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『内地与香港初中中国历史教科书比较研究』:アジア情報室の社会科学分野の資料紹介(7):アジア情報室通報 13巻4号

1.12 李莉 著『内地与香港初中中国历史教科书比较研究(中国本土と香港における初級中学の中国史教科書の比較研究)』武汉:華中科技大學出版社, 2014.7. 4, 305p. 【FC49-C19】

本書は、中国本土と香港における初級中学(日本の中学校に相当)の歴史教科書に関する制度及び内容を比較する。比較項目は、両地における教科書制度(第2章)、中国史教科書の編集執筆指導の思想(第3章)、編集執筆の原則(第4章)、体裁(第5章)、構成(第6章)、ページデザイン(第7章)、内容(第8章)である。以下、内容の一部を紹介する。

第2章は、中国本土及び香港における教科書制度の変遷を比較する。中国本土では、中華人民共和国の成立以降、国定教科書が採用されていたが、1980年代半ばの教育改革により、検定制に移行した。他方、香港の教科書は自由発行制である。ただし、出版社は教科書の見本を教育局の審査にかけることができ、審査に合格すれば、「推薦教科書リスト」に掲載される。

第3章は、中国本土及び香港における歴史教育の主旨、方針の変遷と、それらの歴史教科書編纂への影響を比較分析する。中国本土と香港は、いずれも歴史教科書の編集執筆の指針とすべき政府文書、すなわち中華人民共和国教育部が制定した『義務教育歴史課程標準』(2011年)[6]、香港課程発展議会[7]が編訂した『中国歴史科課程綱要(中一から中三)』(1997年)[8]があるが、両者の内容は大きく異なる。例えば、中国本土における歴史教育の目的が、社会主義の核心的価値観や愛国主義のかん養であるのに対し、香港のそれは、優良な品徳や、国家への帰属感、社会への責任感を育むことである。また、中国本土では、上記『標準』に従って教科書を編集することが明確に求められ、編集者の裁量は小さいが、香港では、上記『綱要』への準拠を義務とする明示的規定はなく、編集者の裁量が比較的大きい。

第8章は、中国本土と香港の歴史教科書の内容を比較する。全般的な特徴として、本土の教科書は、古い時代ほど簡潔に、現代に近いほど詳細に論じている。また、各時代の庶民の生活史を重視している。さらに、愛国的な英雄や各分野の偉人についての学習を通じ、人格教育や愛国的情操の涵養を図っている。一方、香港の教科書は、民族の団結や国家統一の維持に重点が置かれ、「中国」「中華民族」といった呼称の由来や歴代の民族融合政策などのほか、中国の領土の一部とする台湾の歴史や事情についても詳しく解説している。

また、政治史では、中国本土の教科書は、1919年の五四運動とその後の歴史についての記述が厚く、五四運動以降は中国共産党の歴史に重点が置かれている。また、香港、マカオ、台湾に関する重要な事件はあまり扱われていない。一方、香港の教科書は、歴代の政治制度、政治改革、政治運動、重要な事件について詳しく解説している。このほか、経済史、文化史、史料の運用についても比較検討する。

最後に著者は、良質な教科書を作成するには、構成及びページデザインを生徒の発達段階と理解力に合致させること、また、そのうえで適切な学習内容を選択する必要があると主張する。また、歴史教育においては、生徒が基礎的な歴史知識を習得し、さらなる思考力や判断力を獲得すること、民族の誇りや自信を養うこと、正確な世界観や価値観を形成することなどが重要であると指摘する。

(前 アジア情報課 濱川 今日子)

[6] 中华人民共和国教育部「义务教育历史课程标准」2011.6.
http://ncct.moe.edu.cn/uploadfile/2014/1115/20141115014657982.pdf

[7] 香港特別行政区行政長官の委任に基づく独立した組織で、教育課程について政府に意見を提出することを任務とする。

[8] 香港課程發展議會編訂「中學課程綱要 中國歷史科(中一至中三)」1997.
http://www.edb.gov.hk/attachment/tc/curriculum-development/kla/pshe/CSS13CH.pdf

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