDの治療は精神科や診療内科で行います。心理検査で状態を調べ、症状にあわせて柔軟に治療法を検討します。主要な治療法としては、トラウマ体験によって変化した言動パターンを修正する認知行動療法、抗うつ薬によって脳機能の異常を抑える薬物療法などがあります。PTSDの治療では、日常生活を支障なく送れるようにすることを治療の第一の目的とし、粘り強く取り組まなければなりません。そのためには家族や学校・職場など周囲の理解と協力が必要です。
参照:
『PTSDとトラウマのすべてがわかる本』
2. PTSDに関する参考図書
NDL-OPAC
こうして検索した結果の中から、数点の図書をご紹介します。【 】内は当館請求記号です。所蔵館(東京本館/関西館)については、“《⇒NDLの所蔵》”をクリックし、「書誌詳細表示」画面の「所蔵詳細/申込み」ボタンをクリックして、ご確認ください。
●『PTSD治療ガイドライン:エビデンスに基づいた治療戦略』(エドナ・B.フォア,テレンス・M.キーン,マシュー・J.フリードマン編 飛鳥井望,西園文,石井朝子訳 金剛出版 2005.3 【SC374-H107】
国際トラウマティック・ストレス学会(ISTSS:the International Society for Traumatic Stress Studies)の「PTSD治療ガイドライン特別作業班」によって作成されたガイドラインの邦訳版です。内容は2部に分れており、「第I部 PTSD治療へのアプローチ」ではPTSDに関する代表的な文献を紹介し、同時にそれらの妥当性を検証し、推奨の度合いを決定しています。「第II部 治療ガイドライン」では、第I部で紹介した文献を要約し、「認知行動療法」、「集団療法」、「芸術療法」などの治療法や技法を段階的評価で示す形でガイドラインにまとめています。
●『PTSDとトラウマのすべてがわかる本』(飛鳥井望監修 講談社 2007.11 【SC374-J4】
PTSDとトラウマの基礎知識をイラストや図を用いて分かりやすく解説しています。患者やその周囲が誤解しやすいポイントなどが解説されているため、病気について理解を深めるための入門書として適しています。症状や治療法だけでなく、悪化を防ぐための方法や周囲の人がどのようにサポートしていくべきかといったことも調べることができます。
●『心的トラウマの理解とケア.第2版』(金吉晴編 じほう 2006.3 【SC374-H121】
本書は厚生労働省精神・神経疾患研究委託費による「外傷ストレス関連障害の病態と治療ガイドラインに関する研究」のまとめです。心的トラウマとそのケアに関する情報を、臨床または災害や事件の現場で活用できるように編集されています。前半部の「総論」では「トラウマ反応と診断」や「PTSDの心理療法」など、トラウマケアやPTSD治療の基礎的知識を、「各論」では「自然災害」、「集団毒物汚染被害」、「ドメスティック・バイオレンス」など、状況別のトラウマの特徴やメンタルケア対策などをまとめています。
●『PTSD薬物療法アルゴリズム : 日本語版』([IPAP][原著] 金吉晴,原恵利子訳 メディカルフロントインターナショナルリミテッド 2007.5 【SC374-H158】
国立精神・神経センター成人精神保健部ホームページ内のPTSD薬物療法アルゴリズム
3. PTSDに関する雑誌記事・論文の探し方
●雑誌記事索引
NDL-OPAC
雑誌記事索引に収録されている文献は、原則として国立国会図書館所蔵資料です。登録利用者であれば検索結果から直接複写申込みができます。それ以外の方は当館ホームページの「複写サービス」>「お近くの図書館から申し込む」をご参照ください。
●医中誌Web(館内でのみ利用可)
国内の大学・学協会・研究所・病院等が発行している約4,700誌の定期刊行物に掲載されている論文の中から採録された文献情報の検索が可能です。東京本館および関西館に来館可能な方は、無料で利用することができます(複写は有料)。
PTSDに関する医中誌の統制語に“ストレス障害-心的外傷後”があります。アドバンスド・モードの検索画面で、デフォルトのまま、新規検索の検索窓に“ストレス障害-心的外傷後”と入力して検索すると、統制語検索が可能です。検索対象年を2003〜2008に設定して、この検索を行なうと1,644件の文献がヒットします(2008年8月4日現在)。文献を絞り込みたい場合は、キーワードを追加したり、絞込み検索で文献の属性などを指定してください。医中誌Webの詳しい検索方法については、テーマ別調べ方案内の医中誌Web(館内でのみ利用できます)をご参照ください。
●PubMed
米国国立医学図書館(U. S. National Library of Medicine)が提供する、医学文献二次情報データベースMEDLINEを中核とする無料医学情報サービスです。PubMedではMeSHという件名システムを用いており、このシステムにおいてPTSDに相当する件名は“Stress Disorders, Post-Traumatic”です。検索ボックスに“"Stress Disorders, Post-Traumatic"[Mesh]”と入力し、「Go」ボタンを押すと件名検索を行うことができます。この検索を行うと、12,498件の文献がヒットします(2008年8月4日現在)。検索結果を絞り込みたい場合は検索語を付加するか、左上のLimitsタブを押して検索を進めてください。“Links to free full text”にチェックを入れると、無料で全文アクセス可能な文献にのみ検索対象を絞り込むことができます。
PubMedの詳しい検索方法や検索結果から原文献を入手する方法については、PubMedの検索と原文献入手法をご覧下さい。
●PILOTS Database(館内でのみ利用可)
アメリカのNational Center for Post-Traumatic Stress Disorderが作成するデータベースで、1871年以降に発表されたPTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する文献を検索することができます。このデータベースはCSA ILLUMINAに収録されています。検索するには、CSA ILLUMINAのデータベース選択画面でPILOTS Databaseにチェックを入れ、「検索を続ける」をクリックします。そして検索画面で検索ボックスにキーワードを入れて検索ボタンをクリックすると、文献を検索することができます。
上記のデータベースで検索した結果の中から、日本語の記事を数点ご紹介します。タイトルの後ろに“《⇒記事情報》”とあるものは、NDL-OPACの「雑誌記事索引」に収録されており、クリックすると書誌事項を確認できるほか、登録利用者であれば、そのまま郵送複写を申し込むことも可能です。
●「【脳と忘却】PTSDと忘却できない記憶」
Author:大渓俊幸(東京大学 大学院医学系研究科精神医学分野), 加藤進昌
Source:Brain Medical(0915-5759) 19巻2号 Page173-177 (2007.06) 【Z19-2794】
PTSDの脳病態の中で、扁桃体や海馬が記憶の形成と消去に中心的な役割を担っていることや、ストレス脆弱性に関わる内側前頭野と辺縁系の神経系発達に遺伝要因と環境要因の相互作用が関連していることなど、PTSDの脳機能との関連について考察しています。PTSDのようなストレス性精神障害の解明には、遺伝要因と環境要因を総合的に検討し、予防に役立てるべきであると結論づけています。
●「【子どもを蝕む大人の病気】 心的外傷後ストレス障害(PTSD)」 《⇒記事情報》
Author:飛鳥井望(東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所 社会精神医学研究分野)
Source:小児科(0037-4121) 48巻5号 Page758-762 (2007.04) 【Z19-368】
子どもにPTSDを引き起こす要因となるトラウマ体験を急性単回性のI型トラウマと長期反復性のII型トラウマに分け、それぞれのトラウマによるPTSDの症状や治療方法を考察した論文です。I型トラウマでは分離不安の増大による退行反応を伴うことが多く、II型トラウマでは解離や反応性愛着障害など、より多彩な反応を示すこと、子どものPTSD治療には焦点化認知行動療法が有効なことなどを、事例を示しつつ解説しています。
※用語解説
・分離不安:乳幼児が、その依存対象である母親またはその代理人物から、ひき離される時に示す不安のこと。(『新版精神医学事典』 加藤正明〔ほか〕編 弘文堂 1993 【SC2-E68】より)
・退行:ある時点において、それまでに発達した状態や機能あるいは体制が、それ以前のより低次の状態や機能ないし体制に逆戻りすること。(『新版精神医学事典』 加藤正明〔ほか〕編 弘文堂 1993 【SC2-E68】より)
・解離:解決困難な葛藤にさらされた場合、それにまつわる観念や感情を関与しない精神の部分から切り離して、過去の記憶、同一性と直接的感覚の統制に関する統合が全面的あるいは部分的に失われること。(『新版精神医学事典』 加藤正明〔ほか〕編 弘文堂 1993 【SC2-E68】より)
・反応性愛着障害:5歳未満に始まる特徴的対人関係障害。過度に抑制された非常に警戒した態度や見ず知らずの人に過度になれなれしくする無分別な愛着など病的な愛着を示すこと。(上記、飛鳥井望氏の論文より)
・認知行動療法:クライアントの情緒的、身体的、行動上などの問題に対して、その背景となる考え方(認知)に焦点を当て、学習理論をはじめとする行動科学の諸理論や諸技法を用いてアプローチする心理療法。(『最新医学大辞典. 第3版』 最新医学大辞典編集委員会編 医歯薬出版 2005.4 【SC2-H104】より)
●「扁桃体と精神医学】 PTSDにおける扁桃体の構造と機能」 《⇒記事情報》
Author:袴田優子(東京大学 大学院教育学研究科臨床心理学コース), 松岡豊
Source:臨床精神医学(0300-032X) 36巻7号 Page871-881 (2007.07) 【Z19-686】
PTSDの病態生理に関する脳神経回路のうち、扁桃体—腹内側前頭皮質—海馬間の相互作用に焦点をあてたモデルが注目されていることに言及し、PTSDにおける扁桃体の構造と機能やその機能的連絡関係に関する先行研究を概観し、今後の研究について展望しています。
4. PTSDに関するインターネット情報源
●日本トラウマティック・ストレス学会
災害や事件・事故あるいは家庭内での暴力などによってもたらされるトラウマティック・ストレスとその心身への影響の研究を促進する学会のホームページです。学会が発行する『トラウマティック・ストレス』の抄録集を閲覧できるほか、PTSD Topics








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