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アジア情報サービスに関するシンポジウムおよびアジア情報研修の終了について : アジア情報室通報第1巻第4号

アジア情報室通報 第1巻第4号(2003年12月)

 

■アジア情報サービスに関するシンポジウム■

平成15年11月19日(水)アジア情報サービスに関するシンポジウム「アジアへの知的探求と図書館サービスの新展開」(以下シンポジウム)を実施した。以下にその概要を報告する。

1. 開催に当たって

アジア地域との政治的、経済的、文化的交流の重要性は、わが国は勿論、世界的にも今後ますます大きくなることが予想される。こうした交流の前提となるのが、学術的なアジア研究を含むアジアに対する理解の深まりと広がりである。アジア地域から発信される情報を収集、提供していく機能を担う図書館の役割が問われるところである。アジア域内の情報資源の現状はどうなっているのか、域外の図書館はこれらの情報資源をどう収集・組織化・提供しているのかについて、現状と課題を明らかにするとともに今後の新たなサービスの可能性について考えたいというのがシンポジウム開催の趣旨であった。もちろん、開館1年余りを経た関西館アジア情報室とそのサービスを広く知ってもらうこともシンポジウム開催のもう一つの目的であったし、シンポジウムの成果を今後のアジア情報室のサービス展開を考える契機としたいということもあった。

2. シンポジウム概要

(基調報告)
(1)「日本におけるアジア研究と図書館」 (藤井毅 東京外国語大学教授)

21世紀COE(Center of Excellence)プログラム「史資料ハブ地域文化研究拠点」拠点リーダーとして、これまでの日本におけるアジア関係資料の取組みを批判的に検証しながら、プログラムがめざす史資料の収集、保存、共有化等について述べるとともに、日本における史資料コンソーシアム形成や、専門司書・アーキビストの養成と地位確立の必要性が指摘された。

(2)「Information Resources in Southeast Asia–Access and Availability」(R. Ramachandran東南アジア図書館人会議事務局長)

国立国会図書館と比較しながら、東南アジア地域の7カ国の国立図書館が所蔵する情報資源の現状、域内での貴重な文化遺産の電子化に関するASEAN、CONSAL、UNESCOなどの動向が報告された。最後に、各国が協力して共に進化していくこと、図書館活動の成果を社会全体の成果として評価していくこと、域内情報へのアクセスにおける地域に根ざしたグローバル化の必要性が述べられた。

(報告)
(1)「Development of Asian Studies in Europe」(W.A.L. Stokhof 国際アジア研究所長)

ヨーロッパにおけるアジア研究の進展について、黎明期から最近にいたるまでの歴史、特徴等について概観するとともに、特に最近10年間におけるアジア研究の体制および関係組織の紹介、21世紀におけるアジア研究の重要性、IIASが展開するアジア研究促進のための国際アジア研究者会議等と関連して域外との研究協力の必要性が報告された。

(2)「New horizons, changing landscapes: building Asian collections at the National Library of Australia」(Amelia McKenzieオーストラリア国立図書館アジア資料課長)

オーストラリア国立図書館におけるアジアコレクションの沿革、収集方法、資料収集等に関するアジア各国との協力のほか、アジア資料の書誌コントロール、その機械化と現地語表記、中国語・日本語・朝鮮語資料の総合目録および今後の予定について報告された。アジア資料の利用動向と利用促進のための取り組みや図書館サービスの実績評価についても紹介された。

(3)「Building a World-Class Collection in the Library of Congress for Area Studies, Culture Preservation, Global Understanding, and Knowledge Creation」(Hwa-Wei Lee 米国議会図書館アジア部長)

米国議会図書館におけるアジアコレクションの歴史、現状および日本を含むアジア関係の同館所蔵貴重資料、アジア部の使命とビジョン、議会図書館内のアジア資料に関連した組織および業務の紹介が行われた。また、同図書館のホームページのアジア情報ポータルサイト、基金を利用したポストドクターなどの研究に対する研究助成制度およびアジア部に関連した国際協力プロジェクトが報告された。

(4)「国立国会図書館のアジア情報サービスの現状と課題」

(富窪高志 国立国会図書館アジア情報課長)

国立国会図書館のアジア情報サービスの沿革、関西館のアジア情報室の紹介、開館1年間のアジア情報の利用状況、所蔵資料の概要のほか、特に中国語、朝鮮語以外のアジア言語資料の収集、内外の関係機関との協力について報告がなされるとともに、資料・サービスを今後一層充実させていくという考えが示された。

