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韓国の最新の図書館情報サービス―在外研究報告: アジア情報室通報 第11巻第1号

アジア情報室通報 第11巻1号(2013年3月)
阿部健太郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

筆者は2012年11月から12月にかけて、短期在外研究として韓国の釜山、大田、ソウルの図書館を訪問し、最新の図書館情報サービスや日本語資料の所蔵状況などについて知見を深める機会を得た。以下、本稿では筆者の在外研究の概要とともに、韓国訪問中に得た知見を交えて、韓国の最新の図書館情報サービスを紹介することとしたい。

1 在外研究の概要

筆者は2012年11月28日(水)から12月22日(土)にかけて韓国に滞在し、国立図書館、公共図書館、大学図書館、研究機関、行政機関、民間企業などを訪問した。研究課題は①資料のデジタル化、②電子書籍の提供サービス、③日本語資料の所蔵状況、に関する調査であった。各訪問機関にさまざまな情報を提供いただき、大変収穫の多い在外研究であったが、本稿ではその成果のうち資料のデジタル化と電子書籍の提供サービスを中心に、韓国の最新の図書館情報サービスについて紹介する。

2 資料のデジタル化

韓国の資料デジタル化では、保存よりも利用が重視されている。国立中央図書館(National Library of Korea。以下「NLK」という。)では、「学術的・情報的利用価値がある主要資料を対象」にデジタル化をおこなっており、「全国民に迅速に情報を提供し地域間情報格差を解消」している[i]。2003年以後は、法律により発行後5年が経過した資料であればデジタル化が可能になっている。国会図書館(National Assembly Library。以下「NAL」という。)では、国会議員や国民サービスのためにデジタル化すべき資料を選定している。立法情報として活用価値が高い資料、学術資料として専門性と利用価値が高い資料が対象となり、具体的には立法活動に多く利用される各種学術誌、政府機関の刊行物、電子資料中から選別された学術誌・学位論文などをデジタル化(及びフルテキスト化)している。

著作権が存続しているデジタル化資料のプリントや伝送(他の図書館内での閲覧のため。複製を含む)にかかる図書館補償金は著作権法第31条に規定されている。第31条(図書館等における複製等)第5項には、「文化体育観光部長官が定め、告示する基準による補償金を当該著作財産権者に支払わなければならない。」とある。たとえば販売用の図書のデジタル化画像をプリントする場合、1ページ当たり5ウォンの補償金が発生する。この補償金を、プリントした利用者が負担するかそれとも図書館側が負担するかは図書館ごとに異なるが、NLKではプリント自体にかかる料金50ウォンに補償金を加算して、55ウォンをプリントした利用者から徴収している。この図書館補償金の基準は、2012年に関しては「2012年度「図書館の著作物複製・伝送利用補償金」基準」(文化体育観光部告示第2012-6号)に定められているが、2013年については「『2013年図書館の著作物複製・伝送利用補償金基準』(案)行政予告」(文化体育観光部公告第2012-310号)が公告された。2004年に初めて告示されて以来補償金額に変更はなかったが、これまでの物価上昇率などを勘案して、販売用に限り2012年対比でプリントを20%、伝送を25%それぞれ引き上げて、プリントは1ページ当たり5ウォンから6ウォンに、伝送は1ファイル当たり20ウォンから25ウォンに変更する、という内容である[ii]

著作権が存続している資料を民間企業がデジタル化して無償公開しているのも韓国の特徴である。大手ポータルサイトNAVER[iii]では、東亜日報を含む韓国の全国紙4紙を創刊号から1999年刊行分までデジタル化し、「NAVERニュースライブラリ」[iv](図1)として無償公開している。大手ポータルサイトならではの操作性で、デジタル化画像の質も高い。公益に資するために新聞社から権利を買い取って紙面をデジタル化して無償公開しているとのことで、少なからぬ経費がかかったと思われるデジタル化作業の成果物を無償公開するという姿勢に衝撃を受けた。

図 1 NAVER ニュースライブラリ

公共図書館の所蔵資料を中央行政機関がデジタル化するという事例もある。釜山の公立図書館である市民図書館は、1945年以前に発行された日本語資料を約18,000冊所蔵している。このうち94タイトル1,036冊を国史編纂委員会がデジタル化して、「韓国史データベース」[v]内のコンテンツ「日帝時期貴重資料」[vi]として公開している。釜山・慶南地域の社会、文化、行政に関する資料が中心である。

