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『『癌症村』调查 : 环境健康风险的认知与应对』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(7):アジア情報室通報 13巻4号

1.11 陈阿江, 程鹏立, 罗亚娟 等 著『『癌症村』调查 : 环境健康风险的认知与应对(「がんの村」調査:環境健康リスクの認知と対応)』北京:中国社会科学出版社, 2013.8. 3, 575p.【EG295-C87】

「癌症村(がんの村)」とは、化学工場からの排水による水質汚染などを原因とするがんの罹患率が高い村を指す。中国では経済発達とともに環境汚染が深刻化しており、「がんの村」の存在が注目を浴びるようになった。中国の雑誌記事・新聞では、2001年頃から「がんの村」という言葉が用いられるようになった[1]。2013年1月には、環境保護部の文書「化学品環境リスク防止管理に関する『第12次5か年計画』[2]」の中でも、「癌症村」という言葉が用いられた。

本書は、米国社会科学研究協会[3]、中国科学技術協会[4]等の研究プロジェクトの成果をまとめたもので、環境汚染と健康問題の因果関係を検証するとともに、環境汚染や健康被害に伴う社会的、経済的な問題も考察する。主たる著者の陳阿江[5]は河海大学社会学系教授で、環境社会学等を専門とする。序文と後記のほか、7章から構成され、序文は英文を併記している。以下、各章の内容を紹介する。

「"がんの村"内外」の章では、2004年のテレビ報道をきっかけに一躍「がんの村」として注目を集めた淮河流域の村を対象とした調査を取り上げる。著者らは、報道内容及び関連する文献を検証するとともに、2009年から2011年にかけての現地調査で、住民や村の医師への聞き取りなどを実施した。その結果、がんの原因には工場からの化学汚染だけでなく、喫煙や飲酒などの生活習慣や肝炎などの既往症、住民の生活ごみ投棄など、複数の要因があるため、企業や政府の責任を問うのは困難であると結論付けている。

「蘇北の"がんの村"」「豊かな"がんの村"」「問題化と汚名返上」などの章では、いずれも「がんの村」と呼ばれながら、異なる対応が取られた事例を紹介する。例えば、住民が地方政府に被害を訴えるとともに、企業の責任を追及した例がある一方で、住民が汚染源となる工場の経営者や従業員であるためにそのような活動には至らない例が紹介されている。

「村民の環境健康リスクの解消法」の章では、住民の環境汚染への認識や対処方法を取り上げる。住民は、汚染された水や農作物を避ける、化学工場での就業をやめる、など、限られた知識で対応しているものの、根本的な解決には至っていないと述べる。そして、問題解決のためには、政府の実効性ある環境政策が不可欠であると指摘する。

(アジア情報課 水流添 真紀)

[1] 中国の学術情報データベース(CNKI)で検索した結果による。国立国会図書館館内で利用できる。

[2] 中华人民共和国环境保护部「化学品环境风险防控"十二五"规划」2013.1, p.11.
http://www.mep.gov.cn/gkml/hbb/bwj/201302/W020130220539067366659.pdf
ウェブサイトの最終アクセス日は、2015年11月20日。以下同じ。

[3] Social Science Research Council (SSRC)。米国の非政府、非営利の学術機関。
http://www.ssrc.org/

[4] 中国国内最大の科学技術者の民間組織。
http://www.cast.org.cn/

[5] 陈阿江(河海大学研究生院ウェブサイト)
http://gs.hhu.edu.cn/s/11/t/359/fa/11/info64017.htm

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