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中国・台湾の諸制度・統計を調べる―平成26年度アジア情報研修 概要報告―:アジア情報室通報 13巻2号

アジア情報室通報 第13巻2号(2015年6月)
冨田圭一郎(国立国会図書館関西館アジア情報課)

はじめに

平成27年2月18日(水)、国立国会図書館関西館において、平成26年度アジア情報研修を実施した。この研修は、国内の図書館等におけるアジア情報の収集・提供に関する知識増進とスキル向上を図り、また、当館とアジア情報関係機関との連携を進めることを目的として、平成14年度から毎年度実施している。

今回は、「中国・台湾の諸制度・統計を調べる」をテーマに、中国・台湾の諸制度(法令・政府情報)と統計を調べる実習を行った。以下、その概要を報告する。

1.研修の目的

今回の研修には、三つの特徴と目的がある。

第一は、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館(以下、「アジ研」という。)との連携である。本研修では、共通したテーマのもとで、当館とアジ研が、所蔵資料や調査ノウハウの蓄積において強みをもつ分野の科目(当館が諸制度、アジ研が統計)を、それぞれ担当した。これにより、研修の内容を充実させ、かつ、研修生、当館、アジ研の三者が学び合う枠組みを整えた。

第二は、研修の形式である。本研修では、調べるツールを紹介する講義ではなく、研修生がグループワーク形式で調べる実習を中心とした。また、事前課題も課した。事前課題や当日実習では、実際に各図書館が利用者から受けた(実社会のニーズを反映した)質問を題材とした。このような課題に自ら取り組むことで、各研修生が主体的に成果を得られると考えた。

第三は、対象者の拡大である。これまでの研修では、図書館と調査研究機関の職員が対象であったが、今回は、地方公共団体の国際交流部門等の職員を加えた。これは、中国・台湾との交流や現地での事業支援等を行っている地方公共団体には現地情報へのニーズがあると思われたためである。また、多様な属性の方の参加により、本研修が貴重な情報交換の場となることも期待した。

当日の研修参加者は23名で、内訳は、各種図書館9名、調査研究機関(大学院生含む)7名、地方公共団体の国際交流部門等4名、中央省庁3名であった[1]。

2.各科目の概要

以下では、各科目の要点を紹介する。

2.1.イントロダクション

(アジア情報課 冨田圭一郎)

最初に、前述した本研修の特徴と目的を説明し、次に、諸制度と統計を一次資料・情報にあたって調べることの意味や意義について説明した。

  • 諸制度と統計は、中国・台湾に限らず、各国の事情を調べる際に把握しておくべき基礎的な情報である。
  • 各国の事情を調べる際は、他人によって編集・加工されていない一次資料・情報(法令や統計など)に当たることが重要である。
  • 一次情報を調べることは、自分で事実関係やデータを確認する(裏を取る)作業である。これを行うことで、いずれの職種であっても仕事の質が向上する。

2.2.実習① 中国・台湾の諸制度(法令・政府情報)を調べる

(アジア情報課 冨田圭一郎、湯野基生、濱川今日子)

初めに、①各国の様々な制度は、法律やそれに基づく規則・基準などで定められているため、諸制度を把握するためには各種法令を調べる必要があること、②中国・台湾の場合、最初に日本語資料・情報、次に中国語資料・情報という2つのステップを踏んで調べるのが有効であること、を紹介した。

次に、事前課題の解説とグループワークによる実習を行った。いずれも、講師が解説するだけでなく、研修生にも調査結果を報告していただいた。

調査する分野の基礎知識がないまま中国語資料・情報を直接探すことにはリスクがあり、また、日本語で詳しい情報が得られた場合でも、法令や組織は頻繁に改正・変更される可能性がある。そのため、いずれの事例でも、まず、信頼性の高い日本語資料・情報によって制度の概要や中国語表記を特定する手がかりを把握し、その後、一次情報である法令や基準の中国語原文を確認する方法を紹介した。当日は下記の事例を扱った。

事前課題「中国において科される海賊版の制作・販売に対する刑事罰」
当日実習1「中国における食品添加物のシリカゲルの使用可能量」
当日実習2「台湾における障害者雇用率制度の内容」