3 電子書籍

3.1 電子書籍市場

韓国における電子書籍の市場動向を探る一助として、今回訪問した韓国の大手書店教保文庫の事例を簡単に紹介する。

教保文庫は2012年現在、130,000タイトルの電子書籍を保有している。売上高は、2011年は120億ウォン、2012年は180億ウォンであり、2015年の目標は800億ウォンである。電子書籍市場が急成長している様子がうかがえる。分野別では小説、エッセーなど文学のタイトル数が多く、売上高に占める割合はより一層高くなる。PCやタブレット端末ではPDF、ePUBのいずれのフォーマットでも利用することができるが、スマートフォンではePUBフォーマットのものしか利用できない。PDFはイメージファイルなので、画面が小さいスマートフォンでは不都合だからである。図書館への電子書籍の販売は「コピー」という単位で販売し、これが最大同時貸出数になる。図書館へは、消費者向けの小売価格よりも若干高めの金額で販売している。

今後は、前述したような売上目標のほかに、定額制で電子書籍が読み放題の会員制電子書籍サービスを提供する計画である。そこには、利用者が接続権限を購入し、コンテンツ事業者のクラウドにアクセスして無線通信によりストリーミングでコンテンツを楽しむという、「所蔵」「所有」から「消費」へと消費者の認識を転換させるような事業モデルが想定されている。

3.2 公共図書館における電子書籍提供サービス

公共図書館における電子書籍提供サービスの例として、今回訪問した釜山広域市立市民図書館の事例を簡単に紹介する。

図 2 釜山電子図書館

釜山広域市立市民図書館では、2003年から電子書籍を導入している。現在は約16,000タイトル、80,000冊所蔵している(2012年10月現在)。利用者の要望が多いオーディオブックなども所蔵している。教保文庫やブックキューブといった業者が多くの電子書籍を供給しており、そのほかにはウリ電子書籍などがある。1タイトルにつき「5コピー」(5冊)所有しており、5人までが同時に借りることができる。5人に貸し出され貸出ができなくなった資料は5人まで予約することができる。

利用にはホームページ「釜山電子図書館」[vii](図2)で会員登録が必要である[viii]。自宅からでも利用でき、利用料は無料である。PC、タブレット端末、スマートフォンなどで閲覧可能だが、各電子書籍により対応する端末が異なる。古い電子書籍は当然スマートフォンに対応しておらず、PCでのみ閲覧することができる。

貸出はホームページからログインしておこない、1人当たり5冊まで、7日間借りられる。7日経つと自動的に返却される仕組みである。ログイン数の比較では、PCよりもタブレット端末やスマートフォンからの利用が多い。スマートフォンで閲覧可能な電子書籍のページでは、教保文庫やブックキューブ、OPMS、yes24など業者別に一覧、検索することができる。

3.3 国立図書館における電子書籍提供サービス

公共図書館のサービスを相対化するために、国立図書館における電子書籍提供サービスについても概観したい。

NLKでは、電子書籍は毎年5,000冊前後収集(購入)している。所蔵は約50,000冊(2012年11月現在)。基本フォーマットは、テキスト検索が可能なPDFだが、ePUBの資料も収集している。電子書籍は館内に設置されたPCから電子書籍のサイトにアクセスし、貸出返却形式で利用する。館内でノートブックPCからも利用ができ、モバイル端末では検索のみ可能である。1コピーしか保有していないため、複数人が同時に閲覧することはできない。出力機能は提供していない。電子書籍の利用は増加しており、毎月平均約10,000件利用されている。とくに文学・歴史・社会分野のタイトルの利用が多い。政策面では、情報格差を解消するため「小さな図書館」[ix]の支援用に3,700タイトルについてさらに4コピー追加で購入し、「小さな図書館」に無償提供している。

NALでは2009年から電子書籍のサービスを導入した。毎年4,000タイトル程度収集しており、2012年末現在、約15,000タイトルを所蔵している。当初の収集は納本だったが、人気の高いコンテンツは納本されないため、2010年からは購入に切り替えた。小売価格よりも若干高い金額で購入している。1タイトル当たり、2009年のみ5コピーを納本。2010年からは1コピーを購入。社会・政治・法律や経営・経済のコンテンツを中心に購入しているが、やはりコンテンツ不足だという。

