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『中国博士后制度的制度分析与时代变革』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(6):アジア情報室通報 13巻3号

1.10 姚云 著『中国博士后制度的制度分析与时代变革(中国ポストドクター制度の制度分析と時代変革)』重庆 : 西南师范大学出版社, 2012.12. 2, 3, 273p.【AC9-441-C46】

近年、博士課程終了後に任期付や非正規の身分で研究を続けるポストドクター(以下、「ポスドク」とする。)の増加と高齢化が問題となっている。ポスドクに研究費や研究活動を行う場を提供する制度(ポスドク制度)は、日本以外の各国にも存在し、中国においても、博士課程修了後の研究者を大学等の機関に設置するポスドクステーション[1]で受け入れる制度がある。中国のポスドクは、国家を牽引するエリートとして優遇され、日本以上のペースで増加して一定の成果を挙げてきたが、近年では様々な問題も生じている。

本書は、中国のポスドク制度の概要、変遷、問題点について、政府統計以外の統計データや関係者へのアンケート調査結果の分析を行うなど、公的情報だけでは見えない実態に迫りながら論じている。著者の姚雲は、北京師範大学教授で、ポスドク制度や比較教育を主たる研究対象とし、国家自然科学資金プロジェクト等に参加した実績がある。

本書は全7章で構成される。第1章から第4章までは、ポスドク制度の歴史と概要を解説する。第3章では、ポスドクステーションの採用要件(40歳未満、博士号取得、秀でた研究能力等)等の具体的な内容を紹介する。

第5章は、ポスドクステーションに採用された人数(1985年は1名のみ、2009年には1万人を突破)や、同ステーションの設置数(10年間で10倍近く増加)のデータ等を挙げて、同ステーションに所属するポスドクの人数が増大している状況を考察する。

第6章は、ポスドクステーションに所属するポスドクと指導教官計845名を対象に実施したアンケート結果を分析する。内容は、ポスドク制度や研究環境への満足度、希望進路等である。多くのポスドクは、ポスドク制度が適切に機能し、ポスドクステーションでの経歴が就職に有利であると考えており、制度のメリットを認めている。しかし、一方で、研究費の使い勝手や給与等の待遇面で不満を感じる者が少なくないことも明らかになっている。

最後に、第7章は、時代の変化に伴って生じたポスドク制度の問題点について、研究員の質、資金の供給、企業におけるポスドク[2]の管理体制と資金、国際化への対応の4点から論じる。例えば、資金の供給については、研究員1名あたりの支給費は増額されてきたものの、近年は物価上昇等により研究に使用できる金額が減少していること、ポスドクへの主要な資金供給機関の1つである中国ポスドク科学基金会 の資金調達能力が低下していること等の問題を指摘する。

巻末には、参考文献の一覧のほか、ポスドク五ヵ年計画の全文等の付録を付す。

(アジア情報課 齊藤 まや)

[1] ポスドクステーションは、「ポスドク科学研究流動ステーション」と「ポスドク科学研究工作ステーション」に分けられる。前者は大学または大学院内に設置され、後者は法人格を有する企業等に設置される。
ポスドクステーションの概要は、科学技術振興機構のウェブサイトScience Portal Chinaで公開されているレポートを参照。 高等教育の現状と動向「2.2.4 ポスドクステーション」

http://www.spc.jst.go.jp/education/higher_edct/hi_ed_2/2_2/2_2_4.html
(ウェブサイトの最終確認日は2015年8月21日である。以下同じ。)

[2] ポスドク科学研究工作ステーション(注1)に所属するポスドクのこと。

[3] 中国人民銀行の認可を得て1990年に成立。民政部が所管する非営利機関である。
中国博士后科学基金会.

http://res.chinapostdoctor.org.cn/BshWeb/index.shtml

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