なお、当日は、法令原文を確認する際に有用な情報源として、下記を紹介した[2]。

【中国】
法律法规全文检索系统(国务院法制办公室)http://search.chinalaw.gov.cn/search2.html
北大法宝(北京大学の関連機関が提供する有料データベース)http://www.pkulaw.cn/

【台湾】
全國法規資料庫(法務部)http://law.moj.gov.tw/Index.aspx

2.3.実習② 中国・台湾の統計を調べる

(日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館  狩野修二氏)

初めに、中国や台湾の公的機関の統計サイトは、一次情報の出所であり、また、データの更新が早く、国際機関のデータベースに掲載されていない情報があるため、まずこれらを参照する必要があることを説明した。

次に、中国及び台湾の統計情報の所在場所や、統計情報を見る際に覚えておくと有用な基本的な語彙を紹介・解説した。その後、実習①と同様の形式で事前課題解説と当日実習を行い、中国語の統計サイトの中から、確認すべき統計項目を紹介した。

いずれの事例でも、情報源によって収録されているデータの範囲が異なること、統計項目や用語の定義を正確に把握することが重要であること、中国と台湾では統計の単位や語彙が異なる場合があること等を説明した。当日は下記の事例を扱った。

事前課題「中国における最新の平均賃金(中国全体、省別、製造業(中国全体))」
当日実習1「重慶市の人口が中国の都市のなかで一番多いと言ってよいか」
当日実習2「台湾における最新の平均賃金(台湾全体、製造業(台湾全体))」

なお、当日は、統計を所管する機関のサイト及びその中にある統計のポータルサイトを紹介した。

【中国】
中华人民共和国国家统计局http://www.stats.gov.cn/
国家数据http://data.stats.gov.cn/

【台湾】
行政院主計總處http://www.dgbas.gov.tw/mp.asp?mp=1
中華民國統計資訊網http://www.stat.gov.tw/mp.asp?mp=4

3.研修に対する反応

実習終了後の質疑応答・意見交換では、各研修生から、官公庁では比較的短時間で外国情報を求められる、近隣に大規模図書館がない環境で現地情報を調べる必要がある、在住外国人をサポートする際に出身国の諸制度を把握する必要がある等、諸制度や統計を、特に信頼性の高いウェブ情報に当たって調べるニーズが高いことが紹介された。

また、九州地区でも今回のような研修を実施してほしい、アジア各国の公文書の調査方法も紹介して欲しい等の要望も寄せられた。

終了後のアンケートでは、全ての回答者から肯定的な評価を得た。個別の意見や感想としては、正確な情報を把握する重要性を認識した、実習中心の形式は有益であった、研究者にとっても本研修は貴重な場である等、法令・政府情報や統計といった一次情報を調べる実習を評価する声が、多く寄せられた。一方、実習の時間が少し足りなかったとの指摘もあった。

おわりに

中国と台湾の諸制度や統計を調べる今回の研修には、図書館員、研究者・大学院生、地方公共団体職員等、多様な属性の方が参加し、事前課題や当日の実習に意欲的に取り組んだ。グループワークは、実習を重ねるごとに熱気を帯び、各研修生から有益なご質問やご意見を頂いた。本研修が成功裡に終了したことについて、アジ研の狩野氏及び研修生の皆様に、この場を借りて御礼申し上げる。

もちろん、1日間の短い研修では十分に紹介できなかった内容もあるが、本研修を通じて、①現地の最新情報を正確に把握するためには、法令や統計といった一次情報を調べる必要があること、②少し手間がかかるが、一次情報を調査すればそれに見合う正確な情報が得られること、の二点は実感していただけたのではないかと考えている。

なお、研修の当日配布資料の一部を当館ウェブサイトに掲載したので、併せてご参照いただきたい[3]。もし、今回の研修についてさらに情報が必要な場合や、講師派遣による研修実施のご要望等があれば、ご遠慮なくアジア情報課までご連絡いただきたい。

(とみた けいいちろう)



[1] 申込者が定員20名を超えたが、運営上の工夫により、全員の参加を受け入れることができた。

[2] ウェブサイトの最終確認日は、いずれも2015年5月11日である。

[3] 国立国会図書館リサーチ・ナビ「平成26年度アジア情報研修」http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/asia-workshop26.php

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