NALでは電子書籍を供給業者別にサーバへアップロードし、ビューアも出版社別になっている。主な供給業者は教保文庫、OPMS、yes24、ヌリメディアで、なかでも教保文庫の供給量が多い。

利用者は館内のデジタル立法資料センターのPC84台でのみ閲覧が可能である。国会職員のみスマートフォンでも原文を閲覧できる。現在はOPMSの電子書籍のみだが、2013年上半期からはスマートフォンですべての供給業者の電子書籍を閲覧できるようにする予定である。教保文庫と同様、NALでもモバイルサービスを行うのはePUBフォーマットの電子書籍のみ。ファイルの大きさが30MB以上になると、データサイズが大きくモバイルでは閲覧が難しいという。

アクセスは月約400名で、貸出は月約2,000冊超となっている。「家で読みたい」「小説や文学も読みたい」という意見も多いそうである。

4 デジタル新聞閲覧台

韓国では、NLKやNALをはじめ、ソウル大学校中央図書館など主要な大学図書館に、新聞の紙面を電子的に閲覧することができるデジタル新聞閲覧台[x]が設置されている。大田のハンバッ図書館や釜山の市民図書館など、大規模な公共図書館にも設置されていることがある。

図 3 デジタル新聞閲覧台(国立中央図書館)

紙面くらいの大きさはあるディスプレイに紙面が映し出され、ディスプレイ上で指をスライドさせることで紙面をめくることができる。もちろん記事の拡大も可能である。毎朝記事がアップロードされ、3か月前の記事まで検索することができる。

購読する新聞のタイトルは導入する機関が指定することができる。ハンバッ図書館では、全国紙のうちいわゆる「3大紙」(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)は購読せず、大田地域で発行されている地方新聞である大田日報、中都日報、忠清トゥデイを含めた10紙ほどを購読していた。機器を導入できる機関が限られるのは予算の制約によるところが大きいが、主要な全国紙を購読せず地元発行の新聞を購読しているのも、地元紙を優先的に購読して利用者の便に供すると同時に、タイトルの購読料節約の意味が大きいと思われる。

おわりに

今回の出張では、韓国の図書館を、とくに資料のデジタル化や電子書籍の提供といった図書館における新しい情報サービスという視点から、立体的に、重層的に捉えることができた。資料のデジタル化の面では、国の政策を直接遂行する中央行政機関と、自館ではデジタル化する財政的、人員的余裕はないが国の政策により貴重な所蔵資料がデジタル化され公開される公立図書館。電子書籍の提供という面では、図書館サービスのひとつとして積極的に導入・展開を試みる国立・公立・大学などの各種図書館と、電子書籍事業を今後重点的に取り組む事業と位置づけ、図書館を大口の顧客とみなし電子書籍を販売する書店。そのほかにも、国立図書館と公立図書館と大学図書館、中央と地方、図書館と民間企業など、さまざまな対立軸で相対的に韓国の図書館を捉えることが、多少なりともできたと思われる。欲を言えば、資料のデジタル化や電子書籍事業を国家的に推進している行政安全部や文化体育観光部などの中央行政機関を訪問して政策的な観点からもう少し研究してみたかったが、日程に余裕がなく十分な調査を行うことができなかったのが残念であった。

筆者の訪問期間中は、語学力及び筆者の勉強不足から訪問機関の方々に多大な迷惑をかけてしまったが、国立中央図書館や国会図書館をはじめとする訪問機関の関係者の方々は筆者を歓迎してくださり、丁寧に対応してくださった。末筆ながら記して謝意を表したい。

(あべ けんたろう)


[i] 『2011年度国立中央図書館年報』国立中央図書館, 2012, p.73.

[ii] 2013年2月25日現在、基準自体はまだ告示されていないようである。

[iii] http://www.naver.com/

[iv] http://newslibrary.naver.com/

[v] http://db.history.go.kr/

[vi] 일제시기 희귀자료 (http://db.history.go.kr/url.jsp?ID=ih

[vii] http://contents.siminlib.go.kr/

[viii] この会員加入は、公共図書館統合図書会員(http://book.nl.go.kr/) に限っておこなうことができる。

[ix] 地域に密着した、小規模な読書施設。

[x] ダハミ・コミュニケーションズ社のT-Paperという製品。

T-Paper(http://www.t-paper.co.kr/

(ウェブサイトの最終アクセス日は2013年2月25日)

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