(討論)

コーディネーター:濱下武志(京都大学東南アジア研究センター教授)

討論は会場からの質問に答える形で進行し、アジア資料の収集におけるフィールドオフィス(アメリカ、オーストラリア)の活動と連携の可能性、アジア諸国の官報・新聞なとの劣化資料の保存に関する国際的なプロジェクト等について討論が行われた。

3. 参加者の評価

シンポジウム参加者は114人であった。シンポジウム終了後お願いしたアンケートには63人の方から回答をいただいた。

参加者の所属では、大学図書館が46%、次いで公共図書館が13%、その他の図書館を含めると図書館関係者が約60%であった。以下、民間企業・団体11%、学生8%、図書館以外の大学関係者と政府機関が各3%という結果であった。

内容については、「国内外の研究機関・図書館の取り組みがよくわかった」、「アジアの、国を超えたレベルでの図書館協力が必要であるとわかった」、「アジアという地域が国際的にどう意識されているかがわかった」、「多岐にわたる情報を海外からの生の声で知ることができ、大変貴重な機会だった」等の感想が寄せられた。一方、「討論の時間がもう少し欲しかった」、「各国の図書館案内を聞くようでがっかりした。もう少しつっこんだ発表がききたかった」という意見も寄せられた。

また、「今後も定期的に開催して欲しい」、「図書館員の情報収集、意見交換の場として非常に貴重である」等の声もあった。

4. 終わりに

報告や討論でも触れられたが、情報資源の収集、保存については、図書館間のみならず、研究機関、研究者との連携・協力の必要性を改めて痛感させられた。今後、本シンポジウムでの議論を参考にしながら、業務展開やサービス充実を図っていきたい。

なお、本シンポジウムの記録集の刊行を予定するほか、発表原稿をアジア情報室ホームページ(国立国会図書館-(サービスポイント)関西館-アジア情報室)にも搭載しているので、ご利用いただきたい。

(URL:http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/asiasympo.html)

アジア情報サービスに関するシンポジウム(アジア情報研修1日目)

■アジア情報研修■

平成15年11月19日、20日に昨年度に引続き第2回目のアジア情報研修を実施した。第1日目は前述のアジア情報サービスに関するシンポジウムに参加という形式で実施したので、ここでは第2日目の研修について報告する。

1. 受講者について

受講者の内訳は、以下の通りである。

受講者の内訳
  近畿 首都圏 中部
北陸
九州 合計
大学図書館 7 4 1 1 13
公共図書館 5   1   6
専門図書館他 2 2
合計 14 4 2 1 21

 

地域的には、ほぼ近畿、館種別には昨年度と同じく大学図書館からの参加が多かった。

2. 研修内容

(1)「日本におけるイスラーム研究と資料収集の現状−文部科学省学術創成研究費によるイスラーム地域研究」を終了して」(講師:佐藤次高 早稲田大学教授)

1878年の最初のムハンマド伝(翻訳)の出版から現在にいたる日本における中東・イスラーム研究の流れを、 (1)『日本における中東・イスラーム研究文献目録:1868年-1988年』、イスラーム地域研究叢書などの基本文献、(2)日本オリエント学会、日本イスラム協会、日本中東学会などの学会、東洋文庫、アジア経済研究所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、上智大学アジア文化研究所、東京大学イスラム学科、国立民族学博物館地域研究企画交流センター、京都大学アジア・アフリカ地域研究科、ユネスコ東アジア文化研究センター(本年3月末に終結)」などの研究機関、(3)「イスラム化プロジェクト」(東京外国語大学)、「イスラムの都市性プロジェクト」(文部省科学研究費重点領域研究)、「イスラーム地域研究プロジェクト」(文部科学省学術創生研究費)、「現代イスラームの超地域的研究」(東洋文庫)などの各種プロジェクト、さらに(4)韓国中東学会、中国中東学会、アジア中東学会連合との国際的な研究交流の観点から概説された。

講師が代表をつとめた「イスラーム地域研究プロジェクト」では、現在のイスラーム地域研究についての手法、情報システム(アラビア語などの文字入力)、若手研究者の育成について、また、同プロジェクト第6班が行った資料収集を例に、日本における資料収集の歴史、整理状況および東洋文庫で公開されている各種データベースの利用状況の説明があった。

(2)「企業の情報入手行動−大阪商工会議所のアジア関係サービスを事例にして」 (講師:西田賢治大阪商工会議所国際部長)

昨年度1年間に大阪商工会議所を訪問した外国人の数では70パーセント以上がアジア地域からであり、その中では中国が85パーセントを占めている。こういったアジア情報に対するニーズに応えるために主として以下のサービス、事業を展開している。

国際部事業についてのニーズでは、海外マーケティング情報のほか、資料・情報からは得られないようなビジネスの失敗事例などに関するニーズが高いということであった。セミナー等で提供する情報は、対象地域に関する最新の経済概況、立地条件、インフラの整備状況、産業基盤、人材資源、投資優遇策、投資コスト、具体的な申請手続きが主である。こうした情報提供を行うためには、法務・労務・税務・会計・特許・紛争などの知識を持つ人材の育成が必要であり、現在は外部の専門機関の協力をあおぐことも多い。

インターネットを利用した情報提供(サイバーG-BOC)も行われ、国内外の企業情報が検索できる。

中国でのビジネス展開は大きな流れとなっているが、そのニーズに対応するため、今年4月に中国ビジネス支援室が発足した。中国企業との取引や現地進出を検討している会員企業に対しては中国ビジネス支援プログラムによる支援事業のほか、コンサルティング、中国ビジネスに関する情報収集に便利なWEBサイトの紹介などを行っている。

ベトナム、ラオス、ミャンマー等、現地での情報収集が有効な国については、経済視察団を組織し直接視察を行い情報収集に努めている。

資料の閲覧サービスでは、海外約80カ国の地域紹介パンフレット、投資ガイド、調査報告書等を提供している。

大阪商工会議所の今後の展開として、時代の変化を先取りした情報の提供、会員のニーズを的確に捉え、タイムリーな情報提供を行う、インターネットや資料で得られる以上の専門的・実践的情報を提供するという方向が示された。

なお、今年の3月末に、初代会頭であった五代友厚関係文書をはじめ、明治期の大阪府統計書や新聞など25万~27万冊の資料を所蔵する商工図書館の閲覧サービスを休止したとの報告があった。

(3)今後の研修について−意見交換会

意見交換会は、前回の研修時の質疑応答で、懇談会や懇親会をやってほしいという希望があり、今回始めて実現したものである。アジア情報研修をどのような形・科目構成で実施すればもっとも効果的な研修となるのかということで、研修参加者の方から直接意見をいただく機会として設けた。

国立国会図書館で研修をすることの一番の特長は、館種を超えて興味・関心を同じくする人たちに同じ研修の機会を提供できるということにある。時間的な制約もあって、意見をまとめるまでにはいたらなかったが、今後もこの意見交換会は、研修の質的向上はもとより、館種を超えた情報交換、人的ネットワーク形成の場として継続していきたい。

以下、アンケートでの意見を併せていただいた意見をいくつか紹介する。

· 出張旅費が厳しい状況なので、参加目的が明らかでないと、参加しにくい。研修の年間計画を早めに提示してもらうと計画しやすい。

· 地方に職員が来て講演、若しくは地方の関係機関と共催して行うということは考えられないか。

· 職員養成も含めて、多文化サービスに関連する科目。

· 地域、主題ごとにテーマを設ける。たとえば、地域ごとに収集、整理などトータルな研修を行い、できれば冊子にまとめて欲しい。

· 大学でも産学連携ということがあり、ビジネス情報も無縁ではない。アジアの商業データベースを探しているので協力して欲しい。

· 中国・コリアの研修があれば需要が多いので参加者も増えると思う。

· アジア情報の拠点となっている図書館の実務レベルでの事例報告があってもいい。

3. 終わりに

前述したように、当館で実施する研修には館種を超えた人たちが参加できるという利点がある。館種は異なっても、アジアという関心領域を同じくする図書館員の知識・スキル向上を図る場・機会としてアジア情報研修を位置付けている。特に、アンケートにあった「館種を越えたネットワーク形成」を視野に入れながら、来年度からの研修は今回の意見交換会で出された意見をもとに再構成を行い、さらに発展させていきたいと考えている。もとより当館だけでできることではないので、これまでに参加された諸機関の方々、また将来参加していただける諸機関の方のお知恵をこれからもお貸しいただきたいと切に望むものである。

アジア情報研修2日